加工用の水を消毒しないリスク

No.07(2025.04.02)

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国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。欧州抗生物質啓発デーに合わせて発表された報告によると、欧州域内で多剤耐性腸内細菌が持続的に拡散しており、医療・地域の両面で感染対策が急務となっている。また、欧州食品安全機関は生鮮・冷凍の野菜・果実等の加工用プロセス水における消毒不足が、リステリアやサルモネラなどの検出リスクを引き起こすと報告した。

注目記事

【欧州】欧州域内に多剤耐性の腸内細菌が持続的に拡散

 欧州疾病予防管理センター(ECDC: European Centre for Disease Prevention and Control)発。「2024年欧州抗生物質啓発デー(EAAD:European Antibiotic Awareness Day2024)」および「2024年世界抗菌剤啓発週間(WAAW:World AMR Awareness Week2024)」の開催に合わせて以下の2報の調査結果がEurosurveillanceに発表され、欧州域内の医療施設およびコミュニティの双方においてカルバペネム耐性細菌の拡散が進んでいると警鐘を鳴らしている。

新たな耐性パターンを示す大腸菌系統がコミュニティで拡散

 欧州連合/欧州経済領域(EU/EEA)加盟17カ国(オーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ハンガリー、アイルランド、ドイツ、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、スロベニア、スウェーデン)から報告されたデータの解析結果から、カルバペネム耐性の大腸菌シークエンスタイプ(ST)131の拡散が進んでいることが示されている。

 カルバペネム耐性の大腸菌感染症の拡大がさらに進めば、重度の大腸菌感染の経験的治療においてカルバペネム系抗生物質の有効性が維持されない可能性がある。

カルバペネム耐性 Providencia stuartiiが医療施設で持続的に拡散

 カルバペネム耐性の腸内細菌目細菌のうち、欧州域内では以前は非常にまれにしか検出されなかったタイプの「ニューデリー・メタロ-β-ラクタマーゼ1(NDM-1)産生性 Providencia stuartii」が、2021年12月〜2023年9月にルーマニアの数か所の病院で検出された。

 分離された複数株のうちのほとんどが、医療施設関連感染として報告された下部呼吸器感染・血流感染・尿路感染などと関連していた。

これらの分離株が、ペニシリン系、セファロスポリン系、カルバペネム系などの複数の抗生物質クラスに耐性であると考えられ、本調査で検査された分離株の90%が多剤耐性に分類された。

 医療施設においてNDM-1産生性 P. stuartiiの拡散が進むリスクが高いことが強く示唆されている。したがって、医療施設は、感染予防策を強化し、施設内で患者が発生した場合は速やかに管理対策を講じるべきである。

【欧州】生鮮・冷凍の野菜・果物等の加工用の水の微生物ハザード

 欧州食品安全機関(EFSA: European Food Safety Authority)の報告書。欧州の食品事業者が「生鮮および冷凍の果物・野菜・ハーブ類(ffFVH)」の収穫後および加工工程で使用するプロセス水の水質維持のために実施されている慣行および水の特性について解析した。

 プロセス水の消毒を実施しない場合の影響は17のケースシナリオにおいて評価が行われ、他の44のケースシナリオにおいては塩素、過酢酸、および過酸化水素などの消毒剤による微生物学的品質の維持に関する課題が検討された。プロセス水の消毒処理を行わなかったケースシナリオでの注目すべき点としては、未加工生鮮食品部門および冷凍の果物・野菜・ハーブ類(FVH)食品部門においてリステリア(Listeria monocytogenes)が検出されたこと、またカット済み生鮮食品部門および冷凍FVH食品部門においてサルモネラ、病原性大腸菌、およびノロウイルスが検出されたことが挙げられた。さらに、モニタリングシステムが不十分もしくは不適切な場合は、プロセス水中の消毒剤濃度が過剰もしくは過少となり、過少の場合、微生物量を十分に低減できていなかった。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

目次

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】

1. ヤモリに関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Muenchen)感染アウトブレイク(2025年3月13日付初発情報)

2. 卵に関連して複数州にわたり発生したサルモネラ(Salmonella Enteritidis)感染アウトブレイク(2024年10月17日付最終更新)

【欧州疾病予防管理センター(ECDC)】

1. 新たなゲノムサーベイランス調査の結果から欧州域内における多剤耐性の腸内細菌目細菌の持続的拡散が判明

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】

1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)

【欧州食品安全機関(EFSA)】

1. 生鮮および冷凍の果物・野菜・ハーブ(ffFVH)の収穫後の取り扱いおよび加工に使用される水に関連する微生物ハザード

2. 生鮮および冷凍の果物・野菜・ハーブ(ffFVH)の収穫後の取り扱いおよび加工に使用される水に関連する微生物ハザード-Part2(ffFVHへのプロセス水利用における動的マスバランスモデル)

【アイルランド保健サーベイランスセンター(HPSC Ireland)】

1. アイルランドでノロウイルス感染の流行が高水準で推移

【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】

1. 台所の衛生管理や食品安全について学べる子供向けの絵本を発行

【ProMED-mail】

1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(21)

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.07(2025.04.02)
https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2025/foodinfo202507m.pdf