宮崎大学国際連携センターは2011年度遺伝子組換えワタ隔離圃場試験の結果報告を行い、来年度引き続き行う試験栽培計画の説明を行った。この間、遺伝子組換え作物の栽培に反対する組織が、大学と県に対して試験栽培中止などを求めて署名活動を展開した。しかし宮崎県は、宮崎大学に対して試験栽培中止を申し入れないことと、遺伝子組換え作物栽培の規制条例を策定する計画がないことを回答した。
2年目実施。全国の研究拠点の役目担う
2011年6月8日、宮崎大学国際連携センターにて、2011年度遺伝子組換えワタ隔離圃場試験の結果報告(1年目)ならびに2年目の栽培計画説明のための会が開催されました。同センターでは、昨年7月30日より、除草剤グルホシネート耐性およびチョウ目害虫抵抗性ワタGHB119と除草剤グルホシネート耐性およびチョウ目害虫抵抗性ワタT304-40の試験栽培を隔離圃場で行ってきました。今回は、それらの結果報告と2011年度に引き続き行う試験栽培の説明が行われました。その間、2010年11月2日、終了報告会が開かれています。
6月8日、参加者は48名(一般市民18名、学生10名、自治体・JA関係者10名、大学関係者10名)。初めに国立大学法人宮崎大学フロンティア科学実験総合センター長林哲也教授より、「宮崎大学は全国の研究拠点の役目を担いながら、遺伝子組換え技術を用いた実験に取り組んでいく」という開会挨拶がありました。報告・説明は主担当である同センター遺伝資源分野長明石良教授より行われました。質疑応答も充実していました。
参加した田部井豊氏(独立行政法人農業生物資源研究所)によると、「説明会では、誰かが突出するのでなく、関係者全員が一丸となって、このプロジェクトを進めようとする気持ちが伝わってきた」そうです。
これらの品種はバイエルクロップサイエンス(本社:東京都千代田区、社長:ギャビン・マーチャント)により、開発されました。
- 2009年5月28日に農林水産省および環境省へ承認申請
- 2009年10月に生物多様性影響評価検討会総合検討会において「生物多様性影響が生ずるおそれはない」と判断される。
- 2009年12月11日農林水産省・環境省によるパブリックコメント募集
- 2010年1月25日、農林水産省および環境省より第一種使用規程が承認される
日本に輸入するにあたり、バイエルクロップサイエンス研究開発本部バイオサイエンスグループは、遺伝子組換えワタの隔離圃場における栽培・保管・運搬および廃棄並びにこれらに付随する行為についての栽培試験を、2010年度より宮崎大学の隔離圃場で実施してきました。
http://isofield.brc.miyazaki-u.ac.jp/info.php
この試験栽培に先立ち、2010年より「遺伝子組換えいらないキャンペーン」は試験栽培の中止を申し入れていました。2011年1月より、グリーンコープ宮崎を中心として、「ストップGMO宮崎連絡会」は宮崎大学に対して試験栽培の中止を、宮崎県に対して栽培を規制する条例策定を求めて、署名を開始しました。4月18日、同会は以下のように、宮崎大学、宮崎県庁に署名を提出しました。
署名宛先 | 個人署名 | 団体署名 |
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宮崎大学 | 71,964筆 | 975団体・1,662,813筆 |
宮崎県 | 73,050筆 | 962団体・1,615,483筆 |
同県農政水産部営農支援課は、「宮崎県は食の安心安全基本方針において「県民の食の安全安心確保」を明記しており、これに従い、同県では遺伝子組換え作物の研究開発は当面行わないこととしている。しかし、(1)今回の試験栽培は宮崎大学で行われることから、試験栽培中止を申し入れないこと、(2)栽培の規制条例は策定する計画がないこと」と回答しました。
情報提供で研究を国民のものに
今回の試験は、遺伝子組換えユーカリの試験栽培を行っている筑波大学以外の大学における試験栽培であることから、反対署名の影響がどのようになるか注目されてきました。全国の状況に詳しい筑波大学遺伝子実験センター長鎌田博氏は「宮崎大学のように、筑波大学以外の大学が研究拠点として遺伝子組換え植物に関する研究活動を行うことは、これからの日本の植物バイオテクノロジーに与える影響が大きく、意義が深い」と、今回の試験栽培を評価しています。
同様に参加したバイオ作物懇話会長友勝利さんからは「一部の学者の意見のみを取り上げ、研究開発や検証の場をも閉ざす反対派の言動は、我が国の農業の将来に大きな禍根を残すことになるのではないかと、私たち農業生産者は大きな危機感を持っている。
国が安全性評価を行っているにもかかわらず、科学的とは言えない情報が流布し、県によっては過剰に規制する独自の条令を策定している。このため、国民理解が進まず、生産者の権利が侵害され、我が国の遺伝子組換え農作物栽培は大きく立ち後れている。
この度の宮崎大学の取り組みを心強く感じると共に、一日も早く日本の農業現場において組換え農産物の栽培を望む」とのコメントをいただきました。
2011年度の遺伝子組換え作物の試験栽培が始まります。見学会など、情報提供に努めている研究所や試験圃場もあります。多くの人が現場で見て、考える機会が増えるように願っています。