不況に強いブランドには共通の特徴がある。しかも、その特徴が今継続され、将来に伝えられていく点が最も重要なポイントだ。そうしたブランドは、時代に閉塞感をもたらしている今日の諸問題にも負けない強さを持つ。
不況に強いブランドは基本姿勢を未来へ継承していく
不況に強いブランドを観察すると、それらには共通の特徴があることがわかる。それらはどのような特徴を持っているか。それをまとめて書き出す。
まず以下にそのポイントを書き出してみる。
(A)すでに独自のブランドとして伝統や文化などそのブランドの世界を作り上げているブランドであり、そのブランドの理念に基づき、独自性のある商品群を展開している。
(B)一貫した理念をしっかりと持ちながら、変化に対応して自身のブランドを内発的に変えられるブランド。すなわち、変化し続けることで不変のものを表現する不易流行である。
(C)対面販売など、生身の人間が機能する顧客接点で顧客価値を創造できるセールス・ネット・ワークを構築していて、顧客/顧客接点企業(ディーラー、フランチャイジー等)/メーカーの三者間にWin-Win-Winである絆(Delightful Relationship)を構築している。
(D)基本姿勢として、人間にとって永遠のビジネス課題に先進的に挑戦し続けている。
(E)モノだけを売るのではなく、モノを介してストーリーの生まれるイベント・マーケティングなど、コトを売るマーケティングを展開している。
(F)不況にも揺るがない経営者が存在している会社・企業の持つブランド。
加えて、最も重要なことは、以上の状態が「かつて存在していた」のではなく、現存し、未来に向けても継承されてゆくことである。
今日の閉塞感を分析する
以下、(B)について、すなわち不易流行で変化に対応して変化するブランドについて述べるために、まず現代世界の状況を見ておく。
この世というもの、時は流れ、時代を形成する事象は変化する。また、物質的な変化は、人の思考の変化と相互にかかわり合いながら起きる。その舞台として確かなものと思われていた社会構造自体も変化する。たとえば経済は、ある期間ごとに好況・不況のサイクルを描く循環型の経済変化はひと昔前のものとなり、今やグローバル化の進展により、世界各地の大小さまざまな動向に大きく左右される経済変化の時代となっている。日本の産業を支える原材料の価格は各国の政治的な思惑によっても左右され、上下する結果をはっきり示している。
そのように将来の予測が難しく、足元ではリーマン・ショック以来の不況に悩まされている中、個々の企業にはさらに環境への対応、エネルギー問題への対応が問われ、それが企業の存続条件とさえ見なされる厳しさに見舞われている。
一方、1990年以降の日本の経済問題を考える上で、人口動態の変化は無視できない。年齢構成の変化と少子高齢化などを基因とする購買行動の変化は著しく、強いインパクトを持っている。
また、親世代の経済的ゆとり、多くの企業の不振と当期利益重視の経営、ゆとり教育などが複合した背景からニートやフリーターなどの社会現象を生み出している。その主役たる年齢層はすでに36歳以上の成年層にまで拡大した。
そして、高齢者が増え続ける一方の状況も、経済に与える影響は大きい。2005年前後には団塊世代の大量退職に際して大きな購買層の再登場が期待されたが、現状強い購買力を持つ高齢者の市場化は、コンビニなどの一部を除いて成功しているとは言いにくい。それどころか、高齢社会は老々介護・老障介護・買い物難民など、負のイメージ、負の実態として台頭し、社会問題を発生させている。今後はさらに、2015年には団塊の世代の年金支給が開始されるために、年金財源・国家財政を圧迫する(2015年問題)ことに関心が高まる流れの中にある。
変化の中でこそブランドを重視すべき
これらによって、かつて安定的だった、日本が世界に誇っていたソーシャル・セーフティ・ネットは崩壊寸前となっている。
これらの問題が社会に憂鬱な閉塞感を持たらせている。
このような顧客の状況に合わせて、いかに継続する企業(going concern)たり得るか、持続可能な成長(sustainable growth)を実現できるか、存続を確保できるかが、多くの経営者の悩みとなっている。
そこで重視されるべきものこそ、ブランドなのである。先に述べたように、強いブランドとは不易流行であり、変化に対応するものであり、従ってアンチエイジングなのである。そのようなものであるための知恵は、すでに世界にあるのであって、そこを学ばない手はないのである。