コンビニエンスストアのこれから(3)変化を続ける社会とフランチャイジー

コンビニエンスストアに関する問題点
コンビニエンスストアに関する問題点

コンビニエンスストアに関する問題点
コンビニエンスストアに関する問題点

コンビニエンスの店舗が行う業務は多様化し、増加し、複雑化している。その一方、フランチャイジーの第一世代は高齢化の一途をたどり、年々新しいことへの対応が難しくなっている。それは労働としての難しさだけでなく、追加投資など金銭的な難しさもあるはずだ。それが代替わりを難しくもしているだろう。

従来型FCジーの基礎体力の限界が表面化

 大きな問題は、オートバイ販売店がかつて経験した状態と大いに共通する。

 従来型のコンビニエンスストア(CVS)のフランチャイジー(FCジー)が運営する店舗において、本部が求めるビジネス業務の内容への対応が十分に行えず、今すでに“顧客接点としての組織・体力の限界”が露わになりつつあり、それが果たし得る機能の限界が、私のような外部の人間からも垣間見える。

 オートバイ販売店とも共通する基本的に、“パパ・ママストア”の色彩の強いFCジーが、巨人であるフランチャイザー(FCザー)が構築したシステムに後押しされてきた構図がある。今までは、その形で何とか機能し、仕事もこなせて、利益も上げられてきたのだろう。しかし、1970年代から広がったCVSのビジネスモデルにも、ほころびが顕在化してきているのではないか。

 チェーン全体としてのビジネスモデルは、通常の商品の販売から、公共料金の収納、ATMの取り扱いや、ネット通販で購入した商品の受け渡し、チケット販売等、各種の社会的サービスを提供する重要なネットワークサービスとして大きな変化を遂げつつあるが、その中で、落伍して行くFCジーの数も増えている。

FCジーの高齢化

 CVS店舗経営者の第一世代は高齢化しており、しかし第二世代は、いや増す過酷なCVS業態のビジネス環境の下では、後継に積極的にはなりにくいだろう。

 また社会のIT化の波は、先端の顧客接点に否が応でも押し寄せてくるが、第一世代はITに対して十分な対応力を持たない場合も多い。この点はCVSの機能や収益の上げ方が、商品からITシステムの採用を前提とした無形のサービスに変更され続けている中で、ますます深刻さを深めている。

 新たに加わってきた、従来の商品とは違うサービスの提供では、対FCザーとの関係だけでは済まず、電子決済等を通じることで、チェーン以外の企業のサービスシステムをも理解する必要が発生する。そうした新しい商品・サービスによって収益を上げる方向性の強化のために、従来型のFCジーが、複雑で、高機能で、刻々と変化する知識を十分には消化しきれない状況が、店頭で実際に発生している。

要求の多様化へのヒト・モノ・カネの対応

 一方で、今なお利益の中心である商品販売におけるCVSの収益性は、価格破壊がかなり浸透してきたこともあって確実に低下している。こんな状況の中で、かえって現代社会が求め、FCザーが求めるIT化、環境、オストメイト(腹部に排泄のための孔を人工的に造設した人)対応多目的トイレ等に代表される「バリアフリー社会」、深夜に働くスタッフの安全確保等、多方面にわたる対応のために追加の投資も必要となってきている。

 チェーン本部としても、従来型のFCジーに対しても多方面からのサポートが行われていることではあろうが、それにしても、収益性を根本的に改善するビジネスモデルや簡単・迅速に処理のできるサービス事務システム等の開発がまだなされたようには思えない。

 このようなFCジーの置かれた状況は、本部にとっても新たなFCジー開発をボディーブローのような障害となり、確実に不利な環境をもたらすであろう。いやすでに新規のFCジー開発は一般市街区域では困難になってきていると聞く。

 その中で本部が弱肉強食型、換言すれば、自然淘汰加速型のやり方を強く出し過ぎては、社会問題を招来することにもなりかねない。

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About 奥井俊史 106 Articles
アンクル・アウル コンサルティング主宰 おくい・としふみ 1942年大阪府生まれ。65年大阪外国語大学中国語科卒業。同年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。中国、中近東、アフリカ諸国への輸出に携わる。80年初代北京事務所所長。90年ハーレーダビッドソンジャパン入社。91年~2008年同社社長。2009年アンクルアウルコンサルティングを立ち上げ、経営実績と経験を生かしたコンサルティング活動を展開中。著書に「アメリカ車はなぜ日本で売れないのか」(光文社)、「巨象に勝ったハーレーダビッドソンジャパンの信念」(丸善)、「ハーレーダビッドソン ジャパン実践営業革新」「日本発ハーレダビッドソンがめざした顧客との『絆』づくり」(ともにファーストプレス)などがある。 ●アンクル・アウル コンサルティング http://uncle-owl.jp/