赤黄色土はとくに下層で強い粘りを持ちます。このことから、暗渠の敷設などの対策を講じない場合には湿害などの障害を起こしやすくなります。一方、酸性土壌であることも赤黄色土の特徴です。排水と酸性を改良する手を打てば、とくに根菜では味わい深いものが作れるようになります。
下層で粘りが強く湿害の原因になる
この赤黄色土の特徴を見ていきましょう。
畑の土(10)暗赤色土 iで、暗赤色土は非常に粘りが強いと説明しましたが、赤黄色土もそこまでではありませんが、やはり粘ります。とくに下層土ではひどく粘性が強いです。
そのため、この土壌の圃場はたいへん水はけの悪い圃場ということになります。それに対して暗渠を設けるなど下層の状態を改善した場合には、圃場の生産性は向上します。しかし、そのような改良を行っていない場合は、畑は過湿状態となり、それによる障害が出ることがよくあります。
静岡県の牧之原台地は典型的な赤黄色土の分布する地域ですが、この地域のもう一つの特徴は礫がたいへん多いという点です。ここはかつては大井川という大きな河川の川底であったものが隆起してできた台地なので、とくに丸い大きな礫が多くなっています。
少し赤黄色土の生成に話が戻りますが、牧之原台地でもう一つ興味深いことがあります。牧之原台地で見られる丸い礫と、現在の大井川にある丸い礫は、岩石の種類が異なるのです。
大井川の礫は灰緑色で、たいへん緻密なものです。その比重は、日本の数ある河川の石の中でも最も大きいのです。つまり重い石です。
ところが、牧之原台地で見られる礫は、同じ大きさでもたいへん軽いのです。しかも、その石の色も赤褐色です。この石を割ってみると、中は緻密さがなくなっていて、中身がどこかに流れてしまったような状態を認めることができます。これこそ、熱帯雨林気候の時代にそうなったことをうかがわせるものです。
静岡茶を可能にした酸性土壌
では、この土で穫れる作物の特徴はどのようでしょうか。
まず、赤黄色土は酸性が強い土なので、昔からその条件に合致するものが作られてきたということができます。とくに戦前は、酸性土壌の改良方法がほとんど知られていませんでしたから、酸性土でも出来る作物が自然と選ばれました。
愛知県の渥美半島も、そうした時代にはオカボのようなものが作られていたでしょう。あるいは、日本海側の赤黄色土地帯は手つかずであったかもしれません。
赤黄色土を有効に利用してきた好例は、静岡のチャです。チャは酸性土でよく育つことに加え、静岡は温暖な気候でもあり、このことからチャの栽培が大規模に進められてきました。静岡茶の秘密は赤黄色土にあったのです。
戦後になると、石灰施用や堆肥の施用による酸性土壌改良が推進されて、静岡も野菜産地になっていきました。
赤黄色土は、下層は粘性が強いですが、表層は以外に扱いやすいサラサラの状態になります。そのため、農家にとっては扱いやすく、優良な野菜、花の産地になっているわけです。
とくに根菜類は肌がきれいで味が濃いことが特徴ですが、他の野菜も味にコクがあると言われます。粘りのある土であることから、ジャガイモはよい品質のものが出来ます。静岡の三方原はジャガイモの産地となりました。
作物に与えるこうした影響は、肥料のさじ加減ではなかなか出せるものではなく、やはり土の不思議のなせる業です。
このことを考えると、世界の熱帯地方にはこの種に準じた赤い色の土が多く分布していますから、日本のやり方で熱帯を優秀な農業地帯にできることは大いに期待されます。