(1) | 育苗培土(野菜苗を中心に) |
(2) | 固形培地によるハウス栽培 |
(3) | ハウスでの地床栽培 |
(4) | 露地畑 |
(5) | 水田での水稲 |
(6) | 水田からの転作 |
(7) | 海外での農業 |
農業生産を行う現場を7つに分類し、それぞれについて、土のあり方と栽培の実際について説明している。前回から水田を畑として使う場合について説明している。水田転作は成功する圃場と失敗する圃場が歴然とある。
やっても儲からない水稲作
さて、前回の続きです。肥料代が3万2000円、農薬代が2万円、種もみ代が1万6000円、育苗培土代が1万2000円、土地改良区費(土地改良区は土地改良法により地域の土地改良事業を行うために設立される法人で、これには賦課金を納めなければなりません)が2万5000円で、ここまでの合計が10万5000円です。
私の場合、自前のトラクタは持っていないので、作業委託をします。この費用は17万5000円でした。さらに、コンバインで刈り取って、乾燥、もみすり、袋詰めも委託するのですが、この費用は35万円でした。合計52万5000円。
というわけで、今年私は、米を60a栽培して9万円の現金収入と月当たり30kgの自家消費米を得た、ということです。
これで本当に「得た」と言えるかというと、そうではありません。この60aの農作業のうち委託しない部分のほとんど私が行いますが、少しは妻も手伝います。事業として考えれば、この2人の人件費も計算しなければいけません。言うまでもなく大赤字です。
確かに、水稲栽培はお金のためだけではないという一面はあります。たとえば、水田に張られた水はきれいで、暑いさなかにイネが育っていく姿を毎日見せてもらうことは贅沢なことです。一斉に大きく育ち、風になびく光景は何とも言えず、穂が出てくればまたやれやれという安堵の気持ちになれます。やりがいのある仕事です。
しかしこの収入です。
転作できない田んぼは転作できない
これが、水田転作をすれば転作奨励金が出るわけです。ここからがこの本題です。
いくらムギやダイズを田んぼで作ろうと思っても、できない田んぼではできません。湿害を改善しようと暗渠排水や明渠排水をやっても、だめなところはダメです。
実は、これがうまくいくところはなかなか少ないというのが結論です。
ではうまくいく田んぼとはどんなところでしょう。
要するに、ムギやダイズなどは畑に作るべき作物ですから、雨が降っても水がうまくはけて、田んぼと言えども畑の状態が保てる田んぼならばできるということです。
たとえば山間の棚田や扇状地の上部にある田んぼ、平野の中でも河川の周辺の盛り上がった部分の田んぼ(自然堤防と言います)など、こうしたところは見かけは田んぼですが、実力は畑です。
なぜそこが田んぼになったかと言うと、米が食べたい時代に畑に無理やり灌漑用水を引き込んで水田にしてしまったということです。これは農水省が大変な予算を付けて全国で行ったことです。
山の相当な高さのところに急に水田が開ける景色に出会った方もいるかと思いますが、そうしたところは里から大型ポンプで水を引き上げている場合がよくあります。現在はその電気料金が高すぎて採算が合わず、荒地になっていることもありますが、その多くは転作のモデル園のようになっていることも事実です。
つまり見かけは田んぼ、でもホントは畑です。