テレビの宿命として「画(え)にならないと伝えられない」ということを前回書きました。では、画になったがゆえに大ヒットにつながった、という健康食品はあるのか? と言うと、個人的にはアレとアレだと思いますねぇ~それは何か!
「やっぱ“青汁”ですよ、ビジュアルの優等生は」
「画が伝達手段のキモ、というテレビと相性がよかった健康食品と言えば、なんてったって青汁でしょう! 実際に画面に青い汁が映し出されるというわかりやすさ。おそらくですが、青汁をPRする通販は、全く音声を消して字幕スーパーを取り払ったとしても、そのよさはおおむね伝えられるのではないかと思います。
画:ステーキなど食べる人
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画:カゴにのせた野菜
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画:青汁のパッケージとグラスにとかした青汁
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画:青汁と野菜たくさんのツーショット
とつなげば、
「現代人は肉食が多い」
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「野菜摂ってます?」
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「そこでこの青汁!」
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「この青汁で野菜の成分がとれる!」
と、たぶん商品特性は伝わります。あとは青汁をおいしそうに飲む人、飲む人、飲む人とつながって、お値段と電話番号が表示というわけです。
野菜と商品(青汁)の色が直結して「体によさそう」と説明なしに想起できるのは強いです。それに、どなたなのかは存じ上げないですが「青汁」と名付けた人の明快なセンスは見事! と思ってしまいます。
「“黒酢”は見せ場が多くて、これもいいんですねぇ」
もう1つ、テレビと相性がいい健康食品だなぁと思っているのは「黒酢」です。商品の段階ではサプリメントになるのでただの錠剤なんですが、「伝統的な壷でじっくり熟成されて……」と過程が見えるのはインパクトが強い! また、熟成を始めて、1カ月後→半年後→1年後、と比べると、酢の黒さが次第に濃くなることなんかが明快に伝えられるんですよね。そうした画を重ねながら、手間暇かけた手作り感や希少性も映像で伝えられると、商品の魅力も自ずと増していきます。
メーカーによっては、酢が自然醗酵していることを示す「表面がポコポコしている様子」を映したり、あるいは「微生物が働いているんですよ」ということを示す「酢の表面にビッシリ白い糸みたいなのが張っている」様子を映したりなど、まぁ黒酢というものの特殊性を画で示せる要素が多いんです。
青汁はもはや健康食品の中では古株ですし、黒酢サプリもサプリメントでは、かなり初期に出てきたものと言えると思います。それにもかかわらず、今でも一定して人気があり続けるのは、こうした“テレビ映え”する側面も大きくかかわっているだろうなと思いますねぇ。
「期待の新分野は画にするのに苦労するだろうなぁ」
この先、割とニーズが高まってくるだろうし、メーカー側も売りたいなと思っているはずのジャンルの1つが“脳によい”健康食品です。つまり、「ぼけにくいですよ」ということをにおわすものだろうと思っています(第55回参照)。実際にちらほらとそこを訴求したがっている商品が目立つようになってきた感がありますしね。その働きの科学的な裏付けなどは本稿ではさておき、テレビで“画”で表現するとき……どう伝えたもんかなぁというのは課題でしょうねぇ。たとえば、90歳くらいの愛飲者が出演したとしまして、そのおじいさんがムズカシイ問題を解いていたとしても、その画によって“脳が活発に働いている=このサプリを飲んでいるのもよいのかもね”ということを想起させはせず、ただ「博学なおじいさま、スゴイ」と受け取られるだけだと思うんですよね。
この連載の最初から触れていますように、健康食品は薬ではないので、「飲んだ→頭がよくなった」なんて直接表現ができるわけではないのですが……。こうした画にしにくいものをどう表現するかの打開策の一つとして、近頃ではテレビではなくネットでではありますが、「アニメ」をPRに取り入れているものも出てきました。アニメだと“テキパキ感”とか“キレ者感”というのは、表現の幅が比較的広がったりするわけです。
表現の手段はいろいろ進化するもんですね~!