作る様・食べる様が描き出す愛

[192]ごはん映画ベスト10 2018年 洋画編

年末の恒例企画、年間1,000本以上の鑑賞本数を誇る私rightwideが、今年公開された映画の中から印象的な食べ物や飲み物が出てきた作品を厳選したベスト10を発表する「ごはん映画ベスト10」。今回は洋画編である。

選定基準

2018年1月1日~2018年12月31日に公開(公開予定)の洋画で、

  • 食べ物や飲み物の「おいしそう度」
  • 食べ物や飲み物の作品内容への関連性
  • 作品自体の完成度

の3点を加味して選定した。

●2018年度ごはん映画ベスト10〈洋画編〉

★=1.0点 ☆=0.5点
順位タイトルおいしそう度作品との関連性作品の完成度合計
1「彼が愛したケーキ職人」のシナモン・クッキーと「黒い森のケーキ」★★★★☆★★★★★★★★★13.5
2「ウイスキーと2人の花嫁」のウイスキー★★★★★★★★★★★★★13.0
3「恋する都市 5つの物語」のビーフ・ウェリントン★★★★☆★★★★★★★★12.5
4「パディントン2」のマーマレードサンドイッチとタフィーアップル★★★★★★★★★★★★12.0
5「プーと大人になった僕」のハチミツ★★★☆★★★★★★★★11.5
6「シューマンズ・バーブック」のカクテル★★★☆★★★★★★★☆11.0
7「おかえり、ブルゴーニュへ」のワイン★★★☆★★★★★★★10.5
8「いつか家族に」のマンドゥ★★★★★★★★★★10.0
9「シェイプ・オブ・ウォーター」のゆで卵とキーライムパイ★★★★★★★★★☆9.5
10「冷たい晩餐」のフルコースディナー★★★★★★★★★9.0

第10位

「冷たい晩餐」のフルコースディナー

「未体験ゾーンの映画たち」 「のむコレ」と並ぶ日本における劇場発信型三大映画祭の一つ「カリテ・ファンタスティック・シネマコレクション2018」(カリコレ)で上映されたヘルマン・コッホ原作、オーレン・ムーヴァーマン監督作品。

 舞台を原作のオランダからアメリカ東部の高級レストランに移し、知事選出馬を予定している州議会議員スタン(リチャード・ギア)と妻ケイトリン(レベッカ・ホール)、スタンの弟で教師のポール(スティーヴ・クーガン)とクレア(ローラ・リニー)のディナーを描いている。

 料理は前菜前の早摘み野菜から、食前酒、前菜、メインコース、チーズ、デザート、食後酒まで、大勢の給仕によって一皿ずつ運ばれ、給仕長による詳しい説明が付くという豪華なものだが、4人の会合の目的は食事を楽しむことではなく、彼らの息子たちがしでかした殺人事件の善後策を話し合うためだった。重苦しく気まずい雰囲気の中でせっかくの美食も台無しである。

 事件に至るまでの経緯がディナーの進行と並行して描かれるのも食欲を減退させるに十分。チーズについて豊富な知識を持つ給仕長によるうんちくも空しく響く“イヤミス”になっている。

第9位

「シェイプ・オブ・ウォーター」のゆで卵とキーライムパイ

 第74回ヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞と第90回アカデミー賞の作品賞の2冠を達成したギレルモ・デル・トロ監督作品。巨大ロボットと怪獣の戦いを描いた「パシフィック・リム」(2013)を監督する等、特撮マニアとして知られるトロ監督が、「大アマゾンの半魚人」(1954)等の半魚人映画に着想を得て撮ったSF作品であり、トロ監督の旧作「パンズ・ラビリンス」(2006)を米ソ冷戦下に置き換えたようなダークファンタジーでもある。

 舞台は1962年のアメリカ、航空宇宙研究センターで清掃員として働く発話障害のある女性イライザ(サリー・ホーキンス)と、センターに実験対象として運び込まれた半魚人(ダグ・ジョーンズ)の出会いを、米ソの軍事・宇宙開発競争とスパイ戦を背景に描いている。イライザが半魚人との意思疎通に用いたコミュニケーションツールがゆで卵で、姿形や生態は違っても同じものを食べ、同じような感情を持っていることがわかったことで種を越えた恋愛に発展していく。

 イライザの隣人でゲイの画家ジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)が、秘かに想いを寄せるダイナーの店員の気をひくためにまずいキーライムパイを買い続け、冷蔵庫がライムゼリーの乗ったパイでいっぱいになってしまう描写は、本作の基調カラーである水中を連想させる緑色を構成する要素の一つになっている。

公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/shapeofwater/

第8位

「いつか家族に」のマンドゥ

 中国の作家、余華の小説「血を売る男」を原作に、舞台を韓国に移して描いたハ・ジウォン主演・脚本・監督作品。

 1953年、朝鮮戦争終戦直後のとある地方都市、土木労働者のサムグァン(ハ・ジョンウ)は、ポップコーン売りのオンナン(ハ・ジウォン)に一目惚れ。オンナンに恋人がいると知りながらプロポーズし、オンナンの父親を説得して結婚にこぎつける。二人の間には長男イルラク(ナム・ダルム)をはじめ三人の男の子が生まれ、貧しいながらも幸せに暮らしていたが、イルラクが生まれて11年が経った頃、イルラクの本当の父親はオンナンの元カレではないかと噂が立つ。サムグァンは噂を晴らそうとイルラクの血液型を調べるのだが……。

 イルラクが自分の子ではないと知ったサムグァンの、家族でマンドゥ(韓国風肉まん)を食べに行こうと言いながらイルラクだけ除け者にする継子いびりは非道極まりないが、いじけることなく父の愛を取り戻そうと努力するイルラクの健気さが胸を打つ。その気持ちが通じたのか、イルラクが病魔に倒れた時のサムグァンの行動は文字通り血よりも濃い親子の絆を感じさせるもので、先般のマンドゥのエピソードが家族の絆を示すものとして最後に効いてくるのである。

公式サイト:http://www.finefilms.co.jp/kazoku/

第7位

「おかえり、ブルゴーニュへ」のワイン

「ごはん映画ベスト10 2016年 洋画編」で4位にランクインした「ブルゴーニュで会いましょう」に続いてブルゴーニュのドメーヌの家族を描いたセドリック・クラピッシュ監督・脚本作品。

 世界のワイン作りを見るために故郷を出、オーストラリアでワイナリーを経営していた長男ジャン(ピオ・マルマイ)は、父が末期の状態と聞いて帰郷。ドメーヌの後継者となる妹ジュリエット(アナ・ジラルド)と、近所のドメーヌの婿養子となった末弟ジェレミー(フランソワ・シビル)と再会するが、その矢先に父が亡くなる。3人は協力して今年分の実家のワイン作りに当たるが、ジャンはオーストラリアで待つ妻との関係、ジュリエットは今後のワイン作りのあり方、ジェレミーは義父との関係に問題を抱えていた……。

 ブドウの収穫時期や除梗率(果梗=実を支える柄の部分を取り除く割合)の決定、酸化防止剤を入れるか否か、補糖をするか等、「ウスケボーイズ」(本連載第190回参照)の日本の若いワイン生産者たちと同じような悩みをワインの本場と言われるブルゴーニュの生産者たちも抱えていることが、おいしいワインを作りたいという情熱に国境はないと感じさせる。

 ジュリエットが選択したビオディナミ(有機農法の一種)とマロラクティック発酵(リンゴ酸と乳酸菌による発酵)のワインの出来は映画を観てご確認いただきたい。

公式サイト:http://burgundy-movie.jp/

第6位

「シューマンズ・バーブック」のカクテル

 500種類以上のカクテルのレシピを収録して1991年に出版された教本「シューマンズ・バーブック」の著者であるチャールズ・シューマンを追ったマリーケ・シュレーダー監督によるドキュメンタリー。

 ミュンヘンで35年前から「シューマンズ バー」を経営し、76歳を超えた今も現役でカウンターに立ち続ける“伝説のバーマン”が、もう一度バーの原点を見つめ直そうとベルリンの「ヴィクトリア・バー」「ヴュルゲエンゲル」、ニューヨークの「エンプロイーズ・オンリー」 「ザ・デッド・ラビット」「ザ・レインボー・ルーム」 「キング・コール・バー」 「クローバークラブ」、パリの「バー・ヘミングウェイ」、ハバナの「エル・フロリディータ」、東京の「スタア・バー・ギンザ」「バー ハイ・ファイブ」「バー ベンフィディック」「銀座テンダー」、ウィーンの「ロース・アメリカン・バー」といった世界の名店と呼ばれるバーを巡っていく旅を描いている。

「スタア・バー・ギンザ」のオーナーでバーテンダーとして初めて「現代の名工」に選ばれた岸久氏によるNHKテレビの「アインシュタインの眼」(2012)や「プロフェッショナル仕事の流儀」(2016)でも紹介されたマイクロバブルを発生させるという独自のシェイクや、まるで野菜を切るように氷を形作っていくハンドカットクリアアイスの包丁さばきも拝むことができる。

公式サイト:http://crest-inter.co.jp/schumanns/

第5位

「プーと大人になった僕」のハチミツ

 A.A.ミルン作、E.H.シェパード挿絵の児童小説を原作にディズニーがアニメ化して人気キャラクターとなった「くまのプーさん」を初めて実写化したマーク・フォースター監督作品。タイトルが示す通り「100エーカー」の森でプー(声:ジム・カミングス)や仲間の動物たちと楽しい少年時代を過ごしたクリストファー・ロビン(ユアン・マクレガー)の後日談である。

 寄宿舎での孤独な生活、父親との死別、第二次世界大戦への従軍、戦後就職したカバン会社のウィンズロウ社では経費削減のためのリストラを任される等、少年時代とは対照的な辛い経験を経て40歳になったクリストファー・ロビンの顔からは笑顔が消え、唯一の救いである妻のイブリン(ヘイリー・アトウェル)と娘のマデリン(ブロンテ・カーマイケル)も顧みないワーカホリックと化していた。そんなある日、マデリンが父の古いカバンから見つけ出したクリストファー・ロビンが少年時代にプーと自分を描いた絵に瓶からこぼれた黄金色のハチミツがかかり、奇跡が起きる……。

 プーさんと言えばハチミツであり、絵本やアニメでおなじみの食べっぷりを披露しているのはもちろんだが、本作の真価は大人になってしまったクリストファー・ロビンが、おつむは小さいが太っ腹なプーとの禅問答のような会話の末に何もしないをすることの価値を思い出し、それが現実のビジネスにも活きるというパラドックスにある。

 かつて「ピーター・パン」の作者ジェームス・マシュー・バリーとパンのモデルになった少年との出会いを描いた「ネバーランド」(2004)を撮ったフォースター監督らしい、大人こそ観るべき自己啓発的な内容になっている。

公式サイト:https://www.disney.co.jp/movie/pooh-boku.html

第4位

「パディントン2」のマーマレードサンドイッチとタフィーアップル

 イギリスの作家マイケル・ボンドの児童文学「くまのパディントン」(松岡享子訳、福音館書店)と絵本「クマのパディントン」(木坂涼訳、理論社)を実写映画化した「パディントン」(本連載第118回参照)の続編。

 ブラウン家の一員としてすっかりロンドンでの生活に慣れたパディントン(声:ベン・ウィショー)は、グルーパーさん(ジム・ブロードベント)の骨董屋で見つけたロンドンの観光名所を集めた飛び出す絵本を、ペルーの老クマホームで暮らすルーシーおばさんに贈るためにアルバイトを始めるが、その絵本は何者かに盗まれパディントンは濡れ衣を着せられて裁判で有罪となり刑務所に入れられてしまう。そこで役に立ったのが、前作に続きパディントンの大好物であるマーマレードサンドイッチだ。刑務所一の凶悪犯で調理担当として文字通りの“くさいメシ”を出していたナックルズ(ブレンダン・グリーソン)に、作り方と、食べる人においしいと言ってもらえることの喜びを教え、味方につけたのが最後に効いてくる。

 そしてもう一つのキーフードが序盤の移動遊園地のシーンでパディントンが食べていたタフィーアップル。日本でも縁日の屋台等で見られるりんご飴のルーツであり、クライマックスの列車のシーンではパディントンがこの食べ物の特徴を利用してアクションを盛り上げている。

公式サイト:http://paddington-movie.jp/

第3位

「恋する都市 5つの物語」のビーフ・ウェリントン

 日本の岩井俊二監督、香港のスタンリー・クワン監督、台湾のウェイ・ダーション監督の監修の下、中国の5人の若手監督がプラハ、上海、パリ、小樽、フィレンツェの各都市を舞台に展開するラブストーリーを描いたオムニバス映画。

 その第2話は上海でフレンチレストランを開店した若き女性シェフ、シャオペイ(ジャン・シューイン)が巻き起こすコメディ。彼女は、有名な料理評論家が来店して料理を採点するテレビ番組の取材を受けるに当たり、自信のなさから自分がシェフだと言い出せずに、シェフは“ジャン・フランソワ”だと口走ってしまい、正体不明のイケメン、ジャック(イ・ヒョンジェ)をフランソワの替え玉に立ててしまう。ところがそれから店は大繁盛し、引っ込みがつかなくなってしまうのだった。

 シャオペイがシェフを志したのは学生時代から片想いし続けている男性が料理の上手な女性が好きだと言ったからだったが、その彼が一番好きだというビーフ・ウェリントン(牛ヒレ肉のパイ包み)はまだうまくできないでいた。ジャックはそんなシャオペイに、ビーフ・ウェリントンを完成させて彼に届けるべきだと背中を押すのだが……。

 本連載第173回で取り上げた「恋するシェフの最強レシピ」にも上海の名門ホテルレストランの美食が登場するが、本作も負けず劣らずの“飯テロ”ぶりを発揮しており、経済成長で豊かになった中国大都市生活者のグルメシーンを反映した作品と言える。

第2位

「ウイスキーと2人の花嫁」のウイスキー

 第二次世界大戦中の1941年、スコットランドのエリスケイ島(劇中ではトディー島)沖に貨物船SSポリティシャン号が座礁した実際の海難事故をモデルにしたコンプトン・マッケンジーの小説が原作の、イーリング・コメディ(※)「WHISKY GALORE!」(1949、アレクサンダー・マッケンドリック監督、日本未公開)のリメイク。

 戦況悪化でウイスキーの配給がストップしていたところに突如5万ケース、約26万本のウイスキーを満載した船が出現したものだから、意気消沈していた島民たちは神様の贈り物だと喜ぶ。一方、オッド軍曹(ショーン・ビガースタッフ)とジョージ(ケヴィン・ガスリー)は、島の郵便局長ジョセフ(グレゴール・フィッシャー)の長女ペギー(ナオミ・バトリック)と次女カトリーナ(エリー・ケンドリック)と結婚したいのに島の伝統的な結婚前の儀式「レイチェフ」の祝い酒として欠かせないウイスキーがないからとお預けを食っていた。村人たちは軍曹とジョージをけしかけてSSポリティシャン号のウイスキーを「救出」に向かうのだが……。

 実際の船に積まれていたのは「ホワイトホース」「デュワーズ ホワイトラベル」「キングスランサム」「バランタイン」「アンティクアリー」「ジョニー・ウォーカー」の赤/黒等のブレンデッドウイスキーだったらしいが、本作では「ハイランド・ブルー」「ハリス・マッカラム」「グレンソイ」「オルノーセイ」「カイレイグ」等のありそうでない架空の銘柄のウイスキーに置き換えられている。

 久しぶりにウイスキーにありついた祝宴での島民たちのはち切れんばかりの笑顔は、彼らにとってウイスキーは「命の水」なのだと感じさせる。

※イーリング・コメディ:ロンドンのイーリング撮影所で製作された喜劇映画。

公式サイト:http://www.synca.jp/whisky/

第1位

「彼が愛したケーキ職人」のシナモン・クッキーと「黒い森のケーキ」

「彼が愛したケーキ職人」の冒頭のシーン。オーレンが「黒い森のケーキ」をすくうなまめかしいフォークさばきからはトーマスへの愛情が感じられる。食べるカットだけで後の展開を予感させる手腕はベストワンに相応しい。
「彼が愛したケーキ職人」の冒頭のシーン。オーレンが「黒い森のケーキ」をすくうなまめかしいフォークさばきからはトーマスへの愛情が感じられる。食べるカットだけで後の展開を予感させる手腕はベストワンに相応しい。

 2018年のオフィール賞(イスラエル・アカデミー賞)で作品賞・監督賞・脚本賞等計7部門で受賞を果たした新鋭オフィル・ラウル・グレイツァ監督が実体験をモデルにした長編デビュー作。

 ドイツ・ベルリンのカフェ&ベーカリー「クレデンツ」で働くケーキ職人のトーマス(ティム・カルクオフ)は、イスラエルのエルサレムから出張に来るたびに妻への土産にシナモン・クッキーを買っていく同性の常連客オーレン(ロイ・ミラー)といつしか恋人関係になるが、つき合い始めて1年経った頃、一カ月後の再会を約束してエルサレムに発ったオーレンが戻って来ることはなかった。オーレンが勤めていた会社で彼が不慮の事故で亡くなったことを聞いたトーマスは、オーレンの足跡をたどってルサレムを訪れ、オーレンの死後休業していたコシェル(ユダヤ教の戒律に則った食品規定)適合のカフェを再開したオーレンの妻アナト(サラ・アドラー)の店に通い雇ってもらうことに。

 オーレンが「クレデンツ」で食べていた「黒い森のケーキ」をはじめ、トーマスの作るスイーツは評判を呼び、アナトとの距離も近付いていくが、トーマスの作るクッキーの味がオーレンがベルリン土産に買ってきたものと同じだとアナトが気付いてしまい……。

 LGBTの問題をテーマに、ドイツ人とユダヤ人の宗教・文化・価値観の違いや過去にあったホロコースト等の不幸な歴史をあぶり出しながら、ケーキ作りを通して赦しを求めていくトーマスの生地をこねる姿が印象的な秀作である。

公式サイト:http://cakemaker.espace-sarou.com/

ごはん映画ベスト10 2018年 邦画・洋画総評

 邦画では「万引き家族」(本連載第186回参照)のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞や自主製作映画「カメラを止めるな」の大ヒット、洋画ではオール・アフリカンの「ブラック・パンサー」やオール・アジアンの「クレイジー・リッチ!」のヒットに代表されるハリウッドにおけるホワイト・ウォッシング(白人至上主義)の変容、応援上映のキラーコンテンツとなったインド映画「バーフバリ2 王の凱旋」や第三次クイーンブームを巻き起こした「ボヘミアン・ラプソディ」の大ヒット等、映画界には2018年もさまざまなトピックがあったが、“ごはん映画”も邦画・洋画共に多数の作品が公開され、ベスト10選びには苦労させられた。

 連載で紹介した「5パーセントの奇跡~嘘から始まる素敵な人生~」(本連載第167回)、「祈りの幕が下りる時」(同第172回)、「恋するシェフの最強レシピ」、「北の桜守」(同第175回)、「ミッドナイト・サン タイヨウのうた」(同第178回)、「万引き家族」と「モリのいる場所」(同第186回)、「世界が愛した料理人」「アラン・デュカス 宮廷のレストラン」(同第188回)、「恋のしずく」(同第189回)、「ウスケボーイズ」等も本来ならランクインするはずだが、多くの作品を紹介したいと考えあえて除外させていただいた。あくまでrightwideの独断で選んだベスト10であることをご承知おきいただきたい。

 映画は基本的には単体で評価すべきものであるが、邦画というカテゴリーにおける食のシーンの多さは尋常でないと感じている。それは最近始まったことではなく、映画史的に伝統として培われたものではないか。この仮説についてはデータを集め、いつか統計的に証明したいと考えている。

 では皆さん、よいお年をお迎えください。また来年お会いしましょう。


【冷たい晩餐】

「冷たい晩餐」(2017)

作品基本データ
ジャンル:スリラー / ドラマ
原題:THE DINNER
製作国:アメリカ
製作年:2017年
公開年月日:2018年7月21日
上映時間:120分
製作会社:esuco Holdings Ltd
配給:ファントム・フィルム(配給協力:武蔵野エンタテインメント)
カラー/モノクロ:カラー
スタッフ
監督:オーレン・ムーヴァーマン
キャスト
スタン・ローマン:リチャード・ギア
ポール・ローマン:スティーヴ・クーガン
ケイトリン・ローマン:レベッカ・ホール
クレア・ローマン:ローラ・リニー

(参考文献:KINENOTE)


【シェイプ・オブ・ウォーター】

「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017)

公式サイト
http://www.foxmovies-jp.com/shapeofwater/
作品基本データ
ジャンル:ラブロマンス / ファンタジー / ドラマ
原題:THE SHAPE OF WATER
製作国:アメリカ
製作年:2017年
公開年月日:2018年3月1日
上映時間:124分
製作会社:Twentieth Century Fox
配給:20世紀フォックス映画
カラー/モノクロ:カラー
スタッフ
監督:ギレルモ・デル・トロ
脚本:ギレルモ・デル・トロ、ヴァネッサ・テイラー
原案:ギレルモ・デル・トロ
プロデューサー:ギレルモ・デル・トロ、J・マイルズ・デイル
撮影監督:ダン・ローストセン
美術:ポール・オースタベリー
音楽:アレクサンドル・デスプラ
編集:シドニー・ウォリンスキー
衣裳デザイン:ルイス・セケイラ
ビジュアル・エフェクト・スーパーバイザー:デニス・ベラルディ
キャスト
イライザ・エスポジート:サリー・ホーキンス
ストリックランド:マイケル・シャノン
ジャイルズ:リチャード・ジェンキンス
半魚人:ダグ・ジョーンズ
ホフステトラー:マイケル・スツールバーグ
ゼルダ:オクタヴィア・スペンサー

(参考文献:KINENOTE)


【いつか家族に】

公式サイト
http://www.finefilms.co.jp/kazoku/
作品基本データ
ジャンル:ヒューマン / ドラマ
原題:허삼관
製作国:韓国
製作年:2015年
公開年月日:2018年12月22日
上映時間:124分
製作会社:NEXT ENTERTAINMENT WORLD & DHUTA.
配給:ファインフィルムズ
カラー/モノクロ:カラー
スタッフ
監督:ハ・ジョンウ
脚本:キム・ジュホ、ハ・ジョンウ
原作:余華『血を売る男』(河出書房新社)
キャスト
ホ・サムグァン:ハ・ジョンウ
ホ・オンナン:ハ・ジウォン
イルラク:ナム・ダルム
アン:チョ・ジヌン
ブンバン:ユン・ウネ

(参考文献:KINENOTE)


【おかえり、ブルゴーニュへ】

公式サイト
http://burgundy-movie.jp/
作品基本データ
ジャンル:ヒューマン / ドラマ
原題:CE QUI NOUS LIE
製作国:フランス
製作年:2017年
公開年月日:2018年11月17日
上映時間:113分
製作会社:CE QUI ME MEUT 、STUDIOCANAL、FRANCE 2 CINEMA
配給:キノフィルムズ/木下グループ
カラー/サイズ:カラー/シネマ・スコープ(1:2.35)
スタッフ
監督:セドリック・クラピッシュ
脚本:セドリック・クラピッシュ、サンティアゴ・アミゴレーナ
撮影監督:アレクシ・カヴィルシーヌ
キャスト
ジャン:ピオ・マルマイ
ジュリエット:アナ・ジラルド
ジェレミー:フランソワ・シビル

(参考文献:KINENOTE)


【シューマンズ バー ブック】

「シューマンズ バー ブック」(2017)

公式サイト
http://crest-inter.co.jp/schumanns/
作品基本データ
ジャンル:ドキュメンタリー
原題:SCHUMANNS BARGESPRÄCHE
製作国:ドイツ
製作年:2017年
公開年月日:2018年4月21日
上映時間:98分
製作会社:Thali Media
配給:クレストインターナショナル
カラー/サイズ:カラー/シネマ・スコープ(1:2.35)
スタッフ
監督・脚本:マリーケ・シュレーダー
製作:マリーケ・シュレーダー、クリストフ・フィッサー、ヘニング・モルフェンター、チャーリー・ウォーケン
撮影:ニフ・アブータレビ
音楽:ヴァレンティノ・ベッツ、マーヴィン・シューマン
録音:エベルハルト・ヴェッカーレ
音響:ライナー・ペータースハーゲン、シホ・ミヤザワ、アリエル・ノーヴォ、アレックス・ルビン、ミヒャエル・ソロモン
音響デザイン:セーレン・ブリュートゲン
編集:ギャビー・クール=ノイヤール
キャスト
チャールズ・シューマン:「シューマンズ バー」オーナー バーテンダー
シュテファン・ウェーバー:「ヴィクトリア・バー」オーナー バーテンダー
ベアテ・ヒンダーマン:「ヴィクトリア・バー」オーナー バーテンダー
スティーヴ・シュナイダー:「エンプロイーズ・オンリー」オーナー バーテンダー
デヴ・ジョンソン:「エンプロイーズ・オンリー」バーテンダー
ジャック・マッガリー:「ザ・デッド・ラビット」オーナー バーテンダー
デイル・デグロフ:「ザ・レインボー・ルーム」元チーフバーテンダー
ジュリー・ライナー:「クローバークラブ」オーナー バーテンダー
コリン・フィールド:「バー・ヘミングウェイ」バーテンダー
アレハンドロ・ボリバル:「エル・フロリディータ」バーテンダー
岸久:「スタア・バー・ギンザ」オーナー バーテンダー
上野秀嗣:「バー ハイ・ファイブ」オーナー バーテンダー
上田和男:「銀座テンダー」オーナー バーテンダー
マリアンネ・コーン:「ロース・アメリカン・バー」オーナー

(参考文献:KINENOTE)


【プーと大人になった僕】

「プーと大人になった僕」(2018)

公式サイト
https://www.disney.co.jp/movie/pooh-boku.html
作品基本データ
ジャンル:コメディ / 冒険 / ファンタジー / ドラマ
原題:CHRISTOPHER ROBIN
製作国:アメリカ
製作年:2018年
公開年月日:2018年9月14日
上映時間:104分
製作会社:Disney Enterprises, Inc.
配給:ディズニー
カラー/サイズ:カラー/シネマ・スコープ(1:2.35)
スタッフ
監督:マーク・フォスター
脚本:アレックス・ロス・ペリー、トム・マッカーシー、アリソン・シュローダー
ストーリー:グレッグ・ブルッカー、マーク・スティーヴン・ジョンソン
キャラクター原案:A.A.ミルン、E.H.シェパード
製作総指揮:レネ・ウルフ、ジェレミー・ジョーンズ
製作:ブリガム・テイラー、クリスティン・バー
撮影:マティアス・クーニスヴァイゼル
プロダクション・デザイン:ジェニファー・ウィリアムズ
音楽:ジョフ・ザネリ、ジョン・ブライオン
編集:マット・チェシー
衣裳:ジェニー・ビーヴァン
視覚効果スーパーバイザー:クリストファー・ローレンス
アニメーション・スーパーバイザー:マイケル・イームス
共同プロデューサー:スティーヴ・ガウブ
キャスト
クリストファー・ロビン:ユアン・マクレガー
イブリン・ロビン:ヘイリー・アトウェル
マデリン・ロビン:ブロンテ・カーマイケル
ジャイルズ・ウィンズロウ:マーク・ゲイティス
プーの声:ジム・カミングス
イーヨーの声:ブラッド・ギャレット
ピグレットの声:ニック・モハメッド
ティガーの声:ジム・カミングス
ラビットの声:ピーター・キャパルディ
カンガの声:ソフィー・オコネドー
ルーの声:サラ・シーン
オウルの声:トビー・ジョーンズ

(参考文献:KINENOTE)


【パディントン2】

「パディントン2」(2017)

公式サイト
http://paddington-movie.jp/
作品基本データ
ジャンル:ファンタジー / ファミリー / ドラマ
原題:PADDINGTON 2
製作国:イギリス、フランス
製作年:2017年
公開年月日:2018年1月19日
上映時間:104分
製作会社:STUDIOCANAL S.A.S
配給:キノフィルムズ/木下グループ
カラー/サイズ:カラー/シネマ・スコープ(1:2.35)
スタッフ
監督:ポール・キング
脚本:ポール・キング、サイモン・ファーナビー
原作:マイケル・ボンド
製作総指揮:ロージー・アリソン、アレクサンドラ・ファーガソン・ダービ シャー、ロン・ハルパーン
製作:デヴィッドハイマン
撮影:エリック・ウィルソン
プロダクション・デザイン:ゲイリー・ウィリアムソン
音楽:ダリオ・マリアネッリ
編集:ジョナサン・エイモス、マーク・エバーソン
キャスト
パディントン(声):ベン・ウィショー
ヘンリー・ブラウン:ヒュー・ボネビル
メアリー・ブラウン:サリー・ホーキンス
フェニックス・ブキャナン:ヒュー・グラント
ナックルズ:ブレンダン・グリーソン
ジュディ・ブラウン:マデリン・ハリス
ジョナサン・ブラウン:サミュエル・ジョスリン
バードさん:ジュリー・ウォルターズ
グルーパーさん:ジム・ブロードベント
カリーさん:ピーター・カパルディ
裁判長:トム・コンティ

(参考文献:KINENOTE)


【恋する都市 5つの物語】

作品基本データ
ジャンル:ラブロマンス / ドラマ
原題:恋愛中的城市
製作国:中国
製作年:2015年
公開年月日:2018年1月27日
上映時間:117分
製作会社:上海芸言堂影視文化伝播有限公司
配給:HOMERS Corp.
カラー/モノクロ:カラー
スタッフ
監督:ウェン・ムーイエ、ドン・ルンニエン、ハン・イー、フー・ティエンユー、ジー・ジアトン
監修:岩井俊二、スタンリー・クワン、ウェイ・ダーション
脚本:ウェン・ムーイエ、ドン・ルンニエン、ジャン・ユンファン、ジャー・ムーチュン、ハン・イー、フー・ティエンユー、チェン・シュー
プロデューサー:グー・シアオドン
キャスト
ヤン・ミー(第1話 チェコ・プラハ編):ズー・トン
チェン・カイユアン(第1話 チェコ・プラハ編):ピーター
ジャン・シューイン(第2話 中国・上海編):ジャン・シャオベイ
イ・ヒョンジェ(第2話 中国・上海編):ジャック
チャン・ロンロン(第3話 フランス・パリ編):ヴァネッサ・チャン
ホアン・シュアン(第3話 フランス・パリ編):リウ・チャン
ジャン・イーエン(第4話 日本・小樽編):シャオ・ジャン
ジョセフ・チャン(第4話 日本・小樽編):アー・チュエン
バイ・バイハー(第5話 イタリア・フィレンツェ編):イラン・ラン
イーサン・ルアン(第5話 イタリア・フィレンツェ編):シャオ・マイ

(参考文献:KINENOTE)


【ウイスキーと2人の花嫁】

「ウイスキーと2人の花嫁」(2016)

公式サイト
http://www.synca.jp/whisky/
作品基本データ
ジャンル:ラブロマンス / 歴史劇 / 戦争 / ヒューマン / ドラマ
原題:WHISKY GALORE!
製作国:イギリス
製作年:2016年
公開年月日:2018年2月17日
上映時間:98分
製作会社:WhiskyGaloreMovieLimited2016
配給:シンカ
カラー/サイズ:カラー/ビスタ
スタッフ
監督:ギリーズ・マッキノン
脚本:ピーター・マクドゥガル
原作:コンプトン・マッケンジー
製作:イアン・マクリーン、アラン・J・ワンズ
撮影:ナイジェル・ウィロウビー
美術:アンディ・ハリス
音楽:パトリック・ドイル
編集:アン・ソペル
衣装:ギル・ホーン
キャスト
ジョセフ・マクルーン:グレゴール・フィッシャー
ペギー・マクルーン:ナオミ・バトリック
カトリーナ・マクルーン:エリー・ケンドリック
ワゲット大尉:エディ・イザード
オッド軍曹:ショーン・ビガースタッフ
ジョージ・キャンベル:ケヴィン・ガスリー
マカリスター牧師:ジェームズ・コスモ
アンガス:ブライアン・ペティファー
サミー:イアン・ロバートソン
ブラウン:マイケル・ナードン
キャンベル夫人:アン・ルイーズ・ロス
ドリー:フェネラ・ウールガー

(参考文献:KINENOTE)


【彼が愛したケーキ職人】

公式サイト
http://cakemaker.espace-sarou.com/
作品基本データ
ジャンル:ラブロマンス / ヒューマン / ドラマ
原題:THE CAKEMAKER
製作国:イスラエル、ドイツ
製作年:2017年
公開年月日:2018年12月1日
上映時間:109分
製作会社:Laila Films Ltd.
配給:エスパース・サロウ
カラー/サイズ:カラー/シネマ・スコープ(1:2.35)
スタッフ
監督・脚本:オフィル・ラウル・グレイツァ
プロデューサー:イタイ・タミア
共同プロデューサー:マティアス・シュベアブロック、オフィル・ラウル・グレイツァ
撮影:オムリ・アロニ
美術:ダニエル・コソウ、ヤエル・ビベルニク
音楽:ドミニク・シャルパンティエ
編集:ミハル・オッペンハイム
衣装:リル・ゴルドファイン
キャスト
トーマス:ティム・カルクオフ
アナト:サラ・アドラー
オーレン:ロイ・ミラー
モティ:ゾハル・シュトラウス
ハンナ:サンドラ・シャーディー

(参考文献:KINENOTE)

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映画ウォッチャー 埼玉県出身。子供のころからSF映画が好きで、高校時代にキューブリックの「2001年宇宙の旅」を観たところ、モノリスに遭遇したサルの如く芸術映画に目覚め、国・ジャンルを問わない“雑食系映画ファン”となる。20~30代の一般に“青春”と呼ばれる貴重な時をTV・映画撮影現場の小道具係として捧げるが、「映画は見ているうちが天国、作るのは地獄」という現実を嫌というほど思い知らされ、食関連分野の月刊誌の編集者に転向。現在は各種出版物やITメディアを制作する会社で働きながら年間鑑賞本数1,000本以上という“映画中毒生活”を続ける“ダメ中年”である。第5回・第7回・第8回の計3回、キネマ旬報社主催の映画検定1級試験に合格。第5回・第6回の田辺・弁慶映画祭の映画検定審査員も務めた。