前回は「スゴイおばちゃん」たち=「通販番組で絶妙のタイミングで相づちや歓声をはさんでくるおばちゃん」たち=通称「笑い屋」さんたちをナマで見た衝撃に触れましたが、その続きをお話しましょう。このおばちゃんたちがいると、こんな御利益もあるの! というお話です。
「おばちゃんたちのおかげで出演者もノリノリです」
筆者は“効果音”の一つと思いこんでいた“おばちゃんたちの相づち”。そうではなかったんです。
とある通販番組のスタジオ収録の現場で、リアルに座っている観覧客のみなさん(厳密に言えば半観覧客/身内の「笑い屋」さん)から、その声が発せられているのを見て感激したわけです。で、それを見ていて思ったのは、歓声がスタジオに本当にいるおかげで、出演のタレントさん(通販商品の説明を受ける側の芸能人)のテンションはがぜん上がるな、と。
収録のスタジオって、お客さんがいないと本番中は本当に寂しいんです。だけどおばちゃんたちの声が展開に活気をつけて、タレントさんの方も本当におばちゃんたちが納得することを話したくなって、“いいコメント”をするんですよね。やはりタレントさんは客商売。目の前に観覧客がいるかどうかで違います。それは多分スタッフも一緒でしょうけどね。
そしてもう一つ……おばちゃんたちの目があることで、いいことがあるんですよ。これは私が勝手に考えたことですが、これはプロデューサーも計算に入れているんじゃないかなーと思います。
何かって思うでしょう? それは、ちょっと気難し目のタレントさんも、おばちゃんたちがいる前ですから、本番で無理難題を言い出したり、スタッフに暴言(!?)ということも抑えられているんじゃないかなと思うわけです。
なにしろ、おばちゃんたちはキホン“一般人”ですから。タレントさんも一般の人の前で、せっかく育ててきた自分の好いイメージを壊すような言動は出来ませんから。
「おばちゃんにはお金がかかるんですよ」
テレビ番組をスタジオで収録する場合、そこに一般の観覧客を呼ぶかどうかは、番組制作上けっこう議論になります。
と言うのは、やっぱりお金の問題です。現場の雰囲気やスタジオが映ったときの映像の出来を考えると、臨場感が出るので観覧客は呼びたいという気持ちは起こります。ですが、呼ぶとその分、お金は出て行きます。
純粋に一般のお客の場合は、募集のための費用とか謝礼とかが必要になります。あるいは前回触れたように、一般の人に限りなく近い人を登録していて動員するプロダクションというものもあるわけで、その場合は観覧客のバイト代(いちおうお仕事なんです)を含めてプロダクションに支払う費用が発生する。さらに、現場でお客を整理するためにスタッフの仕事も増えます。
なので、制作費が潤沢でない近年は「観覧客を呼ばない」選択肢が増えていますね。これは通販番組に限ったお話ではないです。
では、私が立ち会った通販の番組は、なぜ観覧客を呼んでいたのか? コストが余計にかかってもいいほど潤沢な制作費があるのか? というと、そういうわけではないんです。答えは、「あとで音を足すよりも、現場で一緒に撮った方が、呼ぶためのお金を考えてもオトクだから」だからなのです。
通販番組のV(VTR)は、放送に使う部分の7~8割は歓声が入るので、それだけの量をあとで足す手間(これには、もちろんその仕事をする人の人件費だけでなく、スタジオ代などもかかりますよー)を考えると、現場で一緒に撮っておいた方が安上がりだということになるわけなんですね。
というわけで、通販番組に「観覧客」は大切な存在なのです。
え? 昨日の夜中に見た通販番組はお客さんが映っていなかった? なるほど。実は!“観覧客を映しちゃいけない!”というナゾのルールがあるのです。そこのところを次回お話しましょう。