栽培現場ごとの土の事情(3)ハウスでの地床栽培(1)

栽培現場を7つに分類して説明する
(1) 育苗培土(野菜苗を中心に)
(2) 固形培地によるハウス栽培
(3) ハウスでの地床栽培
(4) 露地畑
(5) 水田での水稲
(6) 水田からの転作
(7) 海外での農業

農業生産を行う現場を7つに分類し、それぞれについて、土のあり方と栽培の実際について説明している。今回からは、圃場をハウスで覆って生産する場合に起こる土壌の課題と解決について解説していく。

日本特有の施設、パイプハウス

 日本の農村風景の一つに、パイプハウスがあちこちに並ぶ様子というのがあります。このパイプハウスは、ヨーロッパ、北米、南米などの農業先進国ではお目にかかれません。外国で見かけるとすれば、韓国ぐらいでしょうか。

 この様式は、直径20~30mm程度の鉄の丸パイプをかまぼこ型に組み立てることで簡易ハウスを造るものです。

 材料だけなら、1坪当たり8000円程度で出来ます。すべて業者に造ってもらうと、坪当たり1万5000円ぐらいとなります。

 これに掛ける外部被覆材は別です。軟質フィルムと称するもので、坪当たり1000円ぐらいのものです。これには農業補助金があります。補助率は地域ごとに異なりますが、離島など率の高いところでは90%という例もあります。だいたい、全国的には50%ぐらいというのがよくあるパターンでしょう。

ハウスで覆われた地床の課題は?

 さて、このパイプハウスはそのまま畑の上に建てます。わかりやすく言えば、この仕組みは海水浴場のビーチパラソルと同じです。

 ですから、それまでの畑にあっという間に出来てしまいます。ただし構造上、上からの荷重には弱いものです。大雪でへしまがった映像などを、テレビのニュースで見たことがあるでしょう。

屋根型ハウスの例
屋根型ハウスの例

 一方、地床を使う施設栽培はパイプハウスのみではありません。もっと大きく、軒高が4mもある屋根型ハウスというものがあり、その栽培形式が地床というものも多くあるのです。

 もちろん、大きな施設は大きな費用がかかります。したがって、施設が大きくなるほど高い収益性が求められるわけですが、現実は必ずしも一致しません。大きなハウスなら、自動的によいものがたくさん取れるというわけではありませんから。

 当然、よりよく取るための手を打っていくことが必要です。そこで、この地床を使った施設園芸の土壌はどのような課題を抱えるものか、そしてそれをどう解決すべきかということを説明していきます(つづく)。

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About 関祐二 101 Articles
農業コンサルタント せき・ゆうじ 1953年静岡県生まれ。東京農業大学在学中に実践的な土壌学に触れる。75年に就農し、営農と他の農家との交流を続ける中、実際の農業現場に土壌・肥料の知識が不足していることを痛感。民間発で実践的な農業技術を伝えるため、84年から農業コンサルタントを始める。現在、国内と海外の農家、食品メーカー、資材メーカー等に技術指導を行い、世界中の土壌と栽培の現場に精通している。