前回はインドネシアの農業を概観しました。そして、インドネシアの畑は場所にって収量の差が大きいとお話したわけですが、その理由について説明します。
火山噴出物が堆積した畑
インドネシアの畑のほとんどは、火山からの噴出物が堆積した土地です。このことから、火山噴出物から農業生産に適した土壌への変化が未熟な場所と進んでいる場所とがあり、その差が、作付けた作物の収量差として表れるのです。
未熟な火山噴火物は肥料をつかまえておく力がほとんどありません。ですから施肥の効果があまり出ません(「火山灰土との闘い」参照)。
まだ土と言えるものになる前の段階の畑では、土壌中の有機物もほとんどなく微生物相も貧弱ですから、“直接的に肥料で穫る畑”というイメージになります。こうした畑では、肥料を与えればある程度作物は育つが、そうでないと全くダメということになります。しかも、その収量がないときの少なさが極端なのです。
ここが水田と異なることです。水田での稲作は取れないと言ってもそこそこに取れるものです。しかし、畑で穫れないというのは、桁違いに穫れない状況となります。
こうした事情は、“あきらめる農民”を作り出しやすいということにつながりますが、それは日本でも同じです。報われなければやめるということは、どの国の農業でも起こることです。
たとえば、北海道では牧草地が広くあるところが道北を中心に見受けられますが、これら牧草地になっている所は、その土壌条件から野菜作には適しません。正確には適さないと言うよりも採算が合わないということです。土壌を改良しようとしても改良できない土であったという結果だったのです。
インドネシアの熟成の進んでいない若い土は、これと同じように、たとえ改良の手を加えても土はよくならないのです。ですから、畑では農民は与えて効果の出る場所でだけ肥料を使い、与えても意味のない場所では肥料もろくに与えることをしません。
当たり前に聞こえるかもしれませんが、このこともすごいことです。まさに、世界中どこでも、その場所に適したやり方を見つけ出すのは役所でも資本家でもなく、そこにいる農民なのです。
契約栽培が畑での生産を変える
さて、そうした条件の中で営農をしているインドネシアの農民も、近代化した農業を受け容れ始めているのですが、その手始めとなるのは、外資が進める契約栽培です。
インドネシアは東南アジアとオーストラリア、ニュージーランドの間に位置し、また南米、北米、日本へは距離はあっても海路直接的につながる地理条件にあります。こうした場所で高品質のものを安定的に生産できれば、大きな可能性につながるでしょう。
外資が関与する契約栽培では、施肥、品種選定、防除、収穫方法までかなり合理的な農法で推進されますから、一気に近代化が進みます。
こうした近代的農業に取り組めるための条件は、畑の区画の大きさです。1枚の畑が小さくばらばらでは機械化は進みません。そこで大型化できる場所はどこかと言うと、やはりジャワ島が最も有利で、そこが中心となって進むことは間違いありません。
火山国であること、島国であることなど、我が国日本によく似た事情を持っているので、日本の火山灰土の調査法や改良法を駆使して、かなり技術改革が実現できる国であります。
筆者が調査を行ったのはロンボク島とスンバワ島の二つの島の畑ですが、いずれの結果も熟成の若い未熟な土であり、その有効土層の厚さが明瞭に作物の生産力と直結していました。
また、現地では農民はこの理屈は知らなくても、経験的に採算の合う、いわば儲かる畑はよく知っていて、そこに儲かりそうな作物を植えているという実態が見られました。
そうした意味では、たいへんわかりやすい現場です。