今回は、「健康食品のテレビ通販の地位・役割を拡大した立役者」と私が個人的に思っている企業についてです。どこかというと、ビールやウーロン茶やワインでおなじみ、そして今や同じくらい健康食品が重要な商品になっている会社。……これは名前を出してかまわないでしょう、サントリーです!
「伝えることが“数字”で終わらないんです」
皆さん「ゴマのセサミン」の通販番組を見たことがあるのではないでしょうか。筆者はこのサントリーとちょいとお仕事させていただいたこともありますが、正直、トップランナーとなっているだけの理由があるな、と思いました。その実感を少し書いていきたいと思います。
サントリーが通販番組で伝えているメッセージの特徴は、「健康になりましょう」で終わらず「健康だとこんなに楽しく充実した日々があるので、こんな楽しさを感じてみませんか」という“憧れる姿”までを、丁寧に丁寧に描いている点です。これ、今でこそ多くの通販がやっていますが以前はそうではありませんでした。
“サントリー以前型”では、「食物繊維がキャベツの何十倍! カルシウムが牛乳の○○倍! それがこの1粒で摂れます!(以上!)」というような形で終わるものがほとんどだったんです。つまり、「○○倍」という数字をアピールの第一ポイントに置きがちだったんですね。
しかしサントリーは、数字的なメリットも伝えてはいるのですが、“飲み始めると毎日がどうなるのか”という「日常の姿や感情」にアピールのポイントを置いたのです。愛飲者が次々と出てきて、イキイキとした笑顔で日々の充実ぶりを語る、その姿が視聴者に憧れを覚えさせ、購入へと背中をおしていったわけですね。
「伝えちゃいけないことより、伝えられることがあるわけです」
こう書いても、ごく当たり前のように思うかもしれません。でも、“健康番組ブーム”だったころを思い出してください……あの「あるある大事典」をはじめ、データを重視する傾向の番組が花盛りだったのです。
そして、テレビで「ある食品を分析すると□□が△△gも入っていた」と放映→放送翌日バカ売れ、ということがあったために、多くの健康食品の企業がその図式に乗っかろうとしていました。
そんな中で、データだけで終わるのをよしとせず、“人がイキイキとしている姿・感覚”まで伝えることを重視したのがサントリーです。私は最初このリクエストを意外に思っていましたが、ビジネスでよく言われる「消費者の立場になって」という言葉を、正面から考えぬいた結果なのだなぁとわかってからは、尊敬の念すら覚えました。
もちろんその背景には、独自の研究所を持ち、費用をかけて入念に開発をしたという商品力の強さはあります。ですが、その結果得られた薬でいわば効能に当たるものを伝えることは不可能でした。「健康食品は薬のような効能をもたらすものではない」という薬事法の趣旨と規制があるからです。
そんな“○○に効く”ということを“サラサラ”のようなメタファーや錯覚、勘違いをあれこれ工夫して伝えようとあがくよりも、“飲んだ人がどんな風に喜びを感じているのか”という感情的な面に寄せていったのは、見事だなぁと思います。
サントリーのこと、さらに次回、もう少しお話しましょう。