前回から通販番組にかかわるコメンテーターの方々のお話を書いています。そのコメントの記憶力たるやスゴイ! というオハナシを前回書きましたが、じゃ、なんでそんなにスゴイことができるの? ってお話を。
「フリーターじゃなくてプロフェッショナルですよ」
で、コメンテーターの方々、いやぁホント、スゴかったです。まさにプロ! カンペなしでまさに立て板に水のごとく、私が書いた台本のコメントをスラスラスラスラリ、と語っていきます。一言一句同じではないですが、言わなければいけないことは、ずぇったいハズさない。そしてその人なりに締めくくりなどはアレンジして語るんです。
あ。そこのあなた。前回私が「フリーターみたいなもの」だとか、「居酒屋でバイトして家賃稼いでいる」なんて言ったから、ナメてたでしょう? いえいえ、どっこい。彼らはプロフェッショナルです!
花のテレビ局に入社したばかりでカンペもバッチリあるのに、「たいへんですぅ~。こなせないですぅ~」など言っている新人局アナの方々には、ぜひ見ていただきたいものなんですよねぇ~。
で、そんな記憶力抜群のコメンテーターさんたち、このセリフを何日も時間を与えられて覚えてくるのかというと、そんなことはありません! 通販番組にかかわらず、どんなテレビ番組でも「台本は収録前ギリギリ」になることが常!「今日台本を渡す→明日本番」なんてことはザラです。
それだけではありませんョ。リハーサルなどをディレクターやプロデューサーや広告代理店やスポンサーが見ていて……「ここはこう変えませんか?」「こういう文言をココに入れてください」的な注文が出ることもしょっちゅう!
基本、この種の番組の台本はあくまでガイドみたいなもの。お芝居のように一言一句を追うわけではないのです。だからそんな細かく指示しなくてもって説明しても、スポンサーさんはどうしても台本をなぞって進行すると思いがちなんです。だから、ちょっとした一言にも細かい注文を入れてくることが結構あります。
なので、そういう風に指定が入った後、コメンテーターさんに変更点を説明して「いけます?」なんてムチャぶりするわけです。
そんなこんなムチャにもかかわらず、「ハイいけます」と答えて、実際の本番をバーッチリこなすコメンテーターさんの姿を目の当たりにしたら……スポンサーさんも制作さんも「次回もあの人に頼もう!」ということになるわけですね。
もちろん、逆にあまりよろしくないと……「違う人立てた方がいいかな……」なんてことになるわけですが。厳しい世界なのですよねぇ。
「テレビじゃなけりゃ、カンペなんかないですよね」
さてさて、カンペがないにもかかわらず、商品の特性をハズさずに説明するコメンテーターの方々、なんでそんなにすごいの~!? と、何人かご本人たちに聞いてみたことがあります。そこで疑問が氷解しました。
実は「カンペなし」の仕事、テレビを離れた場では当たり前らしいです!
たとえばフリーでアナウンサーをしている方々が多くこなしている仕事の一つが、イベントの進行や展示会での商品プロモーション。幕張メッセや東京ビッグサイトなどでよくある「東京☆☆☆ショー」などで、ブースごとにデモンストレーションを行っていますよね。あれのライブ説明、です。
そうした現場ではカンペなんてもちろんあり得ないわけです。しかも、展示会は企業が威信をかけて発表する場でもある。しか~も、やり直しが利かない“生”。緊張感もテレビ通販の収録の比ではないこともしばしばなわけ。そうした場で鍛えに鍛え抜かれていたわけです!!
「割り切ってますが、心からってこともあります」
まあ、そうしたわけで“しゃべり”と“記憶”は達人のコメンテーターさんたちですが、うまい人ほど、複数の商品の通販番組を引き受けることになります。「あの人に任せれば収録がスムーズだし」と制作側も頼みたくなる。スポンサーの方でも、「あの商品を紹介している人に、ウチの商品も紹介してほしいんですけど……」ということがよくあります。結果、同じ人が「さあースゴイ商品が出て参りました~!」と、何度も登場することになるのです。
で、この連載のお話らしい話題になって参りますですよ。さてお立ち会い。あのコメンテーターの方々、本当に“そう思ってコメントしている”のでしょうか!?
何ともブラック・ボックス的なところ、そのホンネのところは当人たちにしかわからないというとこになるんでしょうが、私が観察してきた中で考えますと、「仕事と割り切っている」のでしょう。
いや、これはコメンテーターがそうだというよりも、制作スタッフ全体がそうではないでしょうか。何せ紹介する商品は次から次から出てきますからね。それの台本をガンガン書いて、どんどん演出考えて、どんどん制作していかなくちゃいけない中で、一つひとつの商品へ深い愛情を持って……なんて余裕はないです、正直。
ただ、全部の商品を割り切ってドライに扱っているかというとそういうわけでもないんです。
ホントにスゴイ! っていう商品は、放送される前にスタッフの間でも「コレ、ホントにすごい~!!」と話題になっていて、それが雑談でもコメンテーターに伝わるわけで、中には事前に持ち帰って試してスゴサを実感してきちゃったというケースもあります。そういうときは、もちろんコメントにも力が入ってきますよね。
やっぱりいちばん大事なのは、ホントにすごい商品だ、ということだと思います。