外食チェーンでは、接客の時間や人的な要素が削減される上に、営業の中にアフターセールスサービス(A/S)の要素を取り込んでいない。このため、顧客の店舗とのかかわりは希薄であり、“リピート”を増やすには1回ごとの販促(SP)に成功しなければならない。
切り詰められる顧客が店舗にかかわる時間
外食チェーンは第22回で述べたように、原料調達から最終販売、顧客への引き渡しまでを含めて、一貫してプロデュースし、生産・運営し、提供を行っている。またその顧客接点における引き渡し・提供の仕方もこと細かにマニュアルによって標準化しており、提供すべきサービスの内容はしっかりと定められている。信頼性の高いチェーンでは、高度に管理され製造されている商品に、顧客接点で問題が発見されることはほとんどないとも想定されている。
その外食チェーンの多くが共通に目指していることの一つは、1回の取引の完了に要する労力や時間の短縮だ。いわゆる“手離れのよさ”は、外食産業の利益の源泉の一つと考えられている。
そのため、商品の販売・消費の段階ですら、合理化・自動化は強化される傾向がある。
ファストフードサービスに代表されるように、単純に店頭で商品を引き渡して終わりというキャッシュアンドキャリーではもちろん、接客の省力化が実現しているし、ファミリーレストランや居酒屋などテーブル・サービスとされる業態でも、POSやオーダーエントリーシステム(OES)などの設備によって省力化が推進されている。これも先に述べた通り、ある意味でセルフサービス化の推進と読むことができる。
そのため、顧客接点である店頭でも、顧客との対面時間が合計して限りなく短縮化されており、当然“人と人”のコミュニケーション量は減っている。最近では、OESの操作をお客にさせる方式も普及しており、この流れはさらに進んでいる。
アフター・サービスがない弱み
ましてや、取引後にさらに顧客とのかかわりを持つアフターセールスサービス(A/S)については、ほとんど考慮されていないか排除するように考えられている。この点、A/Sの中に販売プロセスにおける収益源(プロフィット・センター)を見付け、多様化、チェーン化し、そのプロセスを使って顧客との長い関係を築こうとする自動車産業や、事務機器産業とは大きな違いがある。
これに似たこととして外食産業が増やそうとしているのはリピート(反復利用)ということだが、今回の利用と前回の利用ないし将来の利用とに関係を持たせることは難しく、単に1回限りの利用の回数を増やす販売促進(sales promotion/SP)と混同しているケースが多い。これは、他産業に比して外食産業の際立った特性の一つと言える。
SPの連続から脱却するには、顧客と店との“絆”を構築することが必要だが、A/Sの機能なしにこれを作り上げるのは難しい。