- 各国の基準値超過食品への対応:米国・EU・韓国
- DMAA(1,3-ジメチルアミルアミン)を含む製品について各国が警告
- 米国食品医薬品局(FDA):コメおよびコメ製品のヒ素濃度の予備的データを発表
- 欧州食品安全機関(EFSA):暴露マージン(MOE)および毒性学的懸念の閾値(TTC)の利用について意見を公表
- イタリアの個人病院でソルビトールと称する製品により女性が死亡
- 世界保健機関(WHO):福島第一原子力発電所事故直後1年間のヒト放射線暴露について評価報告書を発表
- 米国農務省(USDA):USDAの栄養データラボ(NDL)が特定食品の酸素ラジカル吸収能(ORAC)データベースをNDLのウェブサイトから取り下げる
- コーデックス委員会:ラクトパミンの基準を採択
- 香港:ヨウ素欠乏ミルクに警告
- Gilles-Eric SéraliniらによるGMトウモロコシNK603研究について
海外の食品安全関連情報を紹介する「食品安全情報(化学物質)」の記事の中からピックアップしました。番号を付けていますが順不同です(執筆:登田美桜・畝山智香子)。
1. 各国の基準値超過食品への対応:米国・EU・韓国
米国:米国食品医薬品局(FDA)が、ブラジル産オレンジジュースを原料として使用した一部のオレンジジュースから農薬カルベンダジムが検出されたと報告
カルベンダジムは、ブラジルや他国では使用されていますが、米国ではオレンジへの使用が認可されていないために生じた問題でした。ただし、健康上の懸念はないので、当該製品の回収や廃棄の必要はないと判断されました。
EU:食品および飼料中の塩化ジデシルジメチルアンモニウム(DDAC)および塩化ベンザルコニウム(BAC)について
EUでは、食品および飼料から最大残留基準(MRL)を超えるDDACおよびBACが検出されて問題になっています。原因は、飼料については特定業者による意図的混入(かなり悪質)が判明しており、食品については熱帯フルーツへの収穫後の使用、乳およびアイスクリームの工場における機械等の殺菌などが可能性と考えられています。
韓国:かつおぶしにおけるベンゾピレン基準の超過に関連してインスタント麺を食品医薬品安全庁(KFDA)が回収
日本を含む各国で回収騒動を起こした問題です。基準値を超過したかつおぶしを使用したインスタント麺まで回収するのはやり過ぎではないかとメディアでは騒がれ、KFDAは国民に混乱を引き起こしたことを謝罪しています。燻製品から比較的高濃度のベンゾピレンが検出されるのはよく知られていることなので、かつおぶしの基準値の設定にも疑問が感じられます。
2. DMAA(1,3-ジメチルアミルアミン)を含む製品について各国が警告
DMAAは、トレーニング又は減量用サプリメントとして一般的に使用されていましたが、動脈の狭細化や心拍数の上昇、急激な血圧上昇、重篤な場合には死亡する可能性があるという理由から、各国でDMAA含有製品について警告が出され、販売禁止等の措置が行われました。
3. 米国食品医薬品局(FDA):コメおよびコメ製品のヒ素濃度の予備的データを発表
FDAは、コメおよびコメ製品中のヒ素については解明すべき重要な問題であると認識しています。今回の報告は予備データとのことですので、近いうちにより詳しいデータが公表される予定です。コメのヒ素汚染は日本にとっても避けられない問題です。
4. 欧州食品安全機関(EFSA):暴露マージン(MOE)および毒性学的懸念の閾値(TTC)の利用について意見を公表
リスク評価の方法も変化してきています。EFSAは、食品および飼料中の化学物質に関する今後のリスク評価において、閾値がないとしてALARA原則(合理的に達成可能な範囲で可能な限り低くする)が適用されてきた遺伝毒性のある物質のリスク判断にはMOEアプローチを、また、低濃度で存在する一部の不純物等による健康影響の可能性や追加データの必要性の判断にはTTCアプローチを利用していく方針です。
5. イタリアの個人病院でソルビトールと称する製品により女性が死亡
イタリアの個人病院で、医師がインターネットを介して購入したソルビトールと称する製品を小腸吸収不良診断のためのブレステスト溶液に使用したところ、1名の女性患者が死亡し、他に2名の患者が入院したという事故です。当初はソルビトールにそのような毒性があるのかと不思議に思われましたが、その後の調査で、実際に使用されたのは亜硝酸ナトリウムであったことが確認されています。
6. 世界保健機関(WHO):福島第一原子力発電所事故直後1年間のヒト放射線暴露について評価報告書を発表
WHOが、福島第一原子力発電所事故に由来する放射性物質への暴露について各国の専門家による独立委員会を設置し、土壌や大気からの暴露、空気中からの吸入暴露、食品や飲料水による経口暴露を総合的に評価した最初の報告書を発表しました。
7. 米国農務省(USDA):USDAの栄養データラボ(NDL)が特定食品の酸素ラジカル吸収能(ORAC)データベースをNDLのウェブサイトから取り下げる
米国では、ORAC値を食品や化合物の抗酸化力を示す新しい指標として使用できるかどうかを検討していて、USDAのウェブサイトでは各種食品のORAC値をデータベースにして公表していました。しかしながら、in vitro試験(試験管内など人工的に構成された条件下での試験)で抗酸化が観察されたとしても、ヒトの健康へ抗酸化作用をもつとは言えないと公式に発表して、ORACデータベースを取り下げました。
新しい知見によりこれまでの研究の意義を否定されたときに、それを認めることができるかどうかは、科学的プロセスが正常に機能しているかどうかを判断する目安になります。
8. コーデックス委員会:ラクトパミンの基準を採択
ラクトパミン(ブタやウシの飼料に添加するなどで使用される動物薬)の採択については、反対派であるEUおよび中国等と、賛成派の米国およびカナダ等の間で長い間対立してきました。コーデックス委員会の総会でもかなりもめたようです。
総会での多数決で一応国際基準の結着がつき、この問題は収束しそうに思われますが、採択が僅差だったことを考えると、ラクトパミンの論争は今後もしばらく続きそうな気配です。
9. 香港:ヨウ素欠乏ミルクに警告
香港食品安全センターが、複数の乳児用調整粉乳についてコーデックス基準に定められた必須栄養素を測定したところ、いくつかの製品でヨウ素濃度が基準より少ないことが確認され、当該製品は回収されました。
当該製品には日本からの輸出製品が多かったため、メディアでも取り上げられた問題です。日本の食品が海外の基準を満たさない事例で、国産が無条件に輸入食品より安全だという思いこみが間違いであることを示すものです。
10. Gilles-Eric SéraliniらによるGMトウモロコシNK603研究について
フランスのメディアが、Caen大学のSéraliniらが発表したグリホサート含有製品および遺伝子組換え(GM)トウモロコシNK603に関する研究論文をもとに、GM作物が有害であると報じたことを発端に世界で大騒ぎになった問題です。
各国の科学者およびリスク評価機関からは、この論文には科学的根拠がなく、主張にはデータの裏付けがないことが相次いで指摘されました。
その他
EU:一般食品法(General Food Law)およびEFSAが10周年記念
カナダ:Safe Food for Canadians Actを発表
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