こんなにお得でいいの?「ブラッスリー グー」(牛込神楽坂)

「ブラッスリー グー」(牛込神楽坂)
大繁盛店ゆえ、早く行かないとこの黒板だけ見てつばを飲み込みつつとぼとぼと帰ることに

「ブラッスリー グー」(牛込神楽坂)
大繁盛店ゆえ、早く行かないとこの黒板だけ見てつばを飲み込みつつとぼとぼと帰ることに

随分寒くなりました。自転車通勤者にはつらい季節かと思いきや、実はそれは杞憂で。しっかり気合を入れて走っているとすぐに温かくなってくるんですね。寒いのは最初だけ。あとはきちんと汗を発散するようなアンダーウェアを着ていれば、とても快適なクルージングができます。夏の汗だくの中よりナンボかマシ。この冬に自転車通勤スタート、実はオススメ!

予約が取れない人気ビストロ

 さて、第2回。おいしい店や紹介したい店はたくさんあるのだけれど、やっぱり感動すら覚えるお店がいい、ということで選んだのが神楽坂のビストロ「ブラッスリー グー」さん。

 今、巷ではビストロやイタリア系のトラットリア、スペインのバルなどちょっと安めの価格設定で気軽に洋食を楽しめる店が大流行。それだけみんなの意識の中で、西洋料理に対する敷居が低くなってきたということもあるんだろう。

 ビストロやトラットリアという種類のお店は、ちょうど人情食堂のような位置づけになるから、漫画でいうと「美味しんぼ」(原作:雁屋哲、漫画:花咲アキラ)や「クッキングパパ」(うえやまとち)などの読み切り形式の物語の舞台になるけれど、まだまだ主流じゃない。最近は、小説「タルト・タタンの夢」(近藤史恵)から派生して月刊漫画誌で連載が始まった「ビストロ・パ・マルの事件簿」(原作:近藤史恵、作画:原尾有美子)が期待の星、というところ。

 今回の「ブラッスリー グー」さんは、人情食堂というよりも、その確かな味とボリュームと驚愕のコストパフォーマンス(CP)で、予約が取れない大人気のビストロとして知られている。

 お店は、神楽坂駅からちょっと歩くが、とにかくCPがすごくて、昼も夜も、予約でいっぱい。あんまりに人気なので、昨年の10月、当初あったお店の隣の部屋も確保して間仕切りをぶちぬき、2軒分のキャパを確保した。なんと席数が25席(これでもビストロとしては多い方)から40席になった(!)。それでも、やっぱり人気は収まらずに、予約困難が続いている、というお店である。

  • 美味しんぼ
  • クッキングパパ
  • タルト・タタンの夢
  • ビストロ・パ・マルの事件簿

幸せな苦悩タイム

 今回うかがったのはランチタイム。平日の開店時間11時30分早々だと、ギリギリ予約せずに入れることがある。11時45分の時点で、ラスト1席に滑り込んだ。ランチタイムは驚異的な人気だ。

 だってね、こちらのランチタイムのセット、それだけでランチを終えてもいいようなボリュームの前菜と、これまたたっぷりしっかりのメインディッシュを、それぞれ数種類の中のオススメメニューから選べて、お値段、驚きの1050円!というCPなのだ。

 メニューを見てもらうと驚くと思うが、こちらの前菜にしろ、メインにしろ、本気の本気のフレンチのメニュー。いつも、ものすごく迷ってしまう。心から幸せな苦悩の時間。

1050円でお店も私も全力投球

  • 鴨肉のリエット
    メインかという完成度とボリュームに感動の鴨肉のリエット
  • 仔ウサギのパイ包み焼き
    存在感がすごい仔ウサギのパイ包み焼き
  • ウサギ肉の間に栗
    これを割ってみるとウサギ肉の間に栗が

 今回の料理、悩みに悩んで前菜に鴨のリエット、メインの仔ウサギのパイ包み焼きを頼んだ。このランチメニューにウサギが出る驚異たるや、相当なものだ!!

 まず、前菜の鴨のリエット。きちんと形を整えながらも、ナイフを入れるとすっと入っていく軟らかさ。一口運ぶと、鴨肉の味の深さが口いっぱいに広がって、いきなり前菜とは思えない感動が……。これがまたパンに合うのだ。付け合せのサラダも実に新鮮でソースもいい。リエットとサラダ、パン、リエット、パン……と止まらなくなっていく。でもご安心あれ。ボリュームが半端ないから、満足するまで食べられる。

 リエットを片づけて感動の溜息をついていると、ほどなくメインの仔ウサギのパイ包み焼きが登場。ほんとうにすごい。ちょっとしたチャーハンの直径ほどに大きなパイのボリューム、かたち、そして、ウサギの肉を使うフレンチのまっとうさはまたまた感動ものだ。

 割ってみるとそのすごさがまたわかる。たっぷりのウサギの肉の間に、これまた贅沢に詰められた栗がゴロゴロと鎮座ましましていて。この栗がまたウサギ肉の濃い味をうまーく受け止めているのだ。

 濃いめソースと包み焼きされたウサギ肉のジューシーさがまたマッチしていて、舌をとろかす。お口のなかで、じゅわっ、ほろほろ、とろーり、という音が聞こえていきそうな勢いなんである。もちろん、これも、パンが進みに進む逸品。超満腹になりながら、瞬く間に、ぺろり、と食べつくしてしまうのである。

そしてまた私は走らねば

 お話をうかがった店長の脇坂さんによると、昼は11時半から1時までの予約で2.5回転するとか。2人掛けの席が20卓=40人×2.5回転で、ざっと100人の人が出入りすることになる。ビストロでこの人数をさばくのは驚異だが、それ以上に、料理を待たせず、手早く提供し続けるスタッフの力に感動さえ感じる。「薄利多売ですけど、お客様の満足が支えです」とのこと。ワインなどの飲み物も安く、一人あたまの単価は1050円のランチの場合、1500円程度とか。

 この超CPよしのランチ以外にも、デザートまでついて2980円の夜のコースも大人気。こちらも予約でいつもいっぱいだ。

 料理の内容といい、種類の豊富さといい、味といい、誰に紹介しても喜ばれる。こんなお店がたくさん増えてほしいけれど、CPといい、回転といい、滅多にない名店だからこそ、困難な予約の隙間を縫っても通いたくなるんだろう。

 昼時から大満足して、午後からのエネルギー源にするのだった。


●「ブラッスリー グー」

東京都新宿区矢来町82
Tel.03-3268-7157
営業時間:11:30~14:30(13:30L.O.)
18:00~21:00(L.O.)
定休日:日曜日

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About 上荻吾朗 40 Articles
編集者 かみおぎ・ごろう 1964年生まれ。北海道出身。週刊誌記者、漫画編集者を経て、WEB製作会社で勤務。震災後、通勤困難を経験して、メタボ対策のためにも、自転車通勤をするようになる。おいしいものを食べることが何より好きな健康チューネン。いかにも飲めそうなヒゲ面のくせに下戸。