米消費量の低下にともなって、減反政策が始まり、水田でもダイズ、ムギ、野菜などが作られるようになった。しかし、もともと水が集まる場所を水田にしたことから、その作り方には自ずと無理がある。それでも畑作物がうまく作れる場所を見付けるには、やはりまず土壌の種類を見きわめることだ。
米消費の低下で水田を畑にする減反が始まった
今回は「転作」という言葉が出てきます。聞きなれない方もいると思いますので、まずこの言葉の説明から始めます。
昔は、日本人1人は1年間に1石(米でおよそ150kg)の米を食べていました。しかし、時代は変わって米の需要は落ち込み、人々は年間の米を1人1年間に1俵(同60kg)も食べなくなりました。
そうすると米が余って困るという現象が昭和40年代後半から出始めました。40代以上の方はそういう話を知っていると思いますが、若い方にはそんな時代があったことは全く知らないということもあるでしょう。ともかく、そのような食生活の変化がありました。
するとどうなるかというと、すべての水田に米を植えるてもらっては困る、ということになってしまったのです。
ではどうするか。そこで「減反」(栽培面積を減らす)ということが始まりました。つまり、強制的に補助金を付けて、水田に米以外の作物を植えてもらう時代が昭和50年代初めから起こったわけです。これは各地で減反の比率こそ異なりますが、全国的に無理やり実行されたことです。
畑の作物がうまくできる水田とそうでない水田がある
さて、水田というのはイネを栽培する目的で作った圃場です。その水田に米以外のものを作るというのは、有史以来の出来事です。これをきっかけに、それまでの水田に対する価値観が変わりました。
というのも、イネは水がいっぱいあることが好きですが、畑の作物はそうではありません。水がどっぷりという場所では枯れてしまう作物は多いのです。
そこで、いろいろな所に水田はあるわけですが、そのうちどの水田が畑の作物、つまりダイズ、ムギ、野菜などを植えつけるのに有利なのかということが問題になってきます。
また、それら収穫したものを買う側も、どこの水田で穫れた野菜がよいのかを知りたくなります。
そういったことが、前回まで学んだ水田の土壌型から推測できるということです。
水田であった圃場の土壌を見きわめる
ではどのように全国の土壌図を読み取り、この活用を図るかということですが、まずその作物が穫れた圃場がどこであったのかを知ることです。
とは言え、産地名だけでは圃場の正確な位置がわかりません。ここが一つ大きな問題かもしれませんが、逆にそんな細かな圃場の位置に関しても調査ができるということがポイントでもあります。
実際にどの圃場であるかを割り出すのはまた別の課題として解決するとして、まず、どの圃場で穫れた作物であったかが特定できたとします。
ダイズやコムギは、通常は加工品になるということからあまり影響はないかもしれませんが、レタスやブロッコリー、ジャガイモ、サツマイモなどについては、見た目や味に大きく影響してきます。
このように、水田で野菜を生産する農家は、もちろん排水対策に力を入れていますが、その対策の結果がうまく出ている場所とそうでない場所を、彼らはよく知っています。そして、その収量と品質を決めるファクターとして大きなものが圃場の排水性にあることもよく知っています。
そこで、作物を調達するバイヤーとしては、排水性がもともとよい場所と悪い場所の基本データを押さえておこうというわけです。