窒素を与える量とタイミングは、作物の色を見ながら判断するということが行われてきました。これは基本的で重要な技術です。しかし、その方法で与え方に気を配るだけでなく、いかに安定して窒素を効かせるかにより神経を使うべきです。
“緑色”の違いを見分ける
さて、葉緑素は植物特有なものですが、その名の通り緑色で、これが葉や茎の色となっているわけです。しかし、葉や茎の緑色は、実は単に「緑色」の一言で片づけられるものではありません。作物の種類によっても違いますし、現場でよく観察すれば、圃場ごとに、株ごとに、その緑色の様子は実は多様です。たとえば、ハクサイ、キャベツ、ホウレンソウ、レタスなど、それぞれ違った緑色を持っています。また、同じハクサイやキャベツなどでも、個体ごとに色は微妙に異なります。
最初のうちは違いがよくわからないかもしれません。しかし色に注意することを覚えて観察を重ねていけば、だんだんと違いがわかるようになってきます。
実は、この緑色の濃淡などの違いは、窒素の量の多寡によるところが大きいのです。ですから、理想的な緑色を覚え、栽培現場で違いを判別ができることが、作物の生育や品質の善し悪しを見分ける重要なポイントです。この判別ができてこそ、窒素のさじ加減がわかるのです。
品種ごとにも適正な色は異なる
これはもちろん野菜だけのことではありません。水田に出かけてよく観察すると、同じエリアにある水田でも、畦畔で区切られた隣同士の水田で水稲の茎葉の色が違うことに気付くはずです。さらに、同じ水田の中でも、周辺と中央など部分によって色の濃い・薄いがあることにも気付くでしょう。
より詳しく違いを比べるには、いくつかの株を抜いてきて、色の濃いものから薄いものへと並べてみるといいでしょう。優れた農家は、水稲栽培のステージごとに、どの時期にどの色であるのが適正であるかを理解しているものです。
ただ、これも水稲なら適正な色は一様かと言えばそうではありません。コシヒカリ、あきたこまち、ひとめぼれなど、品種が異なれば、時期ごとの適正な色は異なります。ですから、新しい品種に取り組むたびに学習しなおさなければ、適正な窒素の供給量はつかめないという苦労もあります。
与え方以上に効かせ方を考える
こうした作物の色の観察と判断は割と以前から行われているものです。しかし、色で判断するだけでいいのかという問題もあります。と言うのは、窒素は与えた結果が比較的早く出やすい成分ではあるのですが、やはり施肥のタイミングを誤れば逆効果にもなります。そこで、いちいち茎葉の色を見ながら施肥量を変えることに神経と時間を使うことを軽減する方法を考える必要があります。
そもそも、なぜこのような微調整が必要になるかと言えば、いつでもどの圃場でも窒素を与えただけ吸われるとは限らず、土壌の状態、時期、天候などによって吸収量が変わるからです。
そこで、作物の色で判断できることにもまして、作物が窒素を安定して吸収できる土壌を作ることが重要であり、それが実現できればコントロールもより確実になるということです。
これは、水田では比較的やりやすいと言えます。しかし、畑での窒素吸収は大変不安定なものだということは押さえておいた方がいいでしょう。
窒素の吸収は、土壌水分に大きく左右されます。今年の1月中旬も、各地の圃場で冬野菜がうまく育たず、高騰が続いています。これも、各地で雨が少ないために、窒素吸収がうまくいっていないことが大きく影響していると考えられます。