それでは今後のコンビニエンスストアが採るべき方策はどのようであるか、具体的な提案を行っていく。その第一は24時間営業を標準とする体制の撤廃である。また、品ぞろえや売場づくりに関して、店舗の裁量権を増すことも考える。
1.24時間営業の標準を撤廃する
これまでに述べた問題点に対して、コンビニエンスストア(以下CVS)のビジネス拡大に向けて、具体的な提案を行っていく。
すでに一部では取り組まれているようだが、これまでのCVSの“看板”でさえあった“24時間営業”を標準とすることを見直してはどうか。少なくとも、営業時間の決定に関しては、100%フランチャイジー(以下FCジー)の判断で決めることとするのである。
チェーンとして見れば、「あの店は、365日、24時間、必ず開いている」というイメージを浸透させることはメリットのあることと考えられてきた。しかし、1店ごとに経営効率を評価していけば、24時間営業ではない営業時間帯を設定した方が収益性が改善する店舗はいくらでもあるはずである。実際、CVS関係者と話していても、24時間化によって効率が落ちたというCVSは相当にあると聞く。一般に、深夜帯は昼間に比べて格段に客数が落ちる半面、割増賃金を支払うことになるのだから当然とも言える。
また、効率が落ちるというのは、それだけの問題ではない。第50回でも述べたように雇用確保難という問題と、防犯上の課題が生じ、各店の収益を圧迫している事情もあるのだ。それを考えると、無理に24時間営業を強いられている店、FCジーというのは、全体すなわち他店のために自店・自社の収益を犠牲にしているのだ。
今後、顧客接点である末端の店舗の力によってCVSチェーン全体の力を付け直すことを考えた場合、やはり各店・各FCジーが損をし、疲弊し、不満をためているという状態はまずい。
まず、個々のFCジーの視点で営業体制を見直し、コストとリスクを考えた上での効果を評価した上で、24時間営業が本当にそのFCジーにとってベストであるのかを考え直すべきである。
そもそも、24時間営業のCVSというものが、社会にとって必須のインフラと言えるのかどうかも考え直してみるべきだろう。
確かに、医療関係、防犯・防災関係、土木・建設の仕事のように、深夜に働く必要のある業種はある。では、その人たちがいるからと言って、すべてのCVSが24時間店を開けて彼らを待っている必要があるのかどうか。少なくとも、たとえば近隣により資本力と組織力のあるスーパーなどの店があって、そこが深夜営業をしているということがあれば、CVSが24時間営業をやめてもお客に迷惑をかけるということはないのだ。
立地などの事情から、24時間営業で確実に収益が上がる店はその営業時間でいいかもしれないが、東日本大震災後の消費行動の変化や、省エネ意識の高まりの中、深夜帯の来店は鈍っているはずだ。それを検証するためのPOSデータはCVSチェーンは持っているのだから、これを使ってフランチャイザー(以下FCザー)とFCジーの双方にとってメリットのある営業時間をより緻密にはじき出せばいいのだ。そのしくみをスタートさせるだけでも、肉体的・精神的負担が大きく軽減されるというFCジーのオーナーは相当数に上るだろう。
2.品ぞろえと売場作りについて店の裁量権拡大
通常、CVSの品ぞろえ、在庫・受発注の管理はFCジーの裁量ということになっている。しかし、実際にはそこに指導・アドバイスという形で本部の意向が入り、結果として店内のシェルフの配置と品ぞろえはどの店も似たようなものとなっている。
そこへ、いま一歩進んだFCジー裁量の部分を入れてもいいのではないか。一定の採算基準などを設定した上で、店舗の個性や地域との関係を、その店舗の魅力として積極的に店頭に表現するのだ。
これは「デイリーヤマザキ」のようなボランタリー性のあるチェーンが事例を持っているだろうが、単に店ごとに知恵を搾るだけでなく、そのこととチェーンのブランド力とシステムを生かす方法を考えるのだ。
参考までに述べれば、ハーレーダビッドソンジャパン(以下HDJ)の場合、基本的に正規の契約販売店に対しても、条件としてハーレー専売のシングルチャネルであることは求めなかった。2008年でも全販売店中ハーレー専売の店は約3分の1に過ぎなかったのだ。
もともと多ブランドが混在しながらチェーンのイメージも保ってきたCVSでは、さらに取り組みやすいことではないだろうか。