
国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。2024年11月にジュネーブでコーデックス委員会総会が開催され、食品安全基準の適用が議論された。サイドイベントでは、食品ラベル表示の重要性や国際協力の必要性が強調された。CTFとSTDFの連携、食品由来疾患の被害推定の進捗、新設ネットワークの紹介もあり、食品安全向上への取り組みが進められた。
注目記事
【WHO】食品安全基準向上に国際的協力が重要/コーデックス委員会総会
2024年11月25〜30日、スイスのジュネーブにてコーデックス委員会(CAC:Codex Alimentarius Commission)の第47回総会(CAC47)が開催され、今後高まるニーズに対応し得る食品の安全・品質基準の適用をめぐって議論が交わされた。また、本会議では議長および副議長3名を新たに選出するための投票が実施された。
11月29日には世界保健機関(WHO)のDepartment of Nutrition and Food Safety(栄養および食品安全部門)主催によるサイドイベントがいくつか開催された。これらのサイドイベントでは、コーデックス規格のガイダンスにおけるWHOの主導的役割についての意見が寄せられ、食品安全基準向上のための国際的協力の重要性が強調された。
安全性のその先へ:より健康的な食品であることを効果的に示すラベル表示
安全でない食品および健康的でない食品から消費者を保護するための政府主導の対策として、わかりやすい食品ラベル表示の重要性が強調された。その他、今後発表予定のWHOガイドラインにおける、包装の前面へのラベル表示などの栄養情報の表示方針、および食品分類方針の最新情報を中心に議論が交わされた。WHOの地域分類における米州では11カ国が包装の前面へのラベル表示を義務化しており、義務化実施後の各国の経験にもとづく情報が共有された。また、世界貿易機関(WTO)の「貿易の技術的障害に関する協定(TBT協定)」における健康的な食事および栄養成分表示ラベルについても議論が及んだ。貿易への影響があるとしても、消費者の健康のため国が表示に関する規制を行う権限をもつべきとの意見が出された。
食品安全性の促進および安全な貿易の実現のために:「コーデックス信託基金(CTF)」と「規格および通商開発機構(STDF)」
CTFおよびSTDFについての紹介があり、各国の食品安全基準およびその実施能力の向上を目指す両者の連携について焦点が当てられた。CTFが各国のコーデックス参加促進に注力する一方、STDFは安全かつ包括的な食品貿易の促進に向けた取り組みを行っている。両者は進行中のプロジェクトについて情報共有を行うことで相乗効果を生み出し、複合的な利益をもたらしている。全体会議においては、共同プロジェクト、情報共有、ネットワークおよびプラットフォームの活用のための新たな機会に焦点が当てられた。
食品由来疾患データにもとづく取り組み:「WHOによる食品由来疾患実被害の推定」の完成に向けた各国の協力
2025年末に公開予定の「WHOによる食品由来疾患実被害の推定(第2版)」(2nd Edition of the WHO Estimates of the Burden of Foodborne Diseases https://www.who.int/teams/nutrition-and-food-safety/monitoring-nutritional-status-and-food-safety-and-events/foodborne-disease-estimates/2nd-edition-(2025))の詳細が発表された。第2版ではWHO 加盟国に向けて、2000〜2021年に様々な食品ハザードにより生じた食品由来疾患の事例数、死亡者数、および公衆衛生上の被害推定情報が表示される。これらの知見は、「各国における食品安全リスクランキング」および世界銀行との連携にもとづき推定される「食品由来疾患による経済的損失」の参考となり得る。120人以上の専門家が系統的レビューによりデータ収集に貢献し、全世界を対象とした感染経路調査に関する調査が進行中である。2025年の初めには加盟国による自国の推定値のレビューが実施される見通しである。WHOデータ取扱規則に従って、WHOは推定値を最終化するための作業への参加を各国政府に対して呼びかけた。これらの推定値は、政策決定への情報提供、食品安全基準の改善、および各国の食品安全システムの強化への支援のために用いられる見通しである。
新たに設立されたネットワーク「WHO Alliance for Food Safety(WHOの食品安全のためのアライアンス)」について
世界の食品安全性向上を目的としたWHO 協力センターおよび各国におけるその関連機関による新たなネットワーク「WHO Alliance for Food Safety」(食品安全情報(微生物)No.13/2024(2024.06.26)WHO 記事参照)について紹介があった。このアライアンスは各国間の協力、知識共有、およびWHOによる「食品安全のための世界戦略2022〜2030(WHO Global Strategy for Food Safety2022-2030)」実施の促進を目的として創設され、食品由来疾患のサーベイランスおよび汚染のモニタリングに焦点を当てている。その他の目的として、多くの分野間の連携、強固な法的枠組み作り、関連する研究機関の能力向上、高品質なデータの作成・共有、加盟国間での成功例の共有などが含まれる。
(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)
目次
【世界保健機関(WHO)】
1.コーデックス委員会の第47回総会において開催されたサイドイベント(スイス、ジュネーブ)
【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 小型のカメに関連して複数州にわたり発生したサルモネラ(Salmonella StanleyおよびS. Poona)感染アウトブレイク(2024年10月3日付最終更新)
【欧州疾病予防管理センター(ECDC)】
1. 欧州連合/欧州経済領域(EU/EEA)の抗菌剤耐性-欧州抗菌剤耐性サーベイランスネットワーク(EARS-Net)の2023年次疫学報告書
【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)
【欧州食品安全機関(EFSA)】
1. 新興リスクに関する欧州食品安全機関(EFSA)の2022年の活動報告(技術報告書)
【デンマーク国立血清学研究所(SSI)】
1. 欧州連合食品・水由来細菌リファレンス検査機関(EURL-FWD Bacteria)を新たに設立
【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】
1.「国際緑の週間2025」:ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)のブースで微生物サイズの世界を体験
【ProMED-mail】
1.コレラ、下痢、赤痢最新情報(20)
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(微生物)No.06(2025.03.19)
- https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2025/foodinfo202506m.pdf