健康食品のテレビ通販番組に携わって十数年。現役の番組制作担当者が、舞台裏のホントとホンネを語ります。まず最初に、いろいろある法令の中で浮いている(?)「いわゆる健康食品」について、お話します。
「現役なので匿名でお願いします」
きょうびテレビをつければ、サプリメントの通販、通販……。「ホントに体にいいの!?」「じゃあどれがいいの!?」なんて、多くの方がお思いでしょう。
筆者はフリーの立場でかれこれ十数年、健康食品の通販番組に携わってきました。メーカーもさまざま、商品もさまざま――青汁、黒酢、グルコサミンにコンドロイチン、ローヤルゼリー、DHA、コエンザイムQ10、カルシウム、クロレラ、Lカルニチン――もうすでに多くの方が忘れちゃっているものもありますね。
それを売る通販番組を作ってきた経験から、業界のウラ事情を、書ける範囲でご紹介していきましょう。実は今も制作に関わっている事情から、匿名とさせていただきますが、話は私が番組制作現場でホントに体験してきたこと、です。
「個人の感想です」
健康食品の市場は、狭い定義でも5000億円、広い定義にすると1兆7800億円の規模があるそうです※。これが大きいのか小さいのかがわからないので、少しネットで調べてみました。「太陽光発電システム」の2010年度の市場規模が、前年度より169%も伸びて6553億円、10年後の2020年には1兆7000億円の規模になるという記事を見つけました……。余計わかりにくいですか?
質問:「健康食品って健康にいいの?」
答え:「理屈上、人によってはいいかもしれませんね」
というのも、基本的に「健康食品は薬じゃないから症状を治す等に効くものじゃない」のです。もっとはっきり言うと、「この健康食品を飲むと体がよくなります」なんて言うと、薬事法違反になります。
通販番組を見てお気づきと思いますが、サプリメントを愛飲している人が「これを飲み始めてからどうなった」という話をしているとき、画面に「個人の感想です」という注釈がついてますね? そう、あれはあくまでその人の感想であり、効能の説明ではないんです。
しかも、その感想をよーく聞いていると「これで効いた」ということを直接的に言っていないはずです。「たまたまこのサプリも飲んでるけど、他に健康的な生活もしているんだけど、調子いい気がするね」といった具合になっていると思います。
「言っていいことと悪いことがある!」
とは言え、「私が見た健康食品のテレビ通販は、ガンガン効能を言ってたよ!」と感じた人もいるのでは。
おそらくそれは、トクホ(特定保健用食品)だったはずです。「血糖値が気になる方に」というお茶などで、「トクホ!」と連呼しているものもあります。特定保健用食品として国の許可を受けているものは、効能、正確には「保健の目的が期待できる旨」を表示することができます。許可を受けたある特定の内容は言ってもいいよと認められたものがトクホです。
なお、トクホは、栄養機能食品と合わせて、保健機能食品とくくられています。保健機能食品の制度が定められてからは、保険機能食品ではないものは「いわゆる健康食品」と呼ばれています。
似たものに医薬部外品があります。こちらは、 指定医薬部外品というもの(厚生労働大臣の指定する医薬部外品)であれば、有効成分の名称を表示することができます。「これはクスリ(医薬品)ではないよ。でも効果・効能が認められた成分が入っているね。そのことを言うだけならいいよ」というものです。ただ、医薬部外品という言葉が登場するテレビ通販の商品は、食品よりも化粧品が多いですね。
その他、栄養機能食品というものもあります。ある定められた栄養成分量の基準を満たしている栄養分について、「この栄養素はこんな働きをします」ということだけなら表示していいというものです。
というわけで、いろいろ法令があるので、けっこうたいへんです。「いっそ、健康食品は全部トクホとか医薬部外品とかになれば、効能がわかりやすいのに~」と思うことしばしばです。
が、この認可を受けるには、膨大なデータと期間を要するわけです。
「“食べ物”なんです」
そこで、その隙間ともいう感じで販売されているものが、トクホでも医薬部外品でもない「いわゆる健康食品」なんですね。
では、「いわゆる健康食品」は何のデータもなく販売しているのか?――これまで私が携わった商品について言えば、そんなことはないです。ただし、そのデータの取り方や検証の深さなどは、企業によって千差万別です。
そうしたトクホでも医薬部外品でもないいわゆる健康食品は、買っていいのか、悪いのか?――あらゆる健康食品のテレビ通販に携わってきた私の“個人の感想”を言いましょう。生活に取り入れるのはいいんじゃないかな、と思います。
摂りたいと思う栄養などがある場合、それを効率的に補えますから、「健康のために今日は野菜ジュース飲も!」という感覚で楽しむスタンスで付き合うと、いいかもしれません。
ただし、繰り返しますが、健康食品はあくまでも“食べ物”なんです。すごく大ざっぱに言うと、リンゴやミカンやチョコレートやパンと並列にあるものです。そして、食べ物はそれぞれにある栄養成分が多かったり、少なかったりという特徴がありますから、人はそれを選んで食べるわけです。
「じゃあ何飲めばいいの?」という方に、あなたにぴったりの商品を選ぶためのヒントをお教えしましょう。それは次回に。
※ 富士経済「健康美容食品(H・Bフーズ)国内市場調査」(2011.2.28掲載)