韓国はお隣の国ですが、行ったことのある場所と言えばソウルという答えがほとんどでしょう。他にプサンとか済州島とかも挙がるかもしれませんが、韓国のどこどこの畑に行きましたという話はあまり聞きません。
朝鮮半島南部から北朝鮮付近までの見聞から
ここ数年、韓国の料理や食材は身近なものになり、味わうことも話題に上ることもテレビで取り上げられることも増えました。しかし、韓国の農業生産現場のことを知る機会はなかなかありません。
「韓流ブーム」とは言っても、メインはコンテンツ産業のようです。観光も、グルメツアーや買い物ツアーが主体のようで、彼の地の田園を巡る旅というものはあまりないようです。
とは言え、これは他の外国についても、あるいは日本国内についても言えることかもしれません。せめて仕事で出向くのであれば、現地の圃場はしっかり観察したいものです。
今回は、韓国の土と北朝鮮の土を考えてみることにします。筆者は幸いにも、朝鮮半島の南端部から北朝鮮との国境ギリギリまでの各地の畑を、何度も調査する体験を得ました。今から5年ほど前のことではありますが、土の基本が数年で変わるはずはないので紹介していきます。
朝鮮半島全体は花崗岩地帯
まず朝鮮半島は先端から中国大陸との付け根まですべて、それを造っている岩石は花崗岩となっています。
花崗岩はどんな岩石かというと、白い結晶の中に黒い粒が見える岩石で、それぞれしっかりした形の粒が集まっている感じです。
北海道では富良野一帯、東北では福島県の白河付近、関東では丹沢一帯、愛知県では矢作川流域、そして山陽新幹線沿線では白く見える山のほとんどが、この花崗岩地帯です。
これらの地域で生まれ育った方にはもうおわかりと思いますが、硬いこの岩石も、風化するとボロボロになって白い砂状になります。ゴルフをされる方は、バンカーを思い出してください。抜け出すのが難しい白っぽいバンカー砂は、花崗岩を砕いたものです。
この砂状に風化した花崗岩も、気温が高く、多くの雨にさらされると、その中の鉄分が次第に酸化して褐色から赤褐色になってきます。この条件下でさらに風化が進むと、赤い土が出来ることになります。
朝鮮半島では、最南端のプサンから海寄りに行くと赤い土になりますが、それはこの結果です。
花崗岩は典型的な酸性岩
次に、この花崗岩はどういう種類の岩石なのかということを説明します。
これにはまず、一口に岩石と言っても、それが栄養分を含むかどうかによって3種類に分類されることを知ってもらわなければなりません。
岩石に栄養分の違いなどあるのかと疑問を持たれると思いますが、それがあるのです。
少し具体的に説明してみましょう。
通常、岩石の主成分はケイ酸、アルミニウム、鉄の3つですが、このうちのケイ酸の含有量によって性質が異なります。性質が異なると言うのは、ここでは植物にとっての栄養のあり方が違うということで理解しておいてください。
岩石は一般に、ケイ酸含量が多いとそれに反して石灰、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、その他の微量要素が少なくなる傾向があります。
そして岩石の分類は、酸性岩はケイ酸含量65%以上、中性岩はケイ酸含量65~52%、塩基性岩はケイ酸含量52~45%、超塩基性岩はケイ酸含量45%以下というように定義されています。
この定義に従って花崗岩を見ると、ケイ酸含量は71~76%ほどの間にあり、典型的な酸性岩ということになります。