前回、6~7年ほど前を振り返ってのプロデューサーとの会話……「これまでの通販番組の構成は忘れ、ゴールデンの番組を作るくらいの構成で提案したい!」と言われたモリハタでしたが、さて、その番組はどうなったのか!?
「豪華通販番組は今では珍しくなくなりましたねぇ」
「海外ロケありOK。スタジオとVTR両方ありOK。番組ディレクターはゴールデンで活躍している腕利きどころ」で通販を作るというお話をもらって、それはどうなったかというと……実際にほぼ言ったとおりの規模で実現したんです。
健康食品の通販ですよ!? ロケ地はエジプト、ドイツなど数カ国、古文書をひもとくために海外の識者にもコメントをもらうなど、壮大な番組になりました。
そして結果的に、クライアントは、類似商品を売ろうとする後発の競合他社製品との差別化が番組を通してできたようで、一定の評価も得ることができました。
これにかかわったディレクターさんの一言が非常に象徴的で……「こんなにロケに豊富に出られる番組、地上波でもそうないよ」。
ロケって、出れば出るほどオカネがかかるので、現在の番組作りでは極限まで少なくするように命じられているのです。また、ロケに出るにしても、カメラマン・音声・VE(映像の技術的なところを見る人)を揃えたクルーを発注するとオカネがかかるので、節約のためにディレクターが手持ちカメラを持って出ることが多いんです。
しかし、この海外ロケもいっぱい敢行した番組の例は割と豪華な感じの部類に入りますが、今や決して、ものすごく特別なものではないんです。各番組制作会社も、テレビの一般番組の制作費が減少されていく中で、人や手間を通販番組に非常に注ぐようになってきました。
12年ほど前、構成作家として駆け出しの頃は「モリハタくんも通販“なんか”じゃなくて、立派な番組やれるといいね」(自分自身は両者に特別な差はないと思っていましたが)と言われていた頃とは隔世の感があります。でもたかだか10年で起こった変化なんですよね。いやぁ仕事というのはわからないもんです。
「情報性のある番組は表現のエスカレートを止めないと」
通販に参入する企業は本当にさまざまなので、その志にも差があることは以前も触れました。「二匹目のドジョウを狙う、とくに志のない企業」もあれば(大手企業にもあります)、「本当に心からいいものと思って開発している。それを正しく人々にお伝えしたいという企業」(こちらも企業規模は小さいところから大手まで)など、さまざまに存在しています。そうした中で、従来の成功例を繰り返して(あるいはパクって)、番組作りを続けているところも多数。そんな中で、逆に、番組の質を上げていっているところもあるわけですね。
ただ、その“質の上げ方”はちょっと作り手側も注意しないといけないだろうなぁと思っています。と言うのも、テレビというもの、「今まであったものよりもエスカレートして大げさに伝える」ことが割と常です。だからバラエティでは、毎週のように“史上最強の強敵”が登場したり、毎週のように“史上最強のクライマックス”になったり、ということになります(笑)。ところが、これを情報番組や、情報性を持つ通販でなぞっていくとあまりいい結末にならないという前例は多々あるんですね……。
そう“ヤラセ”や“捏造”です。「前よりスゴイものを見せなきゃ」という強迫観念に駆られて、ないものを作っちゃうわけです。
テレビは何より“公共のもの”であって、クライアントのものではない、ということをキモに命じていかねばなと思ってます。
「ちょっと短いこぼれバナシを一つ」
“やらせ”(!?)で、へぇ~そんなことあんの!? と思わず笑ってしまった、中国のロケコーディネーターさんとのお話を少し。この方、中国のグルメ情報番組の現地ロケをコーディネートするときにお知り合いになったんですが、ボソッと言ってました。「オレ○○湖に伝説の恐竜出さないといけないんだよな~」って(笑)。オイオイオイ、やめときなさい、そんなお仕事……!