もとは1社独走だった青汁ですが、その後新商品が追い上げ、現在は健康食品でも最も競争の激しいジャンルの一つになっています。その競争の中で、商品の中身も、売り方も、いろいろな進歩を遂げてきました。
「話はだんだん具体的になって行って……」
●青汁進歩ステップ1
「まずくない、ウマイ!」
キューサイの「まず~い。もう一杯!」のCMは、「良薬口に苦し=まずいからこそ体によさそう」というイメージを生んでまず人気を博したわけです。ところが、その次に登場してきたのが「ウチのはマズくない! ウマイ青汁です!!」というアプローチの青汁。
現在ではキューサイも「まずくない、飲みやすい」というメッセージがメインです。しかし、そんな“飲みやすい青汁”という特徴をいち早く掲げてグングン売り上げを伸ばしてきたメーカーが「緑効青汁」のアサヒ緑健ですね。このキューサイとアサヒ緑健が、数ある青汁メーカーの中でもビッグ2となっています。
キューサイの「青汁」の主原料がケールなのに対して、アサヒ緑健の「緑効青汁」の主原料はオオムギの若葉です。そして、オイシクするためにオリゴ糖という体によいイメージのあるもので甘味を加えたのが特徴でした。
「緑効青汁」がブレイクした理由はその味だけでなく、常温保存ができて、水に溶かして飲む手軽さなど、ほかにも実にさまざまな戦略や要因があるのですが、とにかくその成長ぶりがスゴイ。2010年3月期の売上高は132億500万円とのことですが、私がこの会社を知った十ウン年ほど前は、売上高は今の数分の1だった記憶があります。成長著しい青汁市場を象徴する会社でしょうね。
●青汁進歩ステップ2
「足りていないものが青汁で!」
各社の商品によって訴求ポイントの細部は異なりますが、青汁の根本の訴求ポイントは「野菜不足を補いましょう」で、さらに突っ込むと「野菜に含まれる代表的な成分、食物繊維を補いましょう」です。“野菜1日300g”(または350g)という言葉も、青汁のインフォマーシャルで相当広まったのではないでしょうか。
青汁のインフォマーシャルでは、「300gの野菜」を生鮮で実際に見せておいて、「毎日こんなに食べるの大変ですよね。だから青汁を!」という展開が代表的ですね。この背景には、野菜の摂取量・食物繊維の摂取量の目標を、明確にある機関が掲げていることがあります。それはほかならぬ厚生労働省!※ なんと言ってもお国が「野菜をとりましょう」と言っているわけだから、みんな堂々とPRするわけですね。
そしてさらに、国民健康・栄養調査によれば、日本人の食物繊維の摂取量が、青汁メーカーにはうれしいことに(?)、この目標摂取量に足りていないのです。
「説得三段論法も青汁から始まったはずですよ」
今や他のさまざまな健康食品でも、「厚生労働省の調べによると○○の摂取量は十分ではなく……」ということが引用が用いられるようになりました。つまり、こんな論法です。
現状:国が掲げる目標に達していません
↓
対策:なので補いましょう
↓
解決:それにはこの商品!
つまり、「必要性をデータで示す」「しかも“国のデータ”を」ということを取り入れていったわけです。この論法をテレビ通販で確立したのは青汁だったと記憶しています。
現在は、薬事法や景表法に関して放送局の審査が厳しくなったためあまりお目にかかりませんが、数年前までは、食物繊維摂取量と疾患の関係をグラフなどで示すといった大胆な例も見られていました。そのため制作側では“データ探し”が重要な仕事になっていったのです。
※たとえば「メタボリック症候群が気になる方のための健康情報サイト/e-ヘルスネット」に「健康な生活を維持するための目標値の一つに『野菜類を1日350g以上食べましょう』が掲げられています」という記述があります。
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-03-015.html