チェーンのスーパーバイザーはマニュアルを超える指導・改善は行わない。この前提なり風潮は、チェーンのしくみそのものが内包していたものによる。本来はこれを是正するしくみを作っていなかければならないが、むしろその欠点を増幅してしまっているケースが目立つ。スーパーバイザーの専門職化もその一つだ。
社内でのスーパーバイザーの位置づけの弱さ
この点はチェーンによって違いが多いとは思うが、スーパーバイザー(以下SV)について、「スーパーバイズ」(監督する。目を光らせる)という単語から想像されるほどの社内的な位置づけが確立されているケースは少ないように思われる。
むしろ最近はSVが専門職とみなされるようになり、実際に専門職として採用されてケースも多くなっているようである。専門職ということは、社内で与えられる職務の目的やそれに伴う権限が限定的であると言うことを意味し、また基本的には本部組織内での昇進の可能性はなくなるか少なくなる。
そうした場合、SVは非専門職であり総合職である上級者、たとえばディストリクト・マネジャー等の下に置かれて、その指揮やサポートの下で働き、レポートは会社の組織全体にと言うよりも、上司に対して行うニュアンスとなる。つまり、チェーン本部の経営全般を考える視点よりも、上位者の顔色を見て動く傾向が出やすい。しかも、前回述べたように、“マニュアルを超えられない”のである。厳しい言い方をすれば、チェーンの個々の店は“ロボティックなお店”であるのと同様に、専門職として扱われているSVは“ロボティックな存在”である。
重大な問題ほど本部には伝わらない
たとえばフランチャイズ・チェーン(以下FC)の場合、仮に担当するフランチャイジー(以下FCジー)に経営上の問題が発生しても、このような立場にいるSVが、必ずしもその問題をチェーン本部に持ち帰るわけではない。FCジーの経営問題は、あまりに重大であるゆえにマニュアルに十分な記載がなく、SVにはそれをチェーン本部の内部に展開する力や発想そのものがないことが多い。
専門職に求められることは専門職の権限の範囲内で可能な限り問題を生じさせず、FCジーをサポートし、基本的な目標売上金額の実現を支援することである。換言すればマニュアルに忠実に従うことであり、マニュアルそのものの変更・修正等を考え、提案することは、職務権限外の事項となっているチェーンが多いようだ。
そうするとSVが一個人として妥当だと考えた対策や提案も、本部から求められていなければ提出されることはない。まして、マニュアル逸脱の指摘のリスクを取って、FCジーのためにあえて一肌脱ぐ、心血を注ぐ、というSVはいないと考える方が現実的である。
チェーン運営その物の基本形がマニュアルの遵守にある。そのことによって生じる軋轢をコーディネートするのが、SVの役割であったはずだ。ところが、一方で専門職としてSVの職務がマニュアルの忠実な履行と規定されてしまった以上、SVはマニュアルを超えられない。加えて現実はマニュアルを超えられるほどに時間的な余裕もないことが多い。