企業内・企業間であるべき連鎖・連携について考え直す連載。このシリーズで言う「チェーン・ビジネス」の範囲と、一般に行われている業種・業態分類の特徴を見ている。今回と次回は、フランチャイズ・チェーンの特徴について解説する。
フランチャイズ・チェーン(FC)は、本部が構築するビジネスモデルパッケージを一貫して導入するビジネスであり、“商流の一貫性”が明確な場合が多い。
まず、FCを展開する企業すなわちフランチャイザーがFC本部となり、ビジネス・モデルを構築する。これには自社が開発した商品はもちろん、ブランドの使用方法とルール、店舗オペレーションのノウハウなどを含み、トータルなシステムとしてパッケージ化する。
フランチャイザーは、このフランチャイズ・パッケージの導入を決めた顧客接点企業(フランチャイジー)とFC契約を結ぶ。そして、このパッケージによってフランチャイジーが運営する顧客接点(ショップ、ストア等)を一つのチェーンとして組織化する。
フランチャイジーは、フランチャイザーの意図する統一されたブランド(CI、ロゴ、コーポレート・カラーなどのビジュアル・アイデンティティーを含む)を使用し、本部が定めたルール、指導、支援のもとに営業を行う。
このパッケージ化された仕組みを提供する対価として、フランチャイザーはフランチャイジーからロイヤリティを受け取る。その金額は、フランチャイザーが獲得した売上や利益に応じて計算される。これがFCビジネスだ。
この点、チェーン本部に当たる企業(メーカーや輸入総代理店等)が受け取る金額を仕切り価格に織り込んでいるチェーン・ビジネス(前回までで説明した、顧客接点とその組織を「販売店」「特約店」と「販売網」と呼ぶチェーン)とは、収益計上の基本的構造や、本部と顧客接点相互の実態的な関係が異なっている。
FCを展開する企業の多くは、日本フランチャイズ・チェーン協会に加盟している。
フランチャイザーは単一のFCを展開することも多いが、複数の異なるフランチャイズ・パッケージを開発し、それぞれに異なる店舗網を展開しているケースも多い。
世界で最初にFCビジネスを展開したのは「ケンタッキーフライドチキン」(KFC)であると言われている。
創業者カーネル・サンダース(ハーランド・デーヴィッド・サンダース)は、交通の流れの変化でお客が来なくなった自分のレストランを手放し、自分で開発したフライド・チキンの製法を他のレストランに教えて回り、導入店からロイヤリティを受け取るというビジネスを開始した。そのFC1号店(ユタ州ソルトレイクシティー)が開業したのは1955年である。つまり、長い人類の産業史の中で見れば、FCビジネスはきわめて新しい産業である。
こうして始まったFCビジネスには、急速展開に向く特徴を持っていた。一般に、フランチャイジーは比較的小資本でスタートできる。一方、フランチャイザーは、他人の資本を活用してチェーンを展開することができる。このため、FCというビジネス・モデルは、急速に他業態、他産業でも採用されていった。
日本では、1970年以降、米国生まれのフードサービス(FS)のFCチェーンが多数上陸し、また国内で生まれたFCチェーンも急速に増加した。今日でも、代表的なFCチェーンはフードサービスとコンビニエンスストア(CVS)と言える。しかし他にも、クリーニング、ビデオレンタル、ハウスクリーニング、コインランドリー所、結婚相談所、葬儀会館、運転代行、ビジネスホテル、運輸、カー用品店、100円ショップ、ドラッグストア、古書店、学習塾、保育所・託児などなど、幅広い領域でFCが形成されている。
FCは今後、ITシステムをさらに活用しながら一層拡大すると容易に想像できる。
上記の内、FSとCVSについては章を改めて詳しく述べる。ただ、FSについて特徴的なことを一つ指摘しておくと、FSの場合は、顧客に提供する“財”の完成がショップないしストアと呼ばれる顧客接点の店頭であり、この点、自動車や宝飾の「販売店」「特約店」および「販売網」とは大きく異なる。(つづく)