火山放出物未熟土はもともとやせた土だが、十分な量の堆肥を施すことで、一転して優秀な畑にすることが可能になっている。ただし、ある限界を超えて堆肥を入れ過ぎると、深刻な障害を起こしやすい。それは、主にリン酸とカリウムの過剰という形で現れる。
堆肥施用による火山放出物未熟土の改善
土づくり運動、畑への堆肥施用の普及、それを支える堆肥施用作業の機械化と畜産の拡大によって、不作に悩まされていた火山放出物未熟土の畑が、一気に生産力のある優秀な畑に変わったという例が多く出てきました。
もともと、火山放出物未熟土の畑は、粒子の粗い岩石が多いわけですから、水はけがよいのが特徴です。水はけがよい土地では、多少の肥料を与えてもドンドン下方に流れ去って失われてしまいます。だから、この土はものが採れない土だという評価になったというのが、これまでの事情です。
ところが、ある程度の量の堆肥の形で最初にドカッと入れれば、それに応えるように激変するというのも未熟土の特徴です。流亡する成分はあるにせよ、作土層にある程度の肥料成分が温存されれば、そもそも水はけがよく作業もしやすい物理性を備えた砂状の土ですから、むしろよい畑だという評価に変わるわけです。
火山放出物未熟土での堆肥過剰の障害は深刻
しかし、そのように激変して大いに穫れ始めてからの注意点もあります。それは、やり方によってはいくつかの無機成分の過剰に陥る危険があるということです。
火山礫という火成岩は多くの無機成分を含んでいます。これが、有機物の大量施用によって微生物活動が盛んな状態に置かれると、かなりの無機成分が急激に溶け出してくることになります。そして、それによってさらに土壌微生物の活動は活発になります。
ここで農家は、さらに堆肥などを多く入れればより多くの収穫が期待できると考えてしまうものです。
ここが注意点です。
ある上限を越えて施用すると、過剰による障害が起こり始めます。火山放出物未熟土での過剰による障害は、火山灰土での場合よりも深刻なものになるので、十分な注意が必要です。
そこを見きわめられる農家とそうではない農家とで、火山放出物未熟土での栽培の良否には大きな差がついてくるのです。
リン酸とカリウムの過剰になりやすいことに注意
火山放出物未熟土で過剰になりがちな成分の一つはリン酸です。リン酸の過剰は、火山灰土での場合よりも火山放出物未熟土の場合のほうが、より悪い影響が出やすくなります。というのは、火山灰土では一般に高いリン酸吸収係数(第20回参照)を示し、リン酸が無効化されやすくなります。それに比べて、風化がまだ進んでいない火山放出物未熟土では、溶け出してくるアルミニウムがまだ少ないためリン酸と結合する場面が多く出来ません。そのため、過剰なリン酸は遊離してしまい、過剰による障害の元になるのです。
また、カリウムも過剰傾向になります。これはやはり風化が進んでいないことから、粘土鉱物の生成がまだ少ないために起こります。土としての肥料成分の吸着保持能力が弱いため、多過ぎるカリウムは遊離してしまい、過剰現象を起こすのです。
しかし、こうしたことに十分注意を払い、1年に1回程度の土壌分析でよい状態を維持することは、難しいことでは全くありません。その意味では、各地にある火山物放出物未熟土は取り組みやすく、良質な農産物を作ることができる土の種類だと言うことができます。