企業内・企業間であるべき連鎖・連携について考え直す連載。このシリーズで言う「チェーン・ビジネス」の範囲と、一般に行われている業種・業態分類の特徴を見ている。今回からは、価格戦略でグループ分けをする見方について説明していく。
型を貫き続ける企業は減っているが
これまで見てきたさまざまなチェーンの形を販売価格のあり方から改めて見てみると、2つの大きなグル―プがあると考えられる。
一つは、あくなき価格破壊を志向する業種・業態のグループだ。ちなみに「価格破壊」の語は、城山三郎が1969年という驚くべき早い時期に小説のタイトルとして用いた言葉だ。
いま一つは、メーカー(サプライヤー)が発表する「希望小売価格」を実現できる売り方を志向するグループだ。
今日、価格破壊志向型、希望小売価格実現志向型のどちらのグループに属する業種・業態でも、各業界全体としての売上と利益を見ると、停滞ないし低下する症状に苦しんでいる場合が多い。そしてどちらのグループでも、その業種・業態がスタートした頃から一貫したビジネスを展開しているところは少なくなりつつある。すなわち、完璧な形の価格破壊志向型、完璧な形の希望小売価格実現志向型という企業は減りつつあり、両グループの垣根は崩れ出している。
しかし、両グループのいずれの業種・業態でも、業界全体としての傾向とは別に、個別企業として見ると、今なお発展を続けている企業は存在する。
希望小売価格実現志向型を続ける例
一例は、自身の体験に基づいて確信を持って紹介できる。ハーレーだ。業界ベースでは、日本のオートバイ市場は、1982年以降一貫して大幅な凋落を続けている。しかも、ハーレーは日本で流通するオートバイの中で最も排気量が高く(標準で1584cc)、価格は他社製品の2倍だった。
しかし、筆者が日本法人の社長を務めた当時のハーレーは、大型のバイク市場で24年間に渡って一貫して販売台数を伸ばし続けた。2000年に市場シェア一位となって以降そのポジションをキープし、結果的に筆者が退任した2008年の時点では「圧倒的な市場シェア37%」を達成した。
また、希望小売価格が2000年モデルから2009年モデルの10年間の間で、上下で最大7%の価格幅の変動しかなく、10年を通してみると販売平均価格にはほとんど変更がなかった。日本のオートバイ業界は、もともとは希望小売価格実現志向型ではあったが、実態は値引きが盛んで「今日新発売された新車が、明日の店頭では10%以上の値引き札が掛けられるほどの乱売市場」であった。