前回は、健康食品の通販に登場する専門家の肩書き、実は「医師NG、医学博士ならOK」というオキテがあることに触れました。健康食品はクスリじゃないから、医師という立場であたかも病気を治すように見せちゃだめですよ、ということだったわけですが。では、コメントしてくれる医師ならぬ医学博士。この人たちはどうやって選ばれているのか、ということについてお話を。
「大企業の商品なら、専門家を探して来ないとです」
健康食品に含まれる成分の効果効能を説明する医学博士、出演している立ち位置のパターンは大きく2つあります。
(1)商品の監修などにかかわっている人(商品のスポンサーが依頼)
(2)通販番組の制作スタッフが依頼(商品には直接は無関係)
という2パターン。(1)の「監修的立場」は、その商品の通販番組だけでなく、チラシやWebなど、ありとあらゆるPRの媒体にその専門家が登場していることが多いですね。また、監修よりも力の入れ方がもう1つ上、医学博士が開発の主導権をとってリーダーになっている場合も、ごくまれですがときどきあります。
ただし、商品監修に1人の医学博士を置いて、というパターンは多数派ではありません。これは、何年も売っていきたい商品について、完全に1人の先生の学説をあてはめるということが難しい背景もあるのでしょう。
大企業が開発した健康食品ほど、その開発・検証には、多くの研究機関、多くの研究者がかかわっている場合が多くなります。さまざまな方面から問題がないことを検証するためですね。
そうなると、特定の一人を監修者として登場させることは難しいわけです。ということで、通販番組で登場する医学博士で多いのは、(2)の「番組スタッフが依頼」のパターンなんですが、では番組スタッフはどうやって先生を選ぶのでしょう?
「個人の方か、私立大学の方がいいんですね」
別に特別なことはありません。実はネットで検索したり、市販の書籍を読んで選ぶんです。
たとえばコラーゲンがメインのサプリがある。番組上、コラーゲンのことを解説する医学博士に登場してほしい――そうなると、ネット検索や本から、適する人を探すわけです。番組制作のウラってこんなにシンプルなんですね~。
実はこれは、一般の番組でも一緒。たとえばとある企画会議で「カリスマデコリストいない?」みたいな話が出ると、それをネットで調べてみる。そしてアポをとってみる。みたいな感じです。
なので、これはお得情報ですが、「テレビに出た~い」という方々がブログやホームページで自分のことを発信しておくことは、とても意味があることなんですね。
閑話休題。話を通販の医学博士に戻しますと、そうして番組に出てくれそうな医学博士がリストアップされることになります。
リストアップと言うのは、ここまででほぼ数人レベルになっている場合が多いですね。というのは、オチる人がいるからです。たとえば「国立○○病院所属」とか公的な組織に所属している人は、多くの場合対象外になります。なぜかというと、そういう人の場合は本人だけでなく、その所属機関にも出演許可を取らないといけなくてメンドウクサイ場合が多い。
そんなこともあって、個人で活動している方に偏っていくものです。また、大学の先生の場合でも、私立の先生は、学校側への許可というのはそんなにうるさくないもので、やはり私立大の先生が多くなるという傾向はあります。
「編集すると先生もほめたみたいに」
そうやって出演依頼をする先生方には何を解説してもらうか。これは、あくまで「成分」であり、商品の特性ではありません。
ややこしいかもしれませんが、たとえばコラーゲンがウリの「びっくりコラーゲンサプリ」という商品がある場合、商品の特徴ではなく、あくまで「コラーゲン」という成分について説明してもらいます。「コラーゲンは肌の弾力を維持する成分ですが、二十歳を過ぎる頃から減少してくると言われています」などと。だから「びっくりコラーゲンサプリをとった方がよいですね」とは、多くの場合は言ってもらいません。あくまでコラーゲンという成分の客観的な説明を行うだけです。
そして番組の構成上は、そのコメントの直後に「そこで、年と共に減少しがちなコラーゲンを補えるのが、びっくりコラーゲン!」などのナレーションを挟んで展開するのが常です。
そういう風にして編集し終わったものを見ると、専門家もその商品をほめているように感じちゃうわけです。
このようにして登場する医学博士は、別にその商品との専属契約をしているわけでもありませんから、実は複数の商品、ときには競合する同士の商品両方の通販番組に登場することだってあります!
それを“意図的に”販売戦略の一つとしてとった、ある事例を次回ご紹介しましょう。