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農業生産を行う現場を7つに分類し、それぞれについて、土のあり方と栽培の実際について説明している。今回は水田のメカニズムを説明する。
水田の土は“人工の土”
現在の日本の460万haの農地のうち、半分以上の250万haが水田です。水田作と水稲は、これほど私たち日本人に影響を与え続けている農業はないという栽培方法と作物です。そのやり方と人のかかわりがこれまでどうであったか、これからどう変化していくのか、これは注目すべきものですので、ここでしっかり見ていきましょう。
まず押さえておきたいのは、水田の土は典型的な人工の土だということです。「人工の土」とはどういうことかと言うと、土に人間が手をかけることで都合のよい現象を起こさせて、自然に任せたままでは発揮されない土の機能や性質を引き出すということです。これは畑とは異なります。
そのために用いるのが水です。
水田を造成するには、まず「畦を塗る」と言って畦畦(けいはん)を作ります。これは堤のようなもので、通路にもなります。その上で、土を水平にならし(均平化)、水を引き込み(湛水)、水が漏れださないように注意深く田を作り込んでいきます。
では、なぜ水を張るのでしょう。実は、湛水した圃場では通常の畑には見られない現象が起きます。その現象を操ることでイネをうまく栽培できるのです。
詳しく見ていきましょう。
湛水して還元層を作る
夏のイネが育っている水田を見たことがあるでしょうか。水面下の土の表面は、たいてい薄茶色になっています。しかし、これは下の土までそのようではありません。この土を切り取って断面を観察すると、薄茶色の部分は表面の1~2mmぐらいの薄い膜のような層だということがわかります。そしてその下には、厚い灰色の層が出来ています。このように様子の違う土の構造は、通常の畑では見られないものです。
この薄茶色の層を酸化層、下の灰色の層を還元層といいます。酸化と還元は化学でよく対になって出てくる言葉ですね。
水田には、堆肥、有機肥料、水草、動植物の死骸など、分解しやすい有機物がさまざまにあります。湛水した水田の土の酸化層では、酸素の供給があるので好気性微生物が働き、これらの有機物を酸化します。一方、それより下の層への酸素の供給は制限され、酸化層や通常の畑のようには酸素は行きわたりません。ここで活躍するのは嫌気性微生物で、いわば重石を乗せた漬物樽の中のようなもので、酸化層のような有機物の分解は起こらないのです。これが還元層です。
還元層で窒素を操る
ここに一つの知恵があります。
酸素が行きわたる通常の畑では、日本の暑い夏に必要以上に有機物の分解が進んでしまい、土の中の腐植が生成されずに地力が減少してしまう原因になっているのです。しかし、このように還元層を作ると、有機物の分解を抑制することができるのです。
そして、水田は有機物を温存するだけではありません。イネを植える2カ月ほど前の春先に田を粗く耕して、同時に乾かすということをします(田起こし)。この時、還元層に当たる部分の土も酸素の供給を十分に受けると、好気性微生物が働き、有機物の分解を促します。すると土から、無機態窒素が出てきて、肥料として効く状態になります(乾土効果)。
つまり、暑い夏は有機物を必要以上に分解させず、窒素が必要になる春先には強制的に分解させるというわけです。