砂の畑で優良な野菜産地はたくさんあるものの、砂の土壌化学性を見ると、あまり芳しいものではありませんでした。肥料や水の与え方にいろいろ工夫が必要です。では、砂の土壌物理性はどうなっているでしょうか。実は砂は、土壌物理性から言うと非常によい土なのです。
有機物を与えても分解してしまい腐植は増えない
また、砂はたとえ有機物を施しても、その分解能力が高くて、あまり土に腐植として蓄積することがありません。砂地帯の産地に行って、その畑の色を見てもあまり黒みがかっていないことは誰もが気づくことですが、これはそのことが原因です。
腐植が思うように増やせないということは、土の改良の主たる課題が改善できないということです。
しかし、それでも砂が優秀な畑の土である理由はなんなのでしょうか。
そこで注目すべきなのが、物理的側面です。
土壌粒子間の隙間が大きく通気性は抜群
砂は、一般的な圃場の土と比べてはるかに大きな隙間を持っています。このため、水を保つ性質も弱く、圃場に水を与えても速やかに排水してしまいます。そこで、農家は水かけに労力を費やさなければならないのです。
こう見ると砂地はさらに厄介に見えてきますが、大きな長所を持っています。肥料も持ちが悪い、水も持ちが悪いというこの砂は、実は空気の含み方がダントツに優れているのです。空気、とりわけ酸素を根に十分与えることができることが、砂地の強みです。
これも何度か指摘していることですが、作物の根は、常に酸素を求めるのです。この根の呼吸がうまくいくことは、作物がよく育つという結果につながる第一条件と言ってもいいものです。
砂地ではない、“土”として見慣れた土壌で出来ている圃場では、根に酸素を送るための工夫が必要です。そこで、農家は昔から、土を大きな塊で起こし、それを乾かして表層だけを細かく砕くというやり方を繰り返しをしてきたのです。
また、水が抜けて困るという特徴も、水が表層から下層へ向けて、縦に潤沢に抜けていくということも、根が深く伸びて活躍するための条件なのです。
畑で重要なのは通気性と透水性
つまり、砂の畑、砂丘未熟土は、土壌物理性は素晴らしい土であるということです。
これらの特徴は作物にとってたいへん重要なものです。ですから、化学的性質がいくつかの欠点を持っていても、それを補って余りある物理的性質があればこそ、砂の畑でも作物は育つ、むしろよく育つ、というわけです。
この逆では成り立ちません。
たとえば砂がなく粘土の多い圃場を想像してみてください。つまり物理的性質では、膨軟な状態でなく、排水が悪く、根に酸素が行かない状態です。これでは作物は根を深く張ることはできません。このような圃場では、いかに化学的な性質が良好でも、作物は育つことができません。
このように砂の畑、砂丘未熟土について考えてみると、そもそも畑というものが持っているべき性質、耕作者が忘れてはならない性質を改めて思い起こさせてくれます。