デパプリの“お子さまランチ”

[289] 「映画デリシャスパーティ♡プリキュア 夢みる♡お子さまランチ!」から

現在テレビ朝日系列で放映中のアニメ「デリシャスパーティ♡プリキュア」の劇場版、「映画デリシャスパーティ♡プリキュア 夢みる♡お子さまランチ!」をご紹介する。

「デリシャスパーティ♡プリキュア」は、2004年のシリーズ第1作「ふたりはプリキュア」以来続くプリキュアシリーズの第19作目。その最大の特徴は、シリーズ史上初めて“ごはん”をモチーフとした点にある。劇場版では、ごはんの中でもとくに、タイトルにある「お子さまランチ」に焦点が当てられている。

※注意!! 以下はネタバレを含んでいます。

お子様ランチの心

 本作の舞台は、和食、洋食、中華の各ストリートを持ち、世界中のおいしい料理が味わえる「おいしーなタウン」。この町に住む食べることが大好きな中学2年生、和実なごみゆい(キュアプレシャス)、同級生の芙羽ふわここね(キュアスパイシー)、華満はなみちらん(キュアヤムヤム)がプリキュアに変身する。この世の料理を司る異世界の王国、クッキングダムからやってきたクックファイターのローズマリーとエナジー妖精のコメコメ、パムパム、メンメン、後にゆいの幼馴染、品田拓海(ブラックペッパー)と生徒会長の菓彩かさいあまね(キュアフィナーレ)も加わって、「みんなのおいしい笑顔を守るために、食の楽しさを奪う悪の組織ブンドル団と戦う」というのがTV版の概要である。

「おいしーなタウン」に突然出現した「ドリーミア」。おむすびタワー、パンの観覧車、ラーメンコースター等、多彩な食のアトラクションを持つ、お子さまランチのテーマパークである。
「おいしーなタウン」に突然出現した「ドリーミア」。おむすびタワー、パンの観覧車、ラーメンコースター等、多彩な食のアトラクションを持つ、お子さまランチのテーマパークである。

 劇場版では、冒頭の紹介シーンを除いてブンドル団は登場せず、番外編的な作りになっている。劇場版のオリジナルキャラクターとして登場するのは、ネコの着ぐるみを被った天才科学者のケットシー。おいしーなタウンに突然出現した、お子さまランチのテーマパーク「ドリーミア」の園長でもある。

 ケットシーは、ドリーミアにおいしーなタウンの子供たちを無料で招待。園内のおむすびタワー、パンの観覧車、ラーメンコースターといったアトラクションは乗り放題、そのうえお子さまランチは食べ放題とあって、子供たちはハーメルンの笛吹きのように、ドリーミアに引き寄せられていく。ただし、大人たちの入場は厳禁。入ろうとしても、ドリーミアの警備ロボットに排除されてしまう。実はこれには、ケットシーのある思惑があって……というのが主なストーリーである。

 ケットシーのピーターパン症候群的な心の象徴と言えるのが、ドリーミアのお子さまランチである。ケットシーのお子さまランチへの執着は、過去のある出来事に起因するものだ。おいしいものを集めないと食事を楽しめないケットシーの心を、プリキュアがいかにして救うかが、物語の鍵になっている。

成長する妖精

 キュアプレシャスのパートナーであるコメコメ(本名コネクトル・モチモチット・フックララ・グリコーゲン・コメックス二世)は、お米のエナジー妖精(パムパムはパンの、メンメンは麺のエナジー妖精)。自力で人間体に変身でき、赤ちゃん期→ようじ期→こども期→せいちょう期→しょうじょ期へと成長していく能力は、他二体の妖精にはないコメコメ独自のものである。劇場版では、早くゆいのようなヒーローになりたいと願うコメコメが、「もう大きいから、お子さまランチは食べない」と言い張って皆を困らせるシーンがある。そんなコメコメが、ケットシーとの出会い等を経て、どのように心の成長を果たしていくかが、劇場版の見どころとなっている。

お子さまランチと18人のプリキュア

 お子さまランチは、昭和初期に東京のデパートで提供されたのが始まり。その内容は店によって異なるが、子供が好みそうな多種の料理をワンプレートに少量ずつ盛り付ける、味付けは子供好みの甘い味付け、山型に盛ったライスに旗を立てる、お菓子やおもちゃのおまけを付ける等のさまざまな工夫で子供たちを引きつけてきた。年齢制限を設けている店もあるが、劇場版ではゆいたち中学生も子供と見なされ提供されている。

「夢みる♡お子さまランチ!」と同時上映の短編「わたしだけのお子さまランチ」では、映画を見ながらおいしごはんを楽しめる店「レストランシアター・プリキュア」で、デリシャスパーティ♡プリキュアの面々が、お客様から「トロピカル〜ジュ! プリキュア」にちなんだ“トロピカルな感じ”、「ヒーリングっと♥プリキュア」にちなんだ“ヒーリングな感じ”、「スター☆トゥインクルプリキュア」にちなんだ“キラやば~な感じ”といったオーダーを受け、各プリキュアの協力を得ながら、「トロピカって、ヒーリングっどで、キラやば~な」お子さまランチを完成させるまでを、18人のプリキュア共演で描いている。


【映画デリシャスパーティ♡プリキュア 夢みる♡お子さまランチ!】

公式サイト
https://2022.precure-movie.com/
作品基本データ
製作国:日本
製作年:2022年
公開年月日:2022年9月23日
上映時間:70分
製作会社:映画デリシャスパーティ♡プリキュア製作委員会:(東映アニメーション、東映、ABCアニメーション、バンダイ、ADKエモーションズ、マーベラス)
配給:東映
カラー/サイズ:カラー/アメリカンビスタ(1:1.85)
スタッフ
監督:座古明史
脚本:田中仁
原作:東堂いづみ
プロデューサー:村瀬亜季
総作画監督・キャラクターデザイン:松浦仁美
作画監督:廣中美佳
撮影監督:高橋賢司
美術監督:渡辺佳人
音楽:寺田志保
制作担当:星郁也
色彩設計:清田直美
キャスト(声の出演)
和実ゆい / キュアプレシャス:菱川花菜
芙羽ここね / キュアスパイシー:清水理沙
華満らん / キュアヤムヤム:井口裕香
菓彩あまね / キュアフィナーレ:茅野愛衣
コメコメ:高森奈津美
パムパム:日岡なつみ
メンメン:半場友恵
ローズマリー:前野智昭
品田拓海:内田雄馬
ケットシー:花江夏樹

(参考文献:KINENOTE)

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映画ウォッチャー 埼玉県出身。子供のころからSF映画が好きで、高校時代にキューブリックの「2001年宇宙の旅」を観たところ、モノリスに遭遇したサルの如く芸術映画に目覚め、国・ジャンルを問わない“雑食系映画ファン”となる。20~30代の一般に“青春”と呼ばれる貴重な時をTV・映画撮影現場の小道具係として捧げるが、「映画は見ているうちが天国、作るのは地獄」という現実を嫌というほど思い知らされ、食関連分野の月刊誌の編集者に転向。現在は各種出版物やITメディアを制作する会社で働きながら年間鑑賞本数1,000本以上という“映画中毒生活”を続ける“ダメ中年”である。第5回・第7回・第8回の計3回、キネマ旬報社主催の映画検定1級試験に合格。第5回・第6回の田辺・弁慶映画祭の映画検定審査員も務めた。