前回に続き、魚の健康成分として注目を集めているDHAについてです。DHAは魚の脂に含まれる成分なのですが、テレビ通販番組では「サラサラ~」と言っていますね。あれは何が「サラサラ~」なのかご存知ですか?
「魚もDHAも鮮度が大切。と考えると、そもそも論へ……」
サプリメント素材としてのDHAも、実は“鮮度”が大切なものだそうです。DHAもEPAも空気中では酸化しやすいとされているので、魚から取ってすぐのものと時間が経ったものとでは、やっぱり前者がいいわけです。
「じゃあサプリメントのDHAって、魚から取ってから時間が経っているわけだからダメじゃない」と思うでしょう。ところがここ、各メーカーさんはDHAが酸化しない工夫を凝らしています。
薬で言えば剤形を酸化しにくいものとしたり、抗酸化力のある成分と組み合わせてサプリメントにしているものもあります。
しかし、そもそも鮮度のことを考え出すと、どんな栄養成分でも「健康食品より取れたての食べ物の方がいいのでは……」となってしまいます。もちろん! でもそれができない生活などの事情があるから健康食品を活用しましょうというのが健康食品の基本的なスタンスなわけで、この話は無限ループへ……。ですので、これ以上考えるのはやめときます。
「『サラサラ』って、ナンダと思うじゃないですか」
そんなDHA、テレビ通販などで訴求ポイントとしてよく使われるのが「サラサラ」という言葉です。しかしこれ、「何がサラサラなんだろう?」と思いますよね。
テレビの通販番組の中では、この「サラサラ」はあくまで「DHAという脂肪酸の形状を指して説明している言葉」なのです。食肉の脂は、室温で白く固まっていますが、DHAは室温で液体でサラサラですよと、そこを表現しています。あ・く・ま・で・も、効能を指して言っているのではありません!!
え? 建前だろうって? はい。「サラサラですねー」と言っている映像を示して、これを見た人に何を想起させたいのかは、みなさんおわかりでしょう!(私は言いません。サラサラのDHAが何のサラサラに役立つのかは、あちこちでいろんな人がいろんなことを唱えていますので、みなさんでお調べの上、それぞれでご判断ください!)
しかし、この「見た目がサラサラだからサラサラと言っているだけですよ」作戦、誰が使い出したのかは知りませんが、通販広告の発明品という気がします。
「ほかにもありますよ、広告業界の“発明ワード”」
健康食品の特性を少しでもアピールしようと、さまざまな規制や取り決めがある中で、広告業界では次々と言葉が“発明”されています。
映画界の“ナンバー・ワン”が、よく調べてみると「ある週だけナンバーワン・ヒットだった」とか。「○○原作作品史上・全米ナンバー・ワン」とかいうのも、「その作家、まだ数作しか書いてないんで!」というのもあります。
こういうのは、“広告業界の発明ワード”ですね。
健康食品業界もあの手この手を尽くしています。たとえば「エイジングのパートナーに」といった言葉。これは「アンチエイジング」とは言えないからです。「中高年期におすすめ」というのも、「更年期におすすめ」とすると「更年期障害」を指してしまってNGだからです。
ただ、こうした言い換えや代替表現の類への規制は年々厳しくなっています。効能の断言はもとより、効能を連想させる語も表現が厳しくなっているというのが現状です。
「で、やっぱり魚を食べると健康になるんでしょうかね?」
というわけでDHAから話がそれてしまいましたが、日本が長寿国となった理由をちょっと考えてみました。これにはきっと、日本人の食生活が欧米人のそれに比べて魚中心だったことが関係あるだろうな、その結果にDHAも関係しているだろうな、と、思いました。
でも、それホントだろうなぁと思って調べたことがあります――この結果には正直驚きました。何かと言うと、「じゃあ、長寿国日本の中でも最も魚を食べている所ってどこなんだろう?」と思って調べてみたのです。
「最も魚を食べている所」の調べ方にはいろいろあると思いますが、入手しやすいデータとして、「家計調査」で都市別・品目別の購入高ランキングを見てみました(http://www.stat.go.jp/data/kakei/5.htm←こちらの下の方に「魚介類」のデータへのリンクがあります)。
上位は、富山市、青森市、金沢市……。この中には、平均寿命が長くない都道府県の都市が含まれます。一方、魚介類の購入高が最も低い都市にはさらに驚きました。なんと那覇。そう、長寿県として知られる沖縄の県庁所在地です!
こうしたデータの比べ方も、大ざっぱなものですが、とりあえず、「魚介類を多く取るから長生きする」ということも簡単には言えないものだとわかった次第です。
まあ健康は、やっぱり、食・気持ち・習慣等のバランスっていうことでしょうか。