2011年12月、シンポジウム「有機農業と遺伝子組換え作物~将来の90億人を養うために今考えること」が開催された。出席したNPOくらしとバイオプラザ21の佐々義子氏に、その報告を記してもらった。遺伝子組換えに対する社会の反応の変化について。
GMが受容されている場面は増えた
「遺伝子組換え作物・食品と社会」
佐々義子(くらしとバイオプラザ21)
遺伝子組換え食品を避けたいと思う消費者が多い(2010年食品安全委員会アンケート)。農薬、食品添加物、遺伝子組換え食品は安全性審査が行われているのに、不安を感じる消費者が多いという共通点がある。不安の理由を見ると、「安全性審査が十分だと思えない」「管理に不安」などがある。遺伝子組換えの特徴は「漠然とした不安」である。一方、不安を感じない理由は、安全性審査が行われていることが第一に挙げられている。遺伝子組換えの場合は過去に事故が起っていないことを挙げている人が多いことも特徴的である。
生協では不分別原料を使った食用油やマーガリンの方が安価で、よく売れている。容量が同じでないので単純な比較はできないが、不分別と表示された食品は市民に受容されているように見える状況もある。遺伝子組換え作物圃場の見学会で遺伝子組換えトウモロコシを参加者が試食したといい、市民は遺伝子組換え食品を食べることをそんなに嫌っていないように見える。
遺伝子組換え食品に対する市民の認識に対して、メディアは大きな影響力を持つ。不安を煽る報道がネガティブな印象を助長しているように思える場面も少なくない。食の安全情報ネットワーク(FSIN)のように、不適切な報道に対して意見を表明するグループも出来て、新しい関係、動きが始まっている。私たちは「メディアの方に知っていただきたいこと~遺伝子組換え作物・食品」を作成し、広く利用していただいている。
食のリスクについていろいろ論じられているが、ユッケ食中毒事件で再認識したことは、現在、日本で健康被害が実際起こるリスクとして気をつけなければならないのは、食中毒とアレルギーだけということ。衛生的な食品が安定供給されている環境に感謝しなくてはならないと思う。
〈この項おわり〉