米国の食品由来感染症の罹患率

No.01(2025.01.08)

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国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。米国は2016~2018年を基準に2023年の食品由来疾患罹患率を分析。カンピロバクターやSTECは増加、リステリアやサルモネラは変化なし。診断技術の向上で罹患率増加に見える可能性があり、サーベイランスが必要。2023年にFoodNet調査地域を拡大し、動向監視とデータの信頼性を強化。

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【米国】食品由来感染症の罹患率

 米国は患者数減少目標に向けた進捗状況を把握するために、ベースラインとして2016〜2018年のデータを使用している。2023年の罹患率をこのベースラインと比較すると、国内感染のカンピロバクター、志賀毒素産生性大腸菌(STEC)、エルシニア、ビブリオ、サイクロスポラによる感染症では上昇し、リステリア、サルモネラおよび赤痢菌による感染症では大きな変化はみられなかった。

 2023年のFoodNetへの報告では、培養非依存的診断検査(CIDT)で診断された患者の割合が引き続き上昇し、分離株が得られた患者の割合は低下して、これらが罹患率の傾向に影響した。以前であれば検出されなかった患者がCIDTの実施により患者として報告されるようになった。

 このため、患者数減少目標に向かって前進していないように見えても、患者が実際に増加したのではなく、診断法変更の影響を受けている可能性がある。診断法の変更が傾向分析に及ぼす影響を把握するにはサーベイランスを継続する必要があり、患者数減少目標の達成には対象を絞った予防対策が必要である。2023年にFoodNetは、その調査対象地域を2004年以来初めて拡大した。これにより、FoodNetの調査対象地域の代表性、疾患の動向モニタリング能力、およびデータの一般化可能性が向上した。

 2023年は、「拡大前の調査対象地域(historic catchment area)」では患者29,607人、入院患者7,234人および死亡者177人であり(表1、表2)、「拡大後の調査対象地域(expanded catchment area)」では患者31,492人、入院患者7,588人および死亡者184人であった(国内感染と国外旅行関連の両方を含む)。

 全体および国内感染を見ると、カンピロバクター感染患者が最も多く、次いでサルモネラ、STECの感染患者であった。拡大前の調査対象地域では、2023年のカンピロバクター、サイクロスポラ、STEC、ビブリオおよびエルシニアの国内感染の罹患率は2016〜2018年より上昇し、一方、リステリア、サルモネラおよび赤痢菌では大きな変動はみられなかった。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

目次

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】

1. 生乳チェダーチーズに関連して複数州にわたり発生した大腸菌O157:H7感染アウトブレイク(2024年3月26日付最終更新)

2. シャルキュトリ(食肉加工品)に関連して複数州にわたり発生したサルモネラ(Salmonella I4:i:-)感染アウトブレイク(2024年3月28日付最終更新)

【Morbidity and Mortality Weekly Report(CDC MMWR)】

1. 主に食品を介して伝播する病原体による感染症の罹患率:培養非依存的診断検査の実施増加による影響-食品由来疾患アクティブサーベイランスネットワーク(1996〜2023年)

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】

1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)

【欧州食品安全機関(EFSA)】

1. ヒト・食料生産動物における抗菌剤使用量およびこれらから検出される細菌の抗菌剤耐性

【アイルランド保健サーベイランスセンター(HPSC Ireland)】

1. アイルランドの胃腸疾患および人獣共通感染症、2022年(その他の感染性胃腸疾患)

【ProMED-mail】

1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(89)(88)(87)

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.01(2025.01.08)
https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2025/foodinfo202501m.pdf