中国の販売店の形態はさまざまである。多くの露店が存在することから、消費者から支持されていることがわかる。
大小2つのタイプの露店
中国の食品販売店として、個人小店舗(本連載第2回)や食品市場(本連載第5回)、超市(本連載第9回)を紹介してきた。今回、ご紹介するのは「露店」である。
露店の形態は(1)大きな道路沿いの露店と、(2)狭い路地沿いの露店の2タイプに大別できる。いずれにせよ、一般的な店舗であれば当然必要になる賃料が不要なので、究極の省コスト店と言える。
(1)と(2)のどちらも、出店場所により有利不利がある。どのようなルールで決まっているか不明であるが、店ごとに出店場所は決まっているようなので、毎回早い者勝ちで店を出すということではない。
中国における、街中の大きな道路の構造を説明しよう。通常、街路は4車線で自動車は右側通行である。その両脇に街路樹帯があり、その外側にもう1本ずつの道路がある。街路樹帯の外側の道路は原則として自動車は通行せず、電動二輪車や自転車などが往来する。駐車スペースが設けられていることが少なくない。周辺の店舗利用者はここに自動車などを止める。そして、そのさらに外側に歩道がある。
(1)のタイプの露店は、そうした歩道に店舗を開く。歩道の幅は広いため、人々の通行には支障がない。ただし、露店が出る歩道沿いには個人小店舗などが存在しないことが普通である。
(2)のタイプの露店がある狭い路地は自動車が入れないところで、農家などがひしめき合うように店を開いている。驚くことに、これらの露店であっても多くがスマホ決済に対応している。
大通り沿いであれば、露店店主はトラックで歩道に乗入れる。狭い路地では、電動二輪車やリヤカーの活用が一般的である。
冬の露店は何か買わずにはおれない
露店に並ぶ商品は多様である。目立つのは農家直販の野菜や果物である。日持ちする乾物や穀類を扱う店舗もある。また、露店の買物客などをターゲットとする点心類や飲料を提供する店舗も少なくない。生の食肉や魚介類を見かけるが、衛生面の懸念があり購入は避けるべきである。他に、人気が高いとは思えないが、衣服や靴、装飾品などを並べる店舗も見かける。
露店の利点として、野菜や果物は採れ立てで鮮度がよいことは間違いない。さらに、安価なことも確かだろう。だが、露店は露天ゆえに雨天時には難がある。季節も、春や秋であれば基本的に問題がなく、夏季の暑さも扇子などがあれば何とかなるのだが、冬季はつらいに違いない。
フォークシンガー高田漣氏の「生活の柄」という歌をご存じだろうか。歩き疲れて草むらで寝るが寒くて眠れないといった歌詞である。その歌を思い出してしまう。
冬は早い時間に陽が落ちる。バッテリーの電灯を点けている店舗もある。その暗く寒い中、露店を営むのは年配の方々である。白い息を吐きながら、店を開いているおばさんやおじさんを観ると、買ってやりたいと思ってしまう。