2010年食の10大ニュース[16]

「2010年も今日で終わり。特集「2010年食の10大ニュース」も本日が最終日です。8名の方々の記事をお届けします。(FoodWatchJapan 齋藤訓之)

  1. TPP問題
  2. 食品産地偽装問題
  3. 危機管理意識の欠如
  4. 生鮮野菜高騰、米の不作
  5. 食品表示問題
  6. 花王エコナの後遺症
  7. トランス脂肪酸表示
  8. 商品回収公告の日常化
  9. 食の安全で企業格付け
  10. ウナギの完全養殖成功

1. TPP問題

 日本の将来を考えると参加は必然ですが、農業への影響は甚大で確実に自給率は下がります。猶予期間中に強力な対策が必要です。

2. 食品産地偽装問題

 相変わらずですが、内閣府の調査でも国民の90%は食品に不信感を抱いているという結果が出ています。食品産業の信頼回復が急務です。

3. 危機管理意識の欠如

 日本人は単一民族のせいか性善説になりがちですが、品質に関しては性悪説になるべきです。食品テロを始め、作為的、不作為的な食品事故、事件はいつどこで起きても不思議ではありません。

 経団連の調査でも会員会社のトップの80%が自社の事故、事件はあり得ると回答しております。その割に危機に対しての意識は希薄で十分な対策をとっていません。

 今後は危機管理、緊急対応組織の充実及び危機に強い人材の育成が急務です。

4. 生鮮野菜高騰、米の不作

 気候の変動のせいもありますが、新興国需要等の要因により原料価格は常に乱高下する覚悟が必要です。

5. 食品表示問題

 消費者庁の動きだけでなく、企業も自主的に取り組むべき問題です。

6. 花王エコナの後遺症

 食品安全委員会は今秋改めて検証チームを立ち上げ、グリシドール脂肪酸エステルの健康に及ぼす影響(現時点では不明)の再調査を実施します。

 この問題は「安全なのになぜ回収」「トクホ返上は正しかったか」等の議論がいまだになされ、消費者、メーカー、行政の3者の何らかの協議機関の必要性を提起しました。

7. トランス脂肪酸表示

 表示が必要かも含めて、もし必要なら他の化学物質も表示が必要との議論が出ています。

8. 商品回収公告の日常化

 毎日のように新聞に食品回収公告が出され、日常化しております。読者はまたかと思い、以前程関心を示さなくなりました。

 回収は事故の拡大防止からは正しい措置ですが、使用原料記載の順番間違いだけで回収する等明らかに行き過ぎの面もあります。もちろん社告は行政指導や企業判断ですが、一定の基準作りが必要です。

9. 食の安全で企業格付け

 国は食品の品質管理、危機管理の取り組み具合を民間の格付け機関に依頼して品質向上の一助としようとしております。経営上も企業は一段の品質管理への取り組みが必要ですが、経費面からも経営を圧迫しかねない状況です。

10. ウナギの完全養殖成功

 日本の養殖技術は世界に冠たるものですが、ウナギの完全養殖成功は快挙です。ウナギは稚魚からの成長過程でほとんどがオスになってしまうところを、メス化させることに成功した点が大いに評価されています。

 ただ、費用的には未だ通常の養殖に較べて10倍かかりますので、実用化には後10年はかかります。


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About 難波勝 1 Article
食品産業戦略研究所 主席研究員 なんば・まさる 1961年京都大学農学部水産学科卒業。森永乳業入社。同社研究所、各地の工場勤務を経て91年取締役、本社生産部長。93年常務取締役、99年専務取締役。生産部、エンジニアリング部、資材部所管、食品総合研究所、栄養科学研究所、生物科学研究所、装置科学研究所、分析センターを所管。2001年取締役を退任し技術顧問就任。現在同社参与。著書に「消費者志向の食品包装戦略と技術」(サイエンスフォーラム、編著、2004年)、「現場必携 微生物殺菌実用データ集」(サイエンスフォーラム、編集委員、2005年)、「医薬品、化粧品、食品分野の洗浄・殺菌技術」(技術情報協会、共著、2006年)。