健康食品をテレビで通販する番組の構成にかかわっているわけですが、通販も含めたテレビスタッフがもんのすごく困るものがあるんです。……それが“画(え)に映らないもの”! 健康をテーマに扱うと、映らないものはいっぱいあるんですよ~。
「画にならないとテレビにならないんです」
どんな番組でも、撮影後の粗編集をチェックする会議などでは「○○な画、ないの?」という言葉がよく飛び交います。言わずもがなですが、テレビは“カメラに映った目に見える映像”でしか伝えられないんですよね。音声もありますが、大事なのはあくまで画。画のインパクトによってリモコン片手にザッピングしている視聴者の興味を引きつけるのが鉄則なわけです。昨今は字幕スーパーを足したり、CGを作ったりが安く出来るようになりましたけど、やっぱり画をどう作るか、ということが最重要。
ですが健康のことを扱っていると画にならないものがイーッパイ出てきます。ビタミンAだとかカルシウムだとかの成分もそもそも映らない(こういうのは、それを多く含む代表的な食品を映すのが一般的)。病気の症状も画にしにくいです。高血圧? 糖尿病?……う~ん画になりにくいですよね。
そうした中でも“画にしやすい症状”というものが一つあります。……想像つきますでしょうか? テレビで健康番組と言えばしょっちゅうテーマに取り上げられるアレ! そう「肥満」とそれを解消するための「ダイエット」ですね。テレビでダイエットが取り上げられることが多いのは、視聴者の興味が高いことに加え、目で見てのわかりやすさというのも大きいと思います。
このように、画にできるがゆえにテレビで取り上げられることが多いもの、逆に画にしにくいがゆえにテレビで取り上げられにくいもの、というのはあると思います。
「『ドロドロ血』は画になるけど『活性酸素』はムリ」
画にすることができたがゆえに一気に広まった“不健康な症状”というのもあります。その代表格は“ドロドロ血”“ベトベト血”でしょうね~! サラサラな血流と対比して映された映像を見たことがある人も多いでしょう。今、この血液ドロドロ/サラサラに興味がある人は多いと思いますが、こうして目で見て印象づけられた人は多いと思います。
その反対に、不健康や老化の一因として語られながらも、画にすることができていないために、未だ多くの人が漠然としかとらえられていないものもあるんですね。その一つが「活性酸素」と、それに対抗する「抗酸化成分」「抗酸化力」だと思います。
健康食品に配合されている成分には、強い抗酸化力がウリとなっているものも多いんですが、その効果が目に見えない! かろうじて、抗酸化力が働いタマモノ(!?)として、元気な姿やきれいなピチピチとした肌を映す、ということでお茶を濁しているのが現状というところでしょうか。
これがどうか画にできないものか? と、過去に健康番組をやっていたスタッフといっしょにいろいろと調べたことがあります。あるかないかわからないけど、理想としては「体の中を特殊なカメラで映す、そこには活性酸素が映っていて、抗酸化物質を食べると消えていく……」というもの……。それを追い求めていたある日、某ディレクターから「抗酸化物質が働くところが撮影できる実験器具があるんですよ!」という知らせ! テンション上がりましたね~。まだそんな映像は見たこともありませんでしたから。
というわけで、実際にディレクター氏が撮影を行い、それを見ることになりました。その結果はというと!……いやぁ言葉で聞いた素晴らしそうな響きとは差があり、非常にわかりにくかったんですねぇ。
それは培養した細胞を特殊な顕微鏡で見た様子を撮影したもので、抗酸化物質が働くとき、一瞬ピカッと光るというものだったんです。それが本当に一瞬で、光の強さも微弱。また、そういう発光現象が体内で実際に起こるわけではなく、あくまで見る人が見やすいように、働いたことを装置が光で示すというものでした。と、こう書きながら、たぶん多くの人にどんな風か伝わっていないと思いますが、その伝わりの悪さから映像はボツに……。結果的にCGで働きを説明する、というありきたりな手法に終わったのでした。
コレが画になっていると、「活性酸素を撃退しなきゃ」というムードは、今よりもっともっとメジャーになっていたのでしょうけどね~。