縦箱正立輸送を迅速に行って、コルク栓の乾燥萎縮を避けられたとしても、そのまま倉庫に保管するのであれば、やはりコルクの乾燥を防ぐためのフィルム梱包などの手は打っておかなければならない。倉庫保管にはもう一つ考えるべきことがある。容積借りにするか、面積借りにするか、どちらを選ぶかだ。
縦箱正立で長期保存するにはフィルム梱包が必須
前回の説明で、縦箱正立輸送によるワイン輸入はさまざまにチャレンジが可能であることはご理解いただけたと思うので、話を戻そう。ただ、私の論調はコルク栓放棄の方向へ向かってしまうが、そこはご容赦願いたい。高品質のメドックやコート・ドールを、自分自身が納得できるよい熟成状態で、私が生きて香味感知能力が失われる前に、日本で味覚体験してみたい。そのために最も効果的で理にかなった方法を突き詰めていくと、どうしてもそう考えてしまうのだ。
現在の、まだ多くのワインでコルク栓が使われている状況下で、縦箱正立輸送を実現する管理点をまとめるとこうなる――縦箱に正立状態で梱包し、輸送中のコルク乾燥を回避するためにパッケージの気密を保つ対策(前回参照)を採り、リーファー・コンテナの設定温度を間違えず、到着港のマーシャリング・ヤードでの電源確保や契約倉庫までの陸送時の電源確保にも抜かりなく、ドック・シェルター完備の適切な温度設定の倉庫内に安らかに静置し、そのワインたちが、最後に販売店やエンド・ユーザーの元へ横倒しされることも振動を受けることもなく安全に届けられること。
だが、これにはすべての努力をぶち壊しにする弱点というか、クリティカルコントロールポイント(critical control point/必須管理点)の穴があることは押さえておかなければならない。つまり、上記は販売店とエンド・ユーザーがともに適切な貯蔵設備を持ち、仕入れや購入を12本入りのケース単位で行ってくれることが前提になっているということだ。
そのリスクに対応しながら、しかも売り場での陳列やエンド・ユーザーの貯蔵のしやすさも確保するように考えるとすれば、(5)ボトル単位でフィルムで完全密閉してしまう(前回参照)ことが最も安心である。さらには、契約倉庫で縦箱正立状態での定温長期貯蔵をもくろむ場合も、(5)は不可欠の処置と言える。
もしも(5)の処置をしないで済ませようと考えるならば、コルク栓(天然でも加工でも)を放棄し、合成樹脂コルク栓やスティルヴァン・スクリュー等の新しいワイン栓の採用が不可欠である。
倉庫の容積借りと面積借りのメリット・デメリット
さて、倉庫業者との契約には、容積を借りる方法と面積を借りる方法がある。容積を借りる方法では、ワインの箱の平均容積を算出し、その単価を決めて在庫量に対応する賃料を支払う形となる。他方、面積を借りる方法では、倉庫内の位置を指定して、在庫量にかかわりなく床面積に対して賃料を支払う形となる。
この両者にはメリットとデメリットがある。以下にまとめた。
《容積借りの場合》
メリットは、賃料を変動費化することができ、在庫するためのコストを圧縮し得る点だ。とくに、高回転商材であればよい選択になるだろう。
デメリットは、倉庫内の場所を固定できないことだ。貸主である倉庫会社にとっては、空間の無駄が経営を左右するため、天地左右なるべく隙間なく荷を積み上げようとするからだ。
それゆえに、定温倉庫でありながら空気循環が悪化し、設定温度に対して実際の貯蔵温度が微妙にぶれることが多くなる。
しかも、通路や作業用スペースも最小限に抑え込まれる。結果、一つのアイテムを出庫するたびに、無関係なアイテムまでもが不必要な移動を強いられることになる。平箱横臥タイプのパッケージであれば、相当な攪拌ダメージを受けることになる。
《面積借りの場合》
メリットは、倉庫内の場所を指定できることにより、温度変化の少ない場所を選び、温度調整に支障をきたさないような収納量を維持できる。アングル棚(スチールラック)を適切な形で配置し、ピッキングに際して目的外アイテムを不必要に移動しないようにすれば、攪拌ダメージも抑止できる。
デメリットは、賃料が固定費化し、高額になりがちだという点だけだろう。