日本の外食チェーンのブランド管理は、とくにビジュアル・アイデンティティ(VI)が厳格に行われている。そのレベルの高さは各種のプレミアム・ブランドをしのぐが、現実のブランド管理には成功していない。
厳格なVI管理
外食チェーンが展開する業態、フォーマットに対する商標、ロゴ、コーポレートカラーなどビジュアル・アイデンティティ(VI)統一的に管理されている。
業態ごとに明確な商標を持ち、これに対してデザインされたロゴなどのVIを定め、多くそれはサービス・マークとして登録している。顧客接点である店舗の外見的な設計上の特徴、内外装に使用される建築材や、使用する色も決められており、どの店を見てもその外食チェーンとしての統一感がある。
さらに、そこに働くスタッフのユニフォームは被服、エプロン、キャップ、ネクタイ、靴に至るまで本部の規定に従ったものを使用している。店内の什器もしっかりと仕様を定め、イス、テーブル、食器、ナプキンの統一も当然である。これは低価格商品、低価格業態を実現する必要性からも基本的にはしっかりと行われている。
管理はプレミアム・ブランド以上だが
このようなブランドの基本的条件を構成する各パーツを取ると、その徹底度は場合によっては、いわゆる超一流と言われるブランド商品や業種と比較しても、より統一的に、より徹底して行われているとさえ言える。
たとえば、私はこれまでに何度も各社の臨店チェック(チェーンストア業界ではストア・コンパリゾンと言われているワークに相当する)をしているが、その経験からも、それは言える――メルセデスにせよ、BMWにせよ、各顧客接点におけるトータルなブランド関連物の徹底性はここまでは統一されていないケースが多い。
ちなみに、自動車販売店の店舗に関しては、今のところではレクサスが圧倒的に高質感のある店舗になっており、VIの打ち出しが他の自動車販売店網の全店舗との比較においても最も明確に実行されているが、ただし私から見ればまだまだ隙はある。
一般的に言えば、自動車産業との比較では、とくに細部に渡るブランド規定の実践に関しては、外食産業の方が本部の思い通りの運営ができるため、きめ細かく実践されていることが多い。
アパレルでは、エルメス、ルイ・ヴィトン、フェラガモなどの店舗を見ると、各店舗は建築材料に始まり、什器や商品の展示方法などにおける高級感・高質感は圧倒的に高いし、内外装に強いブランド自体のイメージが感じられる。もちろんブランドのロゴはしっかりと打ち出されている。だが、それでも各店ごとに、環境に合わせた三現主義的(現地・現物・現状に合わせてモディファイする)バリエーションが取り入れられている。
平たく言えば、“ばらつき”はあるのだ。ただし、これは逆説である。外食産業ほど、金太郎飴的な、形式一辺倒で、品質感に欠ける、“ブランド管理はなかなかないかもしれない。