商品の特徴を語るコメンテーターが、その商品を売っている会社の社長というケースがあります。強みは体験で語れることですが、それゆえのハズレもあります。しかし、やはり商品への愛情がある社長たちの語りは効果がはっきり出るものです。
「社長の場合は、“私”の話で熱く語ります」
で、その商品を売っている会社の社長がコメンテーターという場合に特徴的なことがあります。「この健康食品を使うと何がいいの?」ということを、「私を見てください!」と“私”という主語で説明ができることなんです。これは説得力あります!
どのような成分を採用しているかなども、通常は「AとBとCが入っていまして」という言い方になるところ、「私どもはAとBとCを入れまして」と、“私がやってきたこと”として語れるわけなんです。そして、なぜそうしたか、一つひとつの理由を体験談として語るので、聞くほどに納得は深まるばかり~、となるわけです。
このような場合、「カツゼツが悪い」とか「セリフを“噛む”」とかは、実はさほど気になりません。そんな表面上のことより、内容が濃いからつい聞いてしまうわけなんです!
「心が入りすぎて、わけわかんないとか」
「じゃあ、社長や社員がコメンテーターをするのがいちばんいいじゃないか」と思いますよね? でも、この方々にも落とし穴があります。
ありがちなのは、「開発や販売のために本人がものすごくたいへんだったので、力説したい点がコアすぎて視聴者がついていけない」というパターンです。
たとえば“美白”のために画期的な成分を世界中探し回って、いちばんいいものを見つけて、そして買い付けルートを探して、そしてこれまでにない量の豊富さで配合! というようなことがあったとします。
いま書いたような順番で話せば、ふつースゴサは伝わると思うんですが、困った社長の場合、その一つひとつが詳しくなりすぎちゃうわけです。
たとえば、「私は美白に画期的な成分を入れようと思ったんです。そこでまずドコドコを探しました。そこでナニナニ大学のナントカ先生という人とン年間いろいろとお話を聞いたんです。ところが、結果的にはそれを配合するのはどうしてもうまくいかなくって。なぜかと言うと、錠剤にするときにホニャララ製法っていうのがあるんですけど、その生産をするのにはコストがかかりまして、それと言うのも……」と、だんだんと視聴者がいちばん知りたい「効能と貴重さ」から離れていって、個人の「こんなにたいへんでしたエピソード」に陥っていきがちなのです。
しかも、最終的に出来上がった商品のいちばんのウリのポイントと、社長が開発にいちばん苦労したことがあまり関係なかったりする(笑)。もちろん収録後に編集をするので、商品概要が伝わるようにまとめるんですけど、現場にいると「ここ10年の苦労話をきいたが……。で、この商品何がよかったんだっけ?」的な感想が残ったりするものです。
逆に言うと、その中での“ウリ”を立たせるエピソードだけを熱っぽく語れるのが、「プロのコメンテーター」ということになるんですけどね。
「でもやっぱり、心が入ると強いですよー」
とは言え、社員や社長がコメンテーターとなって商品を紹介する場合、もう一つの魅力にして、最大の魅力と言っていいことがあります。
それは、やはり商品への愛着が強いことです。心底「いいもの」と本心からの思いがあって紹介をしているから、言葉や表情の強さは、“割り切って”やってる人とは一枚違います。
こうした“本心”って、フシギとテレビって現れるんですよ。最近はさまざまな番組で、何を見ても「スゴイ!」何を食べても「ウマイ~!」とタレントさんが連呼して、“感動も大安売り!”という感がありますが、みなさんも「コレ本心から喜んでるな」か「コレホントはそうスゴクもなかろう」というのは、なんとなーくだけど感じるのではないでしょうか。
リアルな感情って人の表情や言葉のハシバシに現れるし、再現しようと思ってもなかなかできないんですよね。だから、通販に限らず、番組の中で“感動”や“驚き”がほしい展開のときは、詳細は台本にも書きませんし、リハーサルも行いません。驚きを録るためには、収録とはいえ“一発勝負”です!
そういう一生懸命さやひたむきな思いって、実は商品のことを科学的にアレコレ説明するよりも、効果大なんです。“視聴者のリアクション=注文する人の数”は、テレビの中で話している人の心が入っている場合に、ど~んと伸びるものです。ま、そのホンキと科学的な目線と、両方を番組に織り込もうと狙ってはいるんですけどね。
「視聴者のみなさんは勉強しようなんて考えてないです」
なぜそうなるんでしょうか? それは、テレビを見ている視聴者は何を思っているかと原点に立ち返るとか~んたんにわかります。視聴者のみなさんは、テレビを見て「難しいことを勉強しよう、知ろう」なんては思ってないですから。なんとなーくテレビをポチッと点けたら、非常に熱ぽっく語っている女性が目に止まった。聞いていると健康食品で、その人が何度も何度もホントにいいと言っているから思わず聞いてしまって、最終的に試しに買ってみようかと電話……というのが視聴者の姿です。
「目に止まるように目立たせる、飽きさせない、難しいことは最小限しか言わない」というのが、やっぱりテレビの基本にあります。
制作の落とし穴として、番組作りのために対象を知るほどに、「アレにも触れたい、コレにも触れたい」と思いがちなんです。けれど、見ている方は、「興味あることしか聞きたくないし見たくなーい、飽きたらチャンネル変えるもん」というスタンスだということ、忘れちゃいけないんですね。
とは思うんだけど、やっぱりときどき忘れがちになりますね。
あ! この文章を読んでくださっているみなさんのことも、もっと考えないと……ですね!