(1) | 育苗培土(野菜苗を中心に) |
(2) | 固形培地によるハウス栽培 |
(3) | ハウスでの地床栽培 |
(4) | 露地畑 |
(5) | 水田での水稲 |
(6) | 水田からの転作 |
(7) | 海外での農業 |
農業生産を行う現場を7つに分類し、それぞれについて、土のあり方と栽培の実際について説明している。降水の少ない地帯の土は、ミネラルを多く含むが、固さと塩害の克服が難しい。
陽イオンが土を固める
東日本大震災被災地の映像で、津波が襲った圃場を映したものがありました。海水が入った田んぼでは、ヘドロ状の粘土が乾いてひび割れていました。これも、海水中のナトリウムが粘土に吸着され、それまでとは違う強さで凝集したものと見ることができます。
陽イオンとなるミネラルを多量に含む土壌は、強く固まりやすいのです。
これに、湿潤と乾燥を繰り返す条件が加わると、土の粒子同士が結び付く作用がさらに強められます。また、冬季に厳寒に見舞われる気候では、土はさらにひどく固められます。
生産力のある土だが欠点も
世界には、このような土が広く分布しています。とくに、砂漠地帯の周囲を取り囲むように帯状に分布する栗色土と称する薄い焦げ茶色の土が、この特徴を持っています。
この土は土壌学的には作物の栄養分をたくさん含む土であり、土の生産力が最も高いチェルノーゼムの次の番付になります。ただし、ナトリウム含有量は高い土壌です。
また、この栗色土のように腐植を含まない土壌ですが、さらに乾燥地帯にある灰褐色の土も多くのミネラルを含み、潜在的に生産力のある土壌です。ただ、これもナトリウムを多く含みます。
このようにナトリウムを多く含む土壌は障害(塩害)の原因となり、多くの生産者を悩ませる元でした。しかし、現在は点滴灌漑によって問題を解決できます。土壌にしみ込む速さに同期させたゆっくりとしたスピードで作物の根もとに水を滴らせる点滴灌漑では、上から見ると丸い輪のように、水がナトリウムなどを外側へ押し出すように除いていくのです。
こうして、作物の根域という限定的な部分にターゲットを絞って適正な塩基濃度にすることで、乾燥地や砂漠地帯を農地に変えることができるようになりました。
土の構造を形成しにくい土
しかし、こうして土壌の化学性を改善できたにせよ、物理性はよくなりません。つまり、非常に強い土の団結は一朝一夕には解決できないのです。
理想的な圃場の土壌は、“土の構造”を持っています。栄養腐植と微生物の作用で土がコロコロとした小さな固まりに集まる団粒構造を作ります。また、圃場表面付近は細かく、作土の下層ほど粗い粒子に耕すことができれば、水はけの良さと保湿のバランスを取ります。
ところが、ナトリウムの多い土壌は、このような土の構造を作るようにはできないのです。腐植が不足していますから団粒構造を形成しにくい。また、耕うんしても一時的にはサラサラになりますが、すぐにまたもとの固く締まった状態になってしまうのです。もし点滴灌漑ではなく、散水するような方法で灌漑を行えば、こうした固まり方を助長することになります。
固さと塩害の克服が課題
この土の構造の問題は、砂漠化問題の研究でもあまり指摘されていないことと思いますが、土の欠点としてとても重要なポイントであり、改善しにくい問題です。
農地の不足も喧伝される中、今後の世界の農業の新天地として期待されるているのは砂漠周辺の準砂漠地帯ですが、このような困難があるためなかなか広がっていきません。
また、いったん砂漠化した場所は、多少の努力ではなかなか農地に戻すことができないものです。その原因も、こうした土にかなりの原因があります。