健康食品のテレビ通販番組に携わって十数年。現役の番組制作担当者が、舞台裏のホントとホンネを語ります。今回は、通販番組で「個人の感想」を言っている人たちは、「実は愛用者を装っているだけなのでは?」という疑問について、解説します。
「それを聞かれても、言えません」
前回、健康食品は症状を治すクスリとは違うんですよ、だから愛用者のコメントに「個人の感想です」というただし書きがあるんですよ、というお話をしました。
私個人としては、健康食品をそれぞれの方が好きなものを選んで補助的にとることは、悪いことじゃないんじゃないかなと思っています。
ここが難しいところなんです。一般の健康食品は「こういうことに効きます」と言って売ることはできないのに、買う人は自分に「効くか効かないか」を見きわめて選びたいわけです。それで「じゃあ、私たち番組制作を行う者はどーしたらいいの?」と悩むわけです。
実際私たちがどんな風に制作しているか、これから裏話をお話していきましょう。それを知っていただければ、テレビの見方も変わり、自分に合った健康食品を選ぶヒントにもなるでしょう。
なお、繰り返しになるかもしれませんが、いちおうご注意ください――食生活は栄養バランスが大切、病気は医師に診てもらう――これは大前提です。以降私の記事ではあえてこれに触れませんが、お忘れなく。
「愛用者の“役者”はダメです」
質問:「テレビで『これを使い始めてから、私ホントに……』とかってしゃべってる“愛用者”の感想って、ホントに自分の感想? だいたいあの人たち、ホントに愛用者なの?」
答え:「ホントと考えていいでしょう。ただし、どれぐらいの期間使っているかや、ほれ込みぶりはまちまちです」
私が制作に携わったものはもちろんですが、実際に番組を作っている現場の感覚として、全く利用していない“愛用者”つまり“プロ役者”が、与えられたセリフをペラペラ~っとしゃべるというのは、もうほとんどないのではないかなと思います。
「なんで『ありません!』とキッパリ言わんのだ!?」と思われるでしょう。実は、以前は結構あったようなんです。と言うとまた、「『ようなんです』ってナンダ?『ありました!』と言っちゃいなさい!」と思われるでしょう。
なぜこんな曖昧な言い方になるかと言うと、テレビ番組制作スタッフ全員が「この人は役者? 本物?」と知っているわけではないんです。その“愛用者”をつれて来た人など、一部のみぞ知るというものなんです。
ただ、6年ほど前からでしょうか、とある大きな通販番組の制作者も、商品を持ち込んでくるクライアントや代理店に「愛用者の“役者”はダメですからね」とあらかじめクギを刺すようになりました。もう“役者がペラペラ~っと”の時代ではないんです。
「アリバイ程度じゃ困ります」
それでも新しく健康サプリに参入するクライアントには、「愛用者コメントはヤラセで言わせればいいな」という意識の人もときどきいるんです。困ったことです。
もしもみなさんが、「飲んでないけど、飲んでたことにしてこう言って」みたいなことを誰かに頼まれたら、TwitterやFacebookでつぶやくなりしてバラしてほしいなぁと思います。それがいい商品を残すことにつながるわけですし。
とは言え、愛用者の中にも実はタイプがあります。ざっくり分けると、「ずっと前からの愛用者」と「ちょっと前からの愛用者」がいます。
そう、「ちょっと前からの愛用者」というのは、撮影に入る前に、即席で愛用者になってもらうんですね。ただ、この「即席の愛用者」でも、やはりわずか数日とか1粒2粒飲んだだけというわけではないです。クライアントや品物によりけりですが、期間として数週間から数カ月でしょうか。「飲んだか飲んでいないかと言われれば、飲んだ」というアリバイ程度の期間では困るというのがすう勢です。
そんな事情があるため、近年は、次回のため、次々回のためと考えて、クライアントや制作サイドでは“愛用者ストック”を増やすべく動いています。すると、「この人に薦めてもらいたい」という人を早め早めに見つけて利用し始めてもらうということになります。その結果、出演するころには数年の愛用者になっていた、というケースも出てきています。
なので、「愛用歴○年」などと明示して出演している場合のコメントは、「この人なりの実感を語っている」と見ていいでしょう。