前回は一般の健康バラエティ番組で「便秘」を取り上げたお話を書きました。便秘といえば本当に多くの女性が悩むテーマなので、視聴率もいい数字が出ると一同期待しておりましたが、それがダメだったというお話をします。実は、この背景には健康食品の普及があったのです。
「ウ●コも出ないけど、数字も出なかったんですねぇ」
さて、「イルカ・イメージでツルンとスッキリ」で笑いも取れたと思った「芸能人の病気/便秘のお悩み」番組、なにしろ女性の多くが抱えるお悩みにターゲットを絞った渾身の力作ですから、「高視聴率間違いなし!」と、我々は思っていたのです。
が、まさかの低視聴率! それも目をおおいたくなるような! 便秘解消スペシャルは惨敗の結果となったのです!
なぜだ!? と思ったんですが、冷静になってよーく考えてみると、これ、ゴールデン・タイムの番組だったんです。なので、「ゴハン食べる時間に便秘の話なんて見たくないわよ!」ってまぁ、そうなるかーと。
ま、私がこう言うのもなんですが、男の人中心で作っているテレビ番組ってこんなもんです(笑)。日ごろ、「女性目線で」「主婦目線で」ということを誰もが口酸っぱく言いながら、それを完全に忘れて番組を作ってしまったわけなんですね。
さて、そんなボロカスに負けた番組ですが、制作過程では健康食品通販に携わる方の参考になるお話もゲットしておりますです。便秘解消につながる食品について、一般の方々にアンケート調査をしまして、みなさんが「効いた!」と挙げるリアルなものをリストアップしたんです。ところがどっこい、これも制作スタッフが頭を抱える結果だったのでして、そのことについてお話しましょう。
「アンケートでいちばん効くとされたのがアレでして」
便秘に効く食品は何か? アンケートの結果では、今や広く知られているものがいろいろ出てきました。いわゆる「腸内環境をよくする食材」というものです。で、それらを総合するとやっぱり「食物繊維が多いものを食べる」「乳酸菌を摂る」ことがいいんだなという結論になっていくわけです。
「じゃあ、これを食べたらいいよ」という例を出そうということになったわけです。それで、「食物繊維も摂れて乳酸菌も摂れるから、キムチがいいよ」っていうことでどうだ! なんてアイデアも出たんですが、まぁ面白くもないし目新しくもないですね(笑)。
実は、そんな平凡なアイデアへ向かっていったのにはわけがあるのです。というのが、アンケート調査の結果では、「これがいちばん効いた」という明らかなナンバーワンが浮かび上がっていたのですが、我々はそれを放送で紹介するわけにはいかないなと考えたのでした。なぜか?
なんと、あのとき我々がリサーチした結果で「ホントーはこれがいちばん効きます」と浮上してきたものは、青汁、だったのです。
コレは制作側として困りました! だって、「便秘を解消できる身近な食、□□人アンケートで『一番効いた』という声が多かったナンバー・ワンとは~?」→「それは青汁です!」→(アレ?)って、ドッチラケるじゃないですか。まるで、公共の電波を使って、広告ではないツージョーの番組で、青汁業界のヨイショしているように見えちゃいます。
というわけで、この番組の「便秘を解消できる身近な食、□□人アンケート」という企画自体も成立しないことになり、結局ありきたりの「お通じによい食品」をあてがってお茶を濁すということになったというトホホな結果となりました。この番組、出演者が見つからなーいという悩みのほかに、こんな困った事態も裏にはあったのです。
筆者はこのとき、これからの健康情報番組ってムズカシイかもなぁ~と思いました。
「健康法を聞いたら、健康食品の名前が出てきちゃうという」
どういうことかと言うと、「一般の方々に実際に健康法を聞いてみた」→「いわゆる健康食品」というリアルな世間の有様に直面したとき、これからの健康バラエティ番組は、実際の消費者と距離が出来てくるなぁと感じたのです。つまり、世間のリアルな情報は「A会社の商品aがいいよ!」なんだけど、そのまんま垂れ流しては公共の電波が一社の宣伝に荷担することになってしまうので、テレビ番組ではそれが言えない――となるからです。
あ、こんなこと考えるのは某公共放送さんだけだと思ってました? いえいえ、民放だってこういうことは問題だと考えているんです。
で、実際このあとも、似たようなことに直面したことは何度かあったんです。たとえば、「お肌によいものは?」とリサーチすると「コラーゲン」と返ってくる。「ではコラーゲンをとるのに効率よい食べ物は?」となると、コラーゲンドリンクになっちゃうので話題としてはパス。
いや、一般の食べ物にも「コラーゲンたっぷり」なものはありますよ。でも、それってフカヒレとか(汗)。ならば、フカヒレを食べるよりコラーゲンドリンクを買って飲む方が、ずっと手軽で身近だってことになるじゃないですか(コラーゲンを摂ることがホントにお肌にいいかどうかは別問題です。「コラーゲンを摂りたい」と思っている人が、手軽にたくさん摂るには、というお話です)。
それまでの健康バラエティの構成法としては、日常的にキッチンで料理する食材にスポットを当てて、「実はなんのヘンテツもないコレが△△△(栄養成分)が摂れるスーパー食材だったのです!」と言っておきの、「でもみんながやってしまいがちな調理法が、その成分を失わせている! たとえば煮ると流れ出す……加熱すると減っちゃう……」「逆にその成分の効果を上げるには、こんな調理法で、しかもコレと食べ合わせるとさらに吸収がよくなって……」といった具合に、キッチンのまな板の上で解決法を発展させていくのが常だったんです。
でも、それすら面倒、「通販で買った方がお手頃よ♪」というのが今の時代なわけです(なんて書きながら、健康食品がはやるワケもわかるような気がしていますが)。それで、最近は通販番組ではない一般の健康バラエティでも、健康食品の具体的な商品を挙げながら“情報”として紹介する番組も多くなってきています。こういうのはどうなんでしょうねぇ?
今は、健康バラエティという番組ジャンルは、レギュラー番組として定着してない感じがあるように思います。それには、捏造問題など不祥事もありましたが、実はこのようなある種のネタ切れというか、ネタの偏りというものがあるように見ています。健康食品の普及で、健康バラエティという番組は成り立たなくなりつつあるんではないかと。