(1)There is no someday.
「いつの日にか、きっと、きっとやってみたい。そういつの日にか……」――誰でも、そう思うことはある。
では、ここに中学一年生でも読める英文があるが、これをどう思われるだろうか。
Someday, I’ll do it someday.
Monday,
Tuesday,
Wednesday,
Thursday,
Friday,
Saturday,
Sunday,
see (?)
There is no someday!!!
そう。カレンダーに、someday(いつの日か)などない。It’s time to start it.――今始めないと何も始まらないのだ。
この文章は私が考えて作ったのではない。実は、ハーレーダビッドソンがアメリカで使った広告のコピーなのである。購買者に決断を迫るために、シャレた表現で書かれたコピーである。
日本では最近、「いつやるか? 今でしょ」という予備校のコマーシャルが話題になり、ついにトヨタがこの教師を起用して「じゃあいつ買うの? 今でしょ」というコマーシャルを流したが、いわばその元祖である。
It’s time to start it. 今始めないと何も始まらない――これは、ビジネス上の変革が必要なあなたについても、ぴったりな呼びかけだ。
(2)The one most responsive to change.
ダーウィンの「種の起源」には、こんなことが書かれている。
It is not the strongest of the species that survive, nor the most intelligent, but the one most responsive to change.
訳せば、「最も強い種が生き残るのではなく、最も賢い種が生き残るのでもなく、最も変化に対応する種こそが生き残る」ということになる。
ダーウィンは種(species)についてそう言ったが、種を企業に置き換えてみるとどうか。企業が永続するための本質をずばりと言い当てているではないか。体力・攻撃力などの力のある企業、単純な意味で知恵が豊富である企業が生き残るとは限らない。変化に対応できたかどうかこそが、結果につながるのである。
going concern すなわち、目的を果たすなどある段階や時期に清算するのではなく存続し続けることを前提とした企業も、環境の変化に対応しないならばいつか(someday)、消滅することにならざるを得ないのだ。
(3)Fear itself.
1929年10月24日、ニューヨーク証券取引所で株価が大暴落し、これに端を発して世界恐慌が起こった。
時のアメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトは、その危機を克服するリーダーシップを取ることになったわけだが、彼はこう言った。
The only thing we have to fear is fear itself.
「我々が恐れるべきは恐れそのものである」
彼はその後「ニューディール」という大胆な政策で国家再建と景気浮揚に取りかかり、それを成し遂げたのである。それは、恐れを排除したからできたことだったに違いない。
2008年9月15日、アメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻し、リーマンショックが起こった。1929年の世界恐慌とはきっかけも現象も異なるとは言え、人々あるいは諸企業の反応は恐慌(パニック)そのものであった。
以降、民間も行政も思い切った打開策に打って出ることがなかったのは、恐れ、恐怖が先に立ったためだろう。もうだめだと思っていればもうだめだし、踏み出すことを恐れているうちは踏み出さない。恐れがあれば、何事も変えることはできないのだ。