健康食品の通販番組に欠かせない存在とも言える、医学博士などの“専門家”。とある専門家が、ライバルに当たる商品の通販番組に登場! ということはときどきあるというお話をしました。で、その中でも「スポンサーが意図的にライバル社と同じ専門家を出したがった」という事例をご紹介しましょう。
「ライバル商品と同じコメンテーターって……」
これは私がかかわった通販で実際にあったお話です。仮に有効成分「モリハタール」(筆者が勝手に作った成分名)をウリにした「モリハタールX」というサプリだったとしますね。
この「モリハタール」をウリにした商品は、すでに他社が「モリハタールA」として売り出してヒットしていたと考えてください。「モリハタールX」は「モリハタールA」の後発品だったんです。
そんな中で「モリハタールX」のスポンサーからリクエストされたのは、「今ヒットしているライバル社『モリハタールA』の通販で登場している医学博士△△先生に、我々『モリハタールX』の通販でも、全く同じ解説をしてほしい」というものでした!
なぜかというと、その先生が「モリハタールとは……」と解説する様子は、結構通販好きの人や通販業界では知っている人も多くて、おなじみのものだったんですね。
そこで後発の「モリハタールX」さんは、同じ医学博士を登場させることで「あ、あのよく見ている『モリハタールA』と同じモノね」と思い込ませ、「モリハタールA」の購入者を自分たちの「モリハタールX」に乗り換えさせようと狙ったワケなんですね~!
この意図は、スポンサー(一部上場の結構有名な会社ですよ)から直接聞きましたからね。いやぁ、なんちゅう作戦だと思いましたねぇ。
「先生はライバル商品だとか気にしてませんでした」
実際、その後発の「モリハタールX」はすでにヒットしている「モリハタールA」と、成分構成も形状もほぼおんなじ。言ってみればパクリですな(繰り返しますが、「モリハタールA」「モリハタールX」は筆者が勝手に考えた仮名ですよ!)。
このとき、「同じ専門家を出させるなんて~」と思いながら、番組制作スタッフはどうしたか? ハイ、もちろんダメモトでその専門家に話を打診しました。スポンサーの直接指令はやらないと納得してもらえないから、意外と簡単にやってみるわけです。
で、「さすがにダメだろう」と思ったら、何と即OK。別に専門家の方は、2社の関係なんて気にはしていなく、「モリハタールの解説できます?」「いいですよ」くらいのスタンスなんですよね。
まあ考えてみれば、テレビ番組の成分解説なんて、先生にとっては副業にすぎないわけですから。そんなわけで、ライバル会社の通販の両方共に、共通の専門家が成分の解説をしているという事態となりました。ちなみに、その他の展開もそっくりになりました。なんせスポンサーやその意向をうけた代理店の、現場への指示が「同じに見えるように作ってくれ」ですから。(笑)
さて結果はどうなったか!?……パクリ側、思うようにヒットしなかったそうです(そこそこは売れたらしい)。
まあ、ここまでパクッたのは際立った例ですが、「パクって売ろう」というのは、通販は日常茶飯事ですね。そのほとんどの場合、後発組は値段を下げて売ります。その過程で、すべてがそうではないですが、原料などがやや質が落ちてコストダウンしていることが多いように感じますね。
一方、そのようなパクリ対策のため、本家の方は同じ商品をグレードアップさせて「Ⅱ」としたり「NEW」としたりすることもよくあります。
今回は「スポンサーがライバル社とそっくりに作りたいから」通販番組に登場する専門家がライバル社と同じになってしまったという例を書きましたが、違った理由から、あちこちの商品で同じ医学博士が登場しがちな理由もあるんです。その話は次回!