(1) | 育苗培土(野菜苗を中心に) |
(2) | 固形培地によるハウス栽培 |
(3) | ハウスでの地床栽培 |
(4) | 露地畑 |
(5) | 水田での水稲 |
(6) | 水田からの転作 |
(7) | 海外での農業 |
農業生産を行う現場を7つに分類し、それぞれについて、土のあり方と栽培の実際について説明している。海外の土壌の特徴の第一は、スコップも歯が立たない固さ。それは化学的な理由による。
雨の少ない土地の土は様子が違う
海外土壌については、第24回と第25回でもお話しましたが、今回はもう一つ別なお話をします。
人間の土との付き合い方は、日本での場合と海外の他の国や地域での場合とではずいぶん違います。これは、何度かお話しているように、雨の多い日本の気候に関係があります。
世界には多種多様な気候と土壌がありますから、「他の国や地域」と一言で片づけるわけには行かないかもしれません。ここで言う他の国や地域とは、日本より雨の少ない国々のこととしましょう。とは言え、第1回でもお話したように、日本には年間降水量が2000mmを超える地点は少なくありませんから、この「他の国や地域」は少なくありません。また、半年は雨ばかりだけれども残る半年は乾期という熱帯モンスーンもこれに含めましょう。
カチカチに固い土
そうした乾燥した地域や乾期のある地域で土壌調査を行うと、びっくりすることがあります。それは、とにかく、とんでもなく土が固く締まっていることです。スコップで掘ろうとしても、土壌の表面に少しささるぐらいでカチカチなのです。
なぜそうなっているかと言うと、土が“団結”という現象を起こすためです。
団結とは土の粒子が互いに強く結び付くことですが、これは単に土が乾くことだけが原因ではないようです。
とくに強い団結を示すのは、降水量が年間600mm以下のところで、しかも冬季が厳寒となる条件です。
たとえば、中国の北京郊外の畑に行ってみると、土は実に細かな粒子でできています。土の色は灰色と黄色の絵の具を混ぜ合わせたようなオリーブ色で、土の表層に黒みを与える腐植は全くないと言ってよいほどありません。
その土壌のカルシウム分はたいへんに多く、カルシウム飽和度80%以上もあります。ほかにもナトリウムやマグネシウムがたくさん含まれていて、日本の“だしがら”のような土壌とは対照的です。
乾燥する地域の土壌の団結の原因は、この化学性に原因がありそうです。
固さの原因は化学的な作用
少し脱線しますが、強く濁った水を澄んだ状態にするときに用いる方法というものがいくつかあります。たとえば汚泥処理の現場では、汚水をろ過するときに硫酸アルミニウムを投入するということをします。あるいは製糖工場などでは廃液に石灰を投入します。そうすると、水を濁らせている成分を集めたり沈殿させたりすることができるのです。
土壌の団結は、これに似たところがあります。
第11回でお話した、土のコロイドのことを思い出してください。土のコロイドは、負(-)の電荷を帯びています。ですから、その粒子同士はお互いに反発し合って、それぞれの粒子は近づきにくい状態になっています。水の中でバラバラに散らばった状態です。コロイド化学では分散と呼ばれる現象です。
さて、そこに陽イオンであるナトリウムを投入するとどうなるでしょう。土のコロイドが互いに反発し合う力は弱められ、くっついていきます。
乾燥地の土壌では、これと同じことが起こると考えられます。雨に流されずに土壌中に残っている陽イオンが土の粒子同士をくっつけるのです。