外食チェーンでは、直営店と他人資本による店舗とを問わず、店舗の自主性や独自性を抑制する仕組みを取っている。このしくみの中では、店舗での創意工夫はマニュアル違反となる。
店舗の自主性や独自性は否定されてきた
外食産業の顧客接点である店舗(ショップ、ストア)の資本関係を見ると、チェーン本部が直接に運営する直営店で構成するチェーン(レギュラー・チェーン、RC)や、他人資本が運営するフランチャイズ・チェーン(FC)、FCよりも加盟店の独立性が高いと言われるボランタリー・チェーン(VC)などがある。そして外食産業に見られる特徴の一つとして、一つのチェーンの中にこれらが混在し、一般の生活者にはどれが直営店なのか、どれがFC店なのかという区別がつけられないということがある。
特徴的なことは、それが直営店(ダイレクト・ショップ)である時にはもちろん、たとえフランチャイジーという本部から独立した資本による店の場合でも、店(ショップ、ストア)に店舗の運営に関する自主性や独自性は求められてもいないし、ほとんど期待されてもいないということである。これら店は、各外食チェーンの“一貫する商流”の中の最終段階を構成する一つのモジュールとして完全に組み込まれている。
つまり、誰の資本による店であろうと、チェーンの中では他と同じ機能を持つ部品に過ぎないと考えられていないのである。
感性価値創出の創意工夫はマニュアル違反
これらに求められていることは、本部のマニュアルに従って、そこに記された手順通りに作業を安定的に行い、顧客に対して一定品質の商品を引き渡すことである。改めて確認するが、外食産業における最終製品の完成場所は商流上の顧客接点(店舗)である。顧客接点が同時に生産工程の最終完成場所(プロセス機能を担当)にもなっている。工業生産的表現を行えば、「生産の最終ラインオフは店頭である」ということになる。
その工程としての職務を果たすために必要な店の内外装、そこで使われる調理機材、什器、食器、看板、ロゴに至るまでは、これまたその外食チェーン本部によって規格化された機材をそろえる。外食チェーン本部が指定した業者から納入し、ものによっては一つの部品として専門的に作って納入する専門の機材=モジュール製造メーカーによって供給される。お店が自身がよいと考えても、その機材を独自に調達することは外食チェーンにおいては例外的なこととなる。
店舗での接客方法も標準化(マニュアル化)された重要なプロセスの一つであり、仮に店独自の自主的なサービス形態を付加しようと考えても、原則としてチェーンの本部はこれを受け入れない。だから、もし店が独自に判断して顧客を増やそうと考え、独自に“高い感性価値”を付加しようとしても、それはマニュアルへの違反と考えられる。
なぜなら、付加工数の必要な作業を加えることは全体のサービス・システム効率に負荷をかけ、多くの場合コストアップにつながるからである。また、管理面から、フロアでの事故や病原菌の混入などのリスクが発生する可能性も考えられということでもある。