2012年食の10大ニュース[8]

  1. すかいらーく、あきんどスシローが外資系ファンド傘下に
  2. 牛丼チェーンの全需要対応化が進む
  3. コーラにも「トクホ」、トマトジュースの売れ行き2倍など、飲料の健康志向高まる
  4. サントリーホールディングス、子会社上場でM&A加速へ
  5. 俺のイタリアンに次いで、俺のフレンチがオープン
  6. レバ刺し販売禁止
  7. コメダ珈琲、関西・関東出店で躍進
  8. サッポロビールがセブン&アイ向けPBビールの販売開始
  9. “おひとり様需要”に注目集まる
  10. ノロウイルス、猛威をふるう

 この年末、フードビジネスコンサルタントの清水均さん(プロジェクト・ドゥ ホスピタリティマネージメント研究所代表)、元商業界出版部長の石川秀憲さん(名古屋文理大学健康生活学部フードビジネス学科教授)、イワサキ・ビーアイの岩崎毅さん(岩崎代表取締役)といっしょに(順不同)、2012年の食ビジネスを振り返ってみた。

1. すかいらーく、あきんどスシローが外資系ファンド傘下に

 これまで国内の投資ファンドが保有していたすかいらーく、あきんどスシローの株式が外資系投資ファンドに売り渡された。海外の投資ファンドが、日本の外食企業を投資・売買の対象として本格的に目をつけ始めていることを示しており、すでに国内系投資ファンドが実質的に保有するコメダ、ひらまつといった外食企業にも外資の手が伸びる可能性がある。

2. 牛丼チェーンの全需要対応化が進む

 これまで牛丼を核にメニューを絞り込んで営業してきた牛丼チェーンが、メニューを拡大することで稼ぐ時間帯と客層の拡大に乗り出した。

「すき家」を例にとれば、ハンバーグを中心とした定食メニュー、卵や焼き鮭、納豆、豚汁などを組み合わせた朝食メニュー、果てはお子様メニューを展開するなど、ファミリーレストランに近いメニュー揃えになっている。

3. コーラにも「トクホ」、トマトジュースの売れ行き2倍など、飲料の健康志向高まる

 キリン、ペプシ(サントリー)が相次いで特定保健用食品許可(承認)のコーラを発売した。

 キリンの「メッツ コーラ」は、当初年間100万ケースの販売を見込んだが、700万ケースに上方修正するほどの売れ行きという。「コーラを飲むシーンで、健康のことを気にするか」という声もあったが、見事に裏切られた形に。

 カゴメやデルモンテ(キッコーマン)のトマトジュースの販売も好調で、とくにカゴメは前年比2倍の売り上げを見込んでいる。飲料にも健康志向が強く表れていることを示すものと言えそうだ。

4. サントリーHD、子会社上場でM&A加速へ

 サントリーホールディングスが2013年夏をめどに、主力子会社で、清涼飲料事業を手掛けるサントリー食品インターナショナルを東京証券取引所に上場することを発表した。これにより約5000億円の資金調達を見込んでおり、主に海外でのM&A資金に充てる。

 国内食品メーカーでは、味の素が子会社のカルピスをアサヒビールグループに売却。売却資金で、アミノ酸事業のテコ入れを図るなど、企業の上場や売買による資金調達が増えてきている。

8. サッポロビールがセブン&アイ向けPBビールの販売開始

 サッポロビールが国内ビールメーカーとしては初めて、セブン&アイ向けPBビールを発売した。これまで流通系PBビールは海外メーカーが受託生産する形で供給してきたが、シェアの低迷に苦しむサッポロが、「背に腹は代えられぬ」とPBビールの生産に乗り出したという声も。

 大手スーパーや生協などはPB商品の開発に力を入れているが、その生産を引き受けるのは中堅・中小メーカーが中心であった。近年は大手メーカーが“素性”を明かしてPB商品の生産に乗り出す事例が増えているが、今後自社商品との競合などが起きないかが見どころとなる。

10. ノロウイルス、猛威をふるう

 ノロウイルスを中心とした感染性胃腸炎の患者が急増している。東京都福祉保健局の発表によれば、2012年48週(11月26日~12月2日)の患者報告数/定点は23.6人と、ここ数年で最も多く、かつ速く流行警報基準を超えた。九州では弁当由来のノロウイルスが原因と見られる患者が1500人を超える事例が報告されている。変異型ウイルスの報告もあり、2012年冬のノロウイルスの脅威は、ここ数年では最大のものとなっている。


2012年の10大ニュース
《特別企画》2012年食の10大ニュース[一覧]
これまでの「10大ニュース」
《特別企画》2011年食の10大ニュース[一覧]
《特別企画》2010年食の10大ニュース[一覧]
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About 加藤秀雄 3 Articles
フードジャーナリスト かとう・ひでお 1973年日本経済新聞入社。88年3月日経マグロウヒル社(現日経BP社)に出向。「日経レストラン」の創刊準備に携わり、創刊時、副編集長。91年から約9年間編集長を務めた後、「日経レストラン」「日経食品マーケット」発行人を歴任。現在、人間総合科学大学、東京栄養食糧専門学校非常勤講師。社団法人オープン・フードサービス・システム・コンソーシアム代表理事、日経読み方セミナー講師、宮城県食大使などを務めている。