現在は第2次豆乳ブームと言われている。品質向上と健康への関心からと考えられる。新技術で無ろ過のものも登場したが、JASの規格上これを「豆乳」と呼べない状況が続いている。
醤油造りのプロが書いた大豆の本。大豆は豆として調理されるだけでなく、さまざまな加工品となることで人類に栄養を供給し、豊かな食文化も花開かせてくれている大いなる豆。そんな大豆はどこから来たどんな豆なのか、そしてどんな可能性を持っているのか。大豆と半世紀付き合って来た技術士が大豆愛とともに徹底解説します。
各社が品質向上に努力
豆乳ブームが続いている。現在は第2次ブームに当たり、約200,000kLの年間生産量で推移している。第1次ブームは1980年頃にあり、各社が参入して生産量が拡大した。しかし、香りや味に難があったため、急激に市場が縮小した。現在のブームは豆乳の品質向上に加え、大豆の健康面への認識が浸透したことに起因するだろう。
一晩水に漬けた大豆に水を加えながらすりつぶし、加熱・ろ過したものが豆乳である。原料浸漬・すりつぶし・加熱・脱臭等には、各社にノウハウがある。とくに、青臭みの基となる酵素リポキシゲナーゼの失活のために加熱工程は重要である。また、この酵素を欠いた品種「きぬさやか」等のダイズ育種も行われていて、豆乳の品質向上に貢献している。
JAS規格では3種類に分類
ろ過した液を調製して製品とするが、JAS(日本農林規格)では豆乳の3種類を定めている。
(1)大豆固形分8%以上の「豆乳」。大豆固形分8%以上
(2)大豆固形分6%以上で植物油脂・砂糖類・食塩等を加えた「調製豆乳」。大豆固形分6%以上
(3)調製豆乳に果汁等を加えた「豆乳飲料」。原則として大豆固形分4%以上
生産量に占める3種の割合は、豆乳13%、調製豆乳60%、豆乳飲料25%、その他2%である。大豆以外には何も加えない豆乳に比べ、味を整えた調製豆乳が消費者に好まれ、生産量に反映されていると言える。
豆乳は、同様な目的に消費される牛乳とよく比較される。タンパク質含量は大差ないものの、脂質が半分程度であることが大きな違いになる。脂質の質やビタミン・ミネラルにも差異がある。どちらが優れているかといった比較は意味がなく、それぞれの特徴を理解して摂りたいものである。
無ろ過“豆乳”の悩み
人気の豆乳だが、課題がないわけではない。豆乳を作れば、多量の水分を含んで腐敗しやすい「おから」が発生する。それを生じない新たな試みが進行中である。ダイズのすりつぶしをきめ細やかに行い、ろ過しないのである。ただし、種皮の除去と不要物の沈殿を防ぐ工夫は必要になる。大塚チルド食品「スゴイダイズ」シリーズ(写真)等が該当する。メーカーでは、ろ過工程とおから処分が不要で歩留りも高まる。消費者は、食物繊維も余すことなく摂ることができるのである。
無ろ過のものも、ザラツキ等のテクスチャーにかかわる違和感はない。ところが、JASの規格から外れる(繊維質を除去が定められている等)ため豆乳とは呼べない。JASは5年ごとに見直しが行われており、前回は無ろ過の製品についても検討が行われた。ただし、風味に差異があるため、豆乳の範疇には含めないと決定されたと関係者からうかがった。豆乳関連メーカー間にも、さまざまな考え方があるようだ。それでも、「無ろ過豆乳」といった新範疇が加わる日が来るに違いない。パブコメがあるはずだから、次回は私も意見を述べるつもりである。
海外でも、豆乳の消費量は伸びている。最も多く飲まれている国はタイで年間5.0L/人、これにマレーシアの4.0Lが続く。日本は2.0Lで、米国・カナダも近い値である。日本の豆乳製造技術は、世界をリードしていると確信している。さらなる普及に貢献できるに違いない。